事例集
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2021/12/15 18:18

長~く延びた煙突でしっかり部屋を暖める!市販品だけで製作可能なロケットストーブ/手作りストーブ大全

薪ストーブで暖を取ることが小さいころからの夢だったけれど、既製品はとてもじゃないけど手が出せない…そんなときにネットでロケットストーブの存在を知ったTさん。これなら工夫次第で安く、かつ燃費のいい暖房を作ることができそうと製作にトライ!

 

「ホームセンターで買える部材で、誰にでも作ることができるストーブ」をテーマに製作されたTさんのロケットストーブ

 

とはいえ、Tさんはストーブに関しては素人。まずは屋外でロケットストーブ本体のみを試作し、何度も点火実験を実施。燃焼の具合や煙突の温度、各パーツの耐久性を調べ、その都度改良。都合5回の改良を経て、現在の形に落ち着いた。

そんなTさんのロケットストーブの特長は室内に長く延ばされた煙突。シングル煙突に黒い耐火塗料を塗ることにより、燃焼筒で生まれた熱を余すところなく、室内に取り込むことに成功している(後述の温度分布図参照)。

 

Tさんのロケットストーブは、U字溝が本体なのでかなりコンパクト。サイズは幅850mm×奥行900mm

 

また「誰でも簡単に安く製作できる」をコンセプトにしたTさんのストーブは、部材をすべてホームセンターで調達可能。U字溝やステンレス煙突をはじめ、耐火セメント、パーライトなど、弊誌読者ならおなじみの材料で、低燃費の実用的なストーブを作ることができるのが魅力だ。

 

<T邸のストーブ構造図>*単位はmm

<DATA>
Tさん(31歳)/自営業/DIY歴…4年
製作費用…約6万円
製作期間…約2年
焚き口…Y字の送風ダクト
燃焼筒…耐火モルタルとパーライトを詰めたU字溝
メンテナンスの頻度…2カ月に一度、煙突を分解して掃除する

 

室内に6mほど引き延ばされた煙突。黒い耐熱塗料を塗っているのは、排熱の効率を上げるため。この煙突から出る輻射熱で室内を暖める

 

煙突から壁までの距離は200mm。壁には30mmほどの空気層を取り、ガルバ波板を張り付けて、遮熱板としている

 

焚き口にはY字の送風ダクトを使用(写真はストーブの試験中に自作したもの)

 

U字溝に焚き口のダクトを固定している様子。この後、周囲に耐火セメントとパーライトを混ぜたものを充填した(写真は試験中で、現在、真ん中の垂直に立つ煙突は使われていない)。斜めになっているのが、焚き口部分

 

焚き口と掃除口兼送風口の様子。耐火モルタルを塗りつけて固定している

 

【ストーブ燃焼中の表面温度分布図】

ロケットストーブ本体
薪ストーブの本体は300℃まで温度が上がるが、Tさんの場合、ストーブ本体温度は120~130℃ほど。そのため、薪ストーブほどは壁との距離もあけず、がっちりした炉壁も取り付けていない。暖房のメインは煙突からの輻射熱となる。

 

室内の煙突
室内に延ばした煙突から排熱され、室内を暖める。温度分布を見ると、いかに薪の熱を利用できているかがわかる。またエアコンの送風を併用すると、より効率よく熱を足元まで届けることが可能だ。

 

ロケットストーブの高火力で燃やされた灰はサラッサラで、通常の薪ストーブに比べ、出る灰の量も少ない。灰の掃除にはオタマを使用

 

気になるのは、自作のストーブを設置した際の事故や火災だが、Tさんの場合、ストーブ本体および、煙突の温度を入念にチェック。それに合わせて、炉床や炉壁を自作している。また消耗したストーブのパーツをチェックし、自分で交換するのはもちろんのこと、2カ月に一度は、煙突をオーバーホールしてメンテナンスすることも忘れない。自身でストーブ導入の基準を作り、常にチェックしているそうだ。

テストと運用を繰り返し、2年。今では冬に石油ストーブやエアコンを使うことはほとんどなし。ストーブの燃料は海岸から拾ってきた薪なので、暖房費が大幅にダウンしたとのこと。最初はロケットストーブ導入に反対していた奥さんも、冬になると「早くつけて」とせがむようになったとか。

「今ではエアコンをつけると、違和感を覚えるんです。ストーブは部屋が暖まる過程がきちんと見える。薪を拾って、着火して、部屋がじわじわと暖まってくる。“生活してる”って感じるんですよね」(Tさん)

 

ストーブの周囲にミニ薪棚を作り、薪をよ~く乾燥させておくのが、ストーブの良好運転の秘訣

 

通常のストーブ使用中は、周囲にメッシュパネルを設置。子供のやけどや事故防止のためのストーブガードとしている

 

流木を割って薪にした状態。真冬の1日の薪の使用量はコンテナ2/3杯(約4~5㎏)ほど

 

海沿いに暮らすTさんの薪は、海岸に流れ着いた流木を利用。拾ってきた流木はよく乾燥させる

 

室外から見た煙突の壁出し部分。煙の熱は室内でほとんど放出されており、ここを通る際は30~40℃ほど

 

単管パイプを支柱に、高さ5mまで延ばした屋外の煙突。本来、ロケットストーブの燃焼のためには、ここまでの高さは必要ないが、近所への煙の流れを考慮して、高く延ばしたそう

 

煙突の壁出し口に外気導入口を取り付ける

ストーブは室内の空気を吸い込み、室外に排出するため、室内は負圧状態(室内側の気圧が外気より下がった状態)になりがち。室内に十分な給気ができない状態になると、最悪、煙突から煙の逆流が起こることも。そのため、Tさんのストーブでは、壁出し口にあえて径の大きい煙突を取り付け、外気導入口を作ることで、室内の負圧を解消している。

 

<煙突の壁出し構造図>

メガネ石カバーにはφ150mmの煙突が通るように、ディスクグラインダーで切れ目を入れ、穴を広げられるよう加工しておく

 

室内側から見た煙突の壁出し部分の様子

写真◎清水良太郎、製作者提供

*掲載データは2015年10月時のものです。