契約者の電話番号などの情報が記録されているSIMカード。スマートフォンに必ず装着されているもので、スマホの契約台数が延びれば、当然SIMカードの生産も増えることになります。そんなSIMカードをわずか半年で1億枚も生産したのが、ナイジェリア。デジタル経済を推進する同国政府のローカライズ計画が成果を上げてきたことが表れています。
ナイジェリア政府の情報通信機関であるナイジェリア通信機関委員会(NCC)は2023年2月、過去半年間にナイジェリアで生産されたSIMカードが1億枚以上に達したことを発表しました。SIMカードの国内生産の増加は、「ナイジェリア国家ブロードバンド計画」や「NCC戦略管理計画」の一環。ナイジェリア政府は国全体のデジタル経済と国内でのSIMカード生産を推進するため、2022年8月から外国製SIMカードの使用を禁止しました。これにより、SIMカードを生産する国内の新興企業をバックアップ。もともと外国製のSIMカードに頼っていた生産システムを大きく変換させたのです。
ナイジェリアでSIMカードを生産する企業の一つが、CCNL(Card Center Nigeria Limited)。2004年に創業した同社は、ナイジェリアやアフリカの通信会社にSIMカードの生産と販売を行っており、アフリカのSIMカード生産のパイオニア的存在です。もともとIDカードの生産も行っており、ナイジェリア警察や同国の銀行などのIDカードも生産してきました。
現在、SIMカード生産などを手掛けるアフリカのスタートアップは7社あり、そのうちの5社はナイジェリアに拠点を持っているとのこと。しかし、同国には技術革新や投資を保護する法律がないことから、スタートアップの中にはナイジェリア以外の国で登記する企業もありました。
それを防ぐために、ナイジェリア政府は2022年8月からのSIMカード輸入禁止法を制定したのです。この法律について、ナイジェリアのパンタミ通信・デジタル経済大臣は、その重要性を度々アピールしてきました。スマホ利用者が急増するナイジェリアでSIMカードを100%国内生産すれば、雇用創出につながります。国内企業の売り上げが伸びれば、ナイジェリア経済への貢献度は増すでしょう。
SIMカード国内生産が活発化していくことで、ナイジェリアはアフリカにおけるSIMカード生産のハブとして存在感を増すでしょう。2022年におけるアフリカ54か国の人口はおよそ14億人。2030年には16億人、2050年には24億人を上回る見込みです。加えて、スマホやインターネット利用率は、先進国と比べると低いものの、利用者はますます増えて行くと見られています。Twitterが2021年にガーナにアフリカ初の拠点を置くことを明らかにしたように、ビッグテックはアフリカに熱い視線を注いでおり、GDP(国内総生産)や人口、デジタル人材の多さなどを考慮すれば、ナイジェリアはアフリカのデジタル化を牽引する国の一つ。これまで石油やガスに依存していたナイジェリア経済は着実に多角化しているようです。
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