インドとミャンマーの間に位置するバングラデシュは、1億6000万人以上の人口を抱える、世界で最も人口密度が高い国。もともと稲作やジュート(黄麻)の生産など、農業が盛んでしたが、近年は労働力の豊富さと人件費の安さから、日本をはじめ海外資本による製造業の進出が目立っています。これにより、同国は成長が期待される新興国「NEXT11」にも数えられています。
現在、日本はバングラデシュにおいて、マタルバリ港やダッカの地下鉄やハズラト・シャジャラル国際空港の第3ターミナルなど、今後数年以内に完成予定の大規模プロジェクトに関わっています。
そんな同国と日本との間で、自由貿易協定(FTA)または経済連携協定(EPA)締結の動きがあることを、地元紙のThe Daily Starが報じています。バングラデシュとのFTAの締結によって、とくにビジネス面で日本にどのようなチャンスが生まれるのでしょうか。
衣料品を中心に対日輸出が急増中
実は、バングラディッシュは国連開発計画委員会(CDP)により、後発開発途上国(LDC)に位置づけられています。この「LDCの特恵貿易」の恩恵により、同国の対日輸出はアパレル製品を中心に急成長。今年度の対日輸出額は13億5000万ドル(約2000億円)となり、前年比で14.4%増となりました。そのうち11億ドル(約1600億円)は衣料品が占めています。
バングラデシュから日本への衣料品の出荷量は、日本がLDCの国々におけるニットウェア分野の原産地規制を緩和した2011年4月から急増しました。それ以前は、日本は自国産業を保護するため、ニット製品に関税を設けていたのです。
バングラデシュにとって日本は、衣料品輸出が10億ドル(約1500億円)を超えた唯一のアジア諸国です。駐バングラデシュ日本大使である伊藤直樹氏は、アパレル製品の出荷額は2030年までに10倍の100億ドル(約1兆5000億円)に達するだろうと予測しています。
11月にもFTA締結に向けた交渉がスタートする!?
また伊藤大使は、バングラデシュと日本がFTAやEPAに署名し、より多くの日本への投資を誘致するためには、さらなる投資やビジネス環境を改善する必要があるとも述べています。氏によれば、バングラデシュの日本企業の数は過去10年間で3倍に、そして2022年には338社に達するのだとか。さらに、首都ダッカ近くのナヤランガンジにある日本の経済特区は、施設やインフラ、労使関係、ビジネス環境の面でアジア随一になるだろう、との発言もありました。
一方で、バングラデシュのTapan Kanti Ghosh(タパン・カンティ・ゴッシュ)商務上級秘書官はThe Daily Starに対し、「バングラデシュと日本は今年11月に協力覚書(MoC)に署名する予定です」とコメント。同国のハシナ首相が11月にも日本を訪れ、FTAの交渉が始まる可能性があるそうです。急速に接近しつつあるバングラデシュと日本。FTAないし、EPAが締結されれば、衣料品分野のみならず、さまざまな分野でのビジネスが期待できそうです。
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