大変な時代になった。これまで当たり前と思っていた電気の供給が危ないというのだ。もしかしたら、「大節電時代」の到来!?
そんな不安を解消するためにも、ぜひ、チャレンジしてほしいのが自分でできる太陽エネルギーの活用。ここでは、太陽熱と太陽光を利用した自作エネルギーの作り方を紹介。簡単かつとってもお役立ち、しかも、場所を選ばない携帯性もある画期的な方法を提案してみた。
今回製作したソーラークッカーは、予算、なんと1000円! 製作時間60分でできたカンタン太陽熱調理器で、美味しいランチを作った! 日照30分で、お米が炊けた!
ソーラークッカーを作れば、電気やガスをいっさい使わないで本格的な調理ができる。製作を指導してくれたのは富岡裕子さん。「にこネットつくば」副代表としてソーラークッカー紹介はもちろん、環境教育・国際理解教育のための活動を幅広く行なってきている。ソーラークッキング協会の会員でもある
アフリカでも大好評だった
富岡式ソーラークッカー「サンピース」を作ってみた
太陽熱を利用して調理するソーラークッカーには、大きく分けると【1】パネル型、【2】ボックス型、【3】パラボラ型の3種類がある。熱効率からいうとパラボラ型が一番すぐれているが、DIYとなるとややハードルが高い。そこで、熱効率は落ちるが、段ボールやアルミシートなど身近な材料で簡単に製作できるパネル型やボックス型がDIY向きということになる。
そこで、今回はチョーお手軽なパネル型クッカー「サンピース」を紹介したい。発案したのは、環境教育や国際理解活動を推進しているグループ「にこネットつくば」の富岡裕子さんだ。
富岡さんがパネル型のオリジナルソーラークッカーを発案したのは2009年のことだった。もちろん、それまでさまざまな形のソーラークッカーが発案され、また販売もされてきていたのだが、富岡さんは「被災地や途上国でも簡単に作れる」ということを前提において考えた。
そのための基本方策のひとつが、「定規で計らずに作れる」だった。そうしてできあがったのがここで紹介する「サンピース(SUN PEACE)」だ。昨年の夏には、アフリカのマダガスカルを訪れ、現地で仲間とサンピースの講習会を開き、大好評を博したという。作り方を知っておくと、庭でも、アウトドアでも、もちろん被災地でも、大活躍するに違いない。

<サンピースの製作に準備する主な材料、道具など>
プラスチック段ボール900×900mmくらいの正方形(紙の段ボール板でもOK)、防災用アルミシート(アルミホイルや非常用のアルミブランケットなどでもOK)、ガムテープ、梱包用の透明ガムテープ、梱包用のビニールひも、両面テープ、目玉クリップ4個、カッター(ハサミ)、マジックペン、定規(なくてもOK)
プラスチックダンボールの加工
01 梱包用のビニールひもを900×900mmのプラスチック段ボール(以下段ボール)の一辺の長さに切る。定規で測ってもよいが、段ボールの縁に梱包用のビニールひもをあてがって現物合わせすれば、定規がなくてもできる 02 切ったビニールひもを3回折りたたんで8等分にしてマジックペンで印をつける。定規を使わなくてもできる作業だ 03 段ボールの縁にビニールテープの印どおりに一辺を8等分する印をつける。4辺に書き入れる 04 図のようにマジックペンで線を引く。切る線は実線で、折る線は点線で書き入れる(上図参照) 05 カッターで、実線に沿ってカットする 06 点線に沿って折り曲げる。このとき、折れ線に沿って、裏側にカッターで軽く線を引いておくと、きれいに折り曲げやすい。ただし、力を入れすぎると切れてしまうので注意すること
アルミシートを張る
01 両面テープを写真のように張り付ける 02 両面テープの剥離紙をはがしながら、段ボール全体にアルミシートをぴったりと張り付ける。しわが寄らないようにピーンと張れればベストだ。手伝ってくれる人がいると作業しやすい 03 アルミシートの縁を段ボールより3cmほど残してカット 04 裏返してアルミシートを折り込み、ガムテープでしっかりと張り付ける 05 段ボールのカットラインに沿ってアルミシートをカット 06 透明のガムテープで切り口をカバーすると長く使える 07 これで段ボールの加工とアルミシートの張り付けが終了 09 あとは目玉クリップで4箇所を挟んで、このように組み立てる、これで簡単ソーラークッカーが完成した 06 点線に沿って折り曲げる。このとき、折れ線に沿って、裏側にカッターで軽く線を引いておくと、きれいに折り曲げやすい。ただし、力を入れすぎると切れてしまうので注意すること
いざ調理実践!「お日様があれば、そこがキッチン」だった!
ソーラークッキングを始めるにあたって、いくつか注意点がある。
まず、熱効率をあげるためにできるだけ外側が黒っぽい鍋を用意しよう。金属性で薄手のものがベスト。さらに、保温のためにOPP袋(ラッピング用の透明な袋)のような耐熱袋で鍋を包み、鍋の下には魚焼き網などを置き、鍋が直接クッカー本体に触れないようにするとよい。
調理時間は、もちろんメニューによっても違うが、天気によって変わってくるのがソーラークッカーの特徴。気温の高低よりは湿気が少なくすっきり晴れる天気のほうが、効率はいいようだ。
また、太陽は移動するので、太陽と正対するようにマメにクッカーの位置を動かして調節することも大切だ。もちろん、何かの影が入るのは避けたい。鍋は熱くなるので軍手もあると便利。また、ソーラークッカーの反射光は直接目に入らないよう注意しよう。できればサングラスをかけて作業したい。
01 鍋はかならず外側が黒いものを用意しよう。アウトドア用の飯ごうなどが便利 02 食材を鍋に入れてから、フタをしっかり閉める。次にOPP袋のような耐熱袋ですっぽり覆う。熱を逃さないための工夫だ。空気を入れてふわっと包むのがコツ 03 鍋の下に置く魚焼き網。箸や棒切れでもよい 04 こんなふうにセッティングする 
ご飯・ゆでタマゴ・ポテトサラダ・プリンを作る
01 米は2合、タマゴは3個、ジャガイモは皮をむいて同じ大きさにカット。下ごしらえ済みの材料をそれぞれの鍋にセットする。タマゴの鍋に入れる水は1cmぐらいでよい。じゃがいもの鍋にも水は1cmぐらい入れる 02 ゆでタマゴの鍋、ジャガイモの鍋、プリンの鍋は耐熱袋で覆ってから、それぞれをサンピースにセットする 03 1時間後、固ゆでタマゴのできあがり 04 タマゴと同じころ、ジャガイモがいい感じになった。箸ですっと刺せたらパスタ用ジェノベーゼソースを混ぜるだけでポテトサラダの完成だ 05 プリンはタマゴ3個、牛乳300cc、砂糖大さじ6(好みで調節)をよく混ぜ合わせてプリン液を作り、鍋にカラメルソースを敷いてからプリン液を流し込む
*プリン液は茶漉しでこすとよりなめらかになる 06 鍋を逆さにしてコロンと出してみる。ご覧のようにおいしそう!簡単だが、 ホントにうまい! しかも誰にも教えたくないほど簡単! 07 ご飯は時間がかかるので、今回は市販のパラボラ式ソーラークッカーで調理。パラボラ式の場合は、鍋を耐熱袋で覆わずに使う 08 30分後、ご飯が炊けた。ほお~ら!
ふっくらと炊きあがった!
いろいろあります!ソーラークッカー・ウォッチング
パネル式<鳥居式携帯用ソーラークッカー>
本誌27号(2002年4月号)で紹介した鳥居ヤス子さん(日本ソーラークッキング協会会長)が発案したパネル型ソーラークッカー。簡単に作れる上、折りたたんで携帯できるのが便利(日本ソーラークッキング協会)
パネル式<エデュクッカー003>
足利工業大学の中條祐一教授が設計したソーラークッカー。富岡さんが参考にしたクッカーだ。使わないときは写真のように折りたたむことができる(昭和理化学機械株式会社)
ボックス型<サンオーブン>
アメリカ製のボックス型ソーラークッカー。箱の内部に熱を閉じ込めて調理するため、煮込み料理に適しているようだ。反射板を折りたたんでしまうとトランク状になり持ち運びも便利(アンテロープ)
パラボラ型<かるぴかIP8C>
ベランダクッキングで手軽に利用できる軽量型(3.1kg)のパラボラ型ソーラークッカー。太陽への照準操作が簡単にできる照準器がパネル内部についている。収納するときは、三脚をはずすのでパラボラ型にしては意外とコンパクトだ(工房あまね)
取材・文◎オフィスインクベリー/写真◎伊勢和人
*掲載データは2011年6月時のものです。