ナポリピッツァの特徴は、ふっくら膨らんだ縁の部分。そのコルニチョーネ(イタリア語で額縁の意味)と呼ばれる縁の食感や、シンプルなトッピングゆえに堪能できる生地の風味など、本格ナポリピッツァならではの美味を家庭で味わうために作ったふたつの窯を紹介。
Case1 タイル張りが美しい耐火レンガのドーム窯
窯口のアーチの上に煙突をつけた伊藤さんの窯。内径は約800mm、外径は約1000mm、高さは外寸約530mm。左にバーベキュー炉を併設している
タイル張りでおしゃれに仕上げた。吸水率が低く、野外での使用に適した磁器質タイルを使っている

ピザピールは親せきの手作り。ステンレスの板とパイプを溶接したもの。木製グリップの上半分がスライドするので、柄の好きな部分を握れる
料理が趣味のIさんは、イタリア料理を学ぶために本場に1カ月滞在するほどの凝り性。そのときに食べたナポリピッツァの味が忘れられず、自分で焼けるようになりたいと、ピザ窯の自作を思い立った。
窯の形は、多くのピザ店が使っている単層ドーム型。サイズは、販売されている窯を参考に決めた。窯を温める時間を短縮できるよう、天井を少し低くして、真円ではなく楕円状にしている。
こだわりは、タイル張り。10mm角の磁器質タイルを約1万5000枚使って、青空に映える美しいデザインに仕上げた。イメージは地中海の太陽。その中にある「HORNO de GIRASOL」という言葉は、スペイン語でヒマワリ(太陽の花)を意味するそう。
窯作りと並行して、おいしいナポリピッツァを焼くための研究にも勤しんだIさん。気になるピザ店があれば遠方であろうと訪れ、窯が見える席に座ってプロの焼き方を見学。ピザ焼き職人に直接話を聞くこともあったとか。
窯の完成後は、親戚や友人が集まってのピザパーティーが恒例行事に。最初のころは生地作りや窯の温め方がうまくいかないこともあったが、最近では安定的に満足いくナポリピッツァを焼けるようになってきた。ただ、それでも試行錯誤は終わらない。毎回、前回よりさらにうまく焼くために考えを巡らすことこそ楽しいのだと、窯の中を見つめるIさんの精彩に満ちた表情が語っている。

<DATA>
製作者…Iさん(50歳/会社員)
材料費…約20万円(バーベキュー炉含む)
製作日数…約35日(バーベキュー炉含む)
主な使用資材…
耐火レンガ204個(基本=58個、Y1=5個、Y2=79個、Y3=37個、半丁=25個)、耐火キャスタブル2袋、耐火接着剤、コンクリート平板、コンクリートブロック、大理石、モザイクタイル、外壁用人工石材、薪ストーブ用煙突、セメント、砂、砕石
定番メニューのマルゲリータ。コルニチョーネ(縁)がふっくら膨らんでいるのがナポリピッツァの特徴
トマトとガーリックスライスのマリナーラに、自ら燻製したベーコンもトッピング
こちらはモッツァレラ、ゴルゴンゾーラ、アメリカンクリーム、パルミジャーノの4種のチーズを載せたクワトロフォルマッジ
Iさんちの窯作りダイジェスト
<土台を作る>
01 地面を土台の形に掘り、石を詰めて、鉄筋を配置 02 コンクリートを敷いて、基礎の完成 03 目地にモルタルを使い、重量ブロックを水平に積み重ねていく 04 ブロックを4段積んだら、30×300×1200mmのコンクリート平板を4枚並べ、土台が完成。バーベキュー炉にはステンレスパイプを設置している <耐火レンガで窯を組み立てる>
01 サイズを確認しながら窯口の構造を決める。基本形の耐火レンガのほか、角度が異なる3タイプの扇形(テーパー付き)レンガ(Y1、Y2、Y3)を使い、並び順を決定。なお窯口のサイズは幅485mm、高さ230mm(最高部)に 02 ドームの型を合板で作るために、実際にレンガを並べてサイズを確認する 03 切り出した合板を立てていく 04 8枚の合板を立て、中心の上下に合板を張る 05 薄い合板をステープルで留め、型が完成 06 型を使って、耐火レンガを並べてみる。炉床の手前に半丁サイズのレンガを使っているのは、ここに大理石を敷くため 07 レンガに沿って、ドーム外周に線を引く 08 炉床とドーム下段のレンガを耐火接着剤で接着。大理石が収まる部分の両端は、レンガの角をディスクグラインダーで切り欠いている 09 大理石(12×300×600mm)を敷き、窯口用の型を設置する 10 耐火レンガで窯口のアーチを組み立てる。耐火接着剤で接着。煙突部分は、カットしたレンガを前後に配置 11 半割りにした耐火レンガを、型に沿って積み上げていく。目地には耐火キャスタブルを使用 12 ドームが完成。上部はレンガを細かくカットする必要があった 13 型を燃やす <タイルで装飾する>
01 レンガの上に耐火キャスタブルを塗る。イタリア人の友人が大活躍 02 耐火レンガをカットして煙突の土台を作り、キャスタブルを塗って固定する 03 キャスタブルを塗って、きれいなドーム形になった。煙突を抜き差しできる土台も完成 04 キャスタブルが乾いたら、タイルを張る。まず平面でタイルを並べ、表面に透明の養生テープを張ってシート状にしたものを接着剤で張っていく。曲面部分は、シートを細くカットして張る。「接着剤はいろいろ試したけど、結果的に、弾力のあるシリコンシーラントがいいようです」とのこと 05 上のほうは曲面がきつくなり、作業が大変に。「いちばん印象に残っているのが、この作業。皆さんに協力してもらって、なんとかやり遂げました」とIさん 06 タイル張りが完了 07 土台のブロックは外壁用人工石材で化粧。コンクリートボンドで張った *一部SNSでは表示されません。本サイトではご覧いただけます。
Iさんちのピザ焼き実況中継
<窯の準備>
01 ピザを焼く前日の午後4時から7時まで薪を燃やし、プレヒート。その後、窯口と煙突をふさいで保温。「当日、なるべく高温になるように、あらかじめ窯の“芯”を温めておこうというわけです。実は初めての試みですが、以前、2日続けてピザを焼いたときに2日目のほうがうまく焼けたので、そういうことなのかな…と」(Iさん) 02 当日午前9時、着火準備完了。窯の奥に耐火レンガを並べ、その上に薪を置き、焚きつけを載せる。薪は販売店で入手した広葉樹。「レンガでかさ上げするのは、炎を天井に近づけるためと、炉床に薪を直接置くと、燃えカスがたまって炉床温度が下がるような気がしたので。これも初めて試すんですが…」 03 ライターで着火した焚きつけを窯に投入 04 うちわであおいで火勢を上げる。最初は煙が立つ 05 10分ほどして煙がまったく立たなくなり、完全燃焼状態に。天井はススで真っ黒になっている 06 燃え具合を見ながら、ピザピールを使って薪を追加する。追加した直後は煙が立つ。「ビールを飲みながら、ゆっくり窯を温める。この時間もいいんですよね」 07 薪を燃やし続けると、徐々に天井が白くなり、“スス切れ”の状態に 08 着火して1時間ほどで天井全体が白くなり、完全にスス切れ。ピザを焼くには十分な温度になった証だ。これで窯はスタンバイOK。あとは宴の準備が整うまで、炎が途切れないようにする <ピザの準備>
01 具材を用意する。ホールトマト、チーズ各種(パルミジャーノ、モッツァレラ、ゴルゴンゾーラ、アメリカンクリーム)、ガーリック、そして自作のベーコンとスモークサーモン。ナポリピッツァは1分半ほどで焼き上げるため、具材はなるべく薄く切る 02 生地をのばす。生地は前日に打ち、1~1.5時間ほど一次発酵させ、ひと晩かけて二次発酵させたもの 03 トッピング。トマトソース、モッツァレラチーズ、バジルのマルゲリータに、すりおろしたパルミジャーノをふりかける <ピザを焼く>
01 おき火を左に寄せ、その上に薪を追加。耐火レンガを右にずらし、ピザの置き場所を作る。さらに炉床を濡れタオルで拭いてきれいにする。窯の中は高温なので、濡らした軍手をはめ、トングの先に濡れタオルを巻きつけて作業する 02 木製のピザピールに打ち粉をしてピザを載せ、窯に入れる。迷いなくサッとピールを引くのが、ピザをうまく炉床に置くコツ 03 1分もすれば、いい焼き加減に 04 途中、ステンレス製のピールでピザを引き出し、窯口付近で回転させて再び窯に入れる。焼きムラをなくすためだ。この回転作業がしやすいよう、この部分の床には大理石を使っている 05 さらに30秒ほどで焼き上がり。焼け具合を見て、最後はピールでピザを上方に持ち上げて仕上げ焼きをすることも(写真のピザはクワトロフォルマッジ) *一部SNSでは表示されません。本サイトではご覧いただけます。
写真◎門馬央典(製作中カットは製作者提供)
*掲載データは2016年6月時のものです。