おそらくどんな車にもついている車載用のジャッキだが、1度も使ったことがないという人がけっこういるわけで、これは実にもったいない話。そこで今回は、使い方ひとつで、車載ジャッキは男のDIYの重要なツールになるという実証ドキュメント。ジャッキを使わずして、何が男ぞ!
ジャッキ活用で復活した掘っ立て小屋
いきなり恥をさらすようだが、私の息子は、夏用と冬用のタイヤの交換を自分でやらない。1本1000円払ってガソリンスタンドでやってもらうという。つまり車のジャッキアップをしたことがない。私は怒った。そんな教育をしたつもりはない! 自分でやれ! すると、そのほうが楽だし安全だもん~などとチャラ顔で答えるのだ。どう思います?
まず、金を払えばいいという根性が気に入らない。もし、人の来ない荒野で、タイヤがパンクしたらどうするのか? JAFなんか来ないぞ! クマなんかもいるぞ! 日が暮れてくるぞ!ど~するんだ? え~!? と私は声を大にして言いたいのだ。
ま、いい。つまらないところで興奮してはいけない。そんな奴は、北の極地で、タイヤ交換ができないで、死んじゃえばいいのだ。それよりも、私は、とてつもない実力を持ちながら、その能力を発揮するチャンスにも恵まれず、暗いトランクの奥でじっと待機している車載ジャッキの復権を声を大にして叫びたいのだ。というのには理由がある。
実は、編集部で、数年前に建てた掘っ立ての高床式の小屋がある。基礎石を使っていないこともあるが、さすがに基礎柱が腐ってきて、小屋全体が傾き始めたのだ。これをなんとかせにゃと閃いたのが、車載のパンタグラフ型ジャッキを使った修復だった。まず腐った柱に支えられた根太をジャッキアップ、柱が浮き上がり、根太を水平に戻したところで、柱周りの四方に当て木をして補強した。当て木の下には砂利を敷き、平板を敷き、柱が沈まないようにした。こうして修復は万全に行なわれ、以後、小屋はまったく傾いてない。
このとき感動したのが、想像を超えたジャッキの力だった。小型ながら最大使用荷重が800kg。2坪程度の小屋の端っこを数cm持ち上げるのなんか笑っちゃうくらい簡単だった。敷石の上にジャッキを置き、ジャッキのハンドルを回すとメリメリいいながら小屋の傾きが直っていく。ジャッキは便利だと心から思ったのだ。
これに味をしめ、今回やったのが、根太が腐って傾き始めたパーゴラ付きウッドデッキの修復。普通なら、床材を剥がし、腐った根太を取り替えればいいという話なのだが、四隅にパーゴラの柱が載っているのがネックで、この柱をそのままにして、パーゴラごとデッキの傾きを直すという厳しい作業になる。そこでパーゴラの柱が載る部分を残して床材をすべて剥がし、パーゴラの柱にできるだけ近い大引をジャッキアップすることにした。
パーゴラつきデッキ、簡単にジャッキアップしました…
まず、地面を平らにならし、枕木とコンクリート平板を置き、その上にジャッキをセット。さらにタッパ(立端)が足らないので4寸角の角材をジャッキに載せて、大引にかませる。ジャッキのハンドルを回すと、当然ながら簡単に大引が持ち上がり、沈み込んでいたデッキが一挙に水平に戻った。その状態のまま、あとは、新しい束柱に交換、ついでに束柱の数を増やし、床材を新しい材に張り替えたのだ。結果は見てのとおり。微妙に傾いていたパーゴラも正常に戻った。これはもう間違いなくジャッキの圧勝といっていい。
近年、確かにタイヤ交換を自分でやるという機会は劇的に減ったかもしれない。それにしたがって、車載ジャッキの存在感が薄まってきたのかもしれない。しかしだからこそ私は言いたいのだ。小さいけれど力持ち、普段は薄暗い車のトランクの片隅にひっそりと佇み、ここぞ!というときに一挙に爆発する陰のモンスターツール、ジャッキを忘れるなと。たとえば、小屋の根太を水平に立ち上げるときなんか、ジャッキを使って調整すると便利だと私は思うよ。
取材・文◎脇野修平
*掲載データは2018年6月時のものです。
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