野外でもない。室内でもない。オープンエアを楽しみながら、全天候に備える半野外空間。
それが、デッキライフの延長線上にあったら、なんと愉快なんだろう。
たとえば、デッキ上に作ったオーニングつきのパーゴラ。
たとえば、デッキで昼寝を楽しみ、観葉植物を楽しみ、アフタヌーンティーを楽しむためのコンサバトリー。
生活領域を広げ、季節や時間によって視界を変幻させる空間。
吹き抜ける風の流れ、樹々のざわめき、小鳥たちのさえずり…。
すべてが心地よい刺激となって、我らの五感に迫ってくる。
これが、デッキ作りの醍醐味だ。
【記事内ギャラリー】
Case03 プライベート感と開放感を両立させる屋根&フェンスの絶妙なサイズ
H邸では、ベランダにウッドデッキと屋根、フェンスを設けることで、プライベート感が増し、リビングルームを延長したかのような空間となった。
屋根はベランダ全体ではなく必要十分な面積のみを覆い、フェンスは目隠しとして機能する最小限の高さに抑えたため、心地いい開放感が保たれているのが、この空間の特長。周囲の環境に合わせながら、どのようにプライベート感と開放感のバランスをとるかが、半野外空間作りのポイントになると思われるが、その点、このベランダはちょうどいい。
完成前から、まさにリビングルームのように日常的に使える空間をイメージしていたという施主は、イメージ通りの生活が送れていると満足げ。
「サンルームにするという案も一瞬浮かんだけど、やっぱり風が通る空間、空気が動く空間がいいなと思って、こうなりました。思ったとおり、最高の居場所になりましたね」
天気のいい日、デッキの上で愛犬たちがくつろぐ姿を見るのも幸せだという。
オーニング利用で開閉式の屋根に
屋根は、日差しや小雨を遮りたいときには閉じ、青空を感じたいときには開けられるよう、オーニングをつけた。選んだのはドイツのメーカー、マルキルックス製。収納部分が丸くスマートなのが気に入ったそう。防水仕様だが、できるだけ長持ちさせたくて、そこそこの雨のときはたたむようにしているとのこと。
外壁にビスを打たずに桁と垂木を組む
上のオーニングの説明写真で、屋根とフェンスの全体の骨組みの様子がわかるが、家の壁側に組んだ柱と桁は、壁には接合していない。柱を自立させ、その上に桁を載せているのだ。さらに桁の上に垂木を載せ、垂木の上にオーニングを載せている。雨が漏れるのは覚悟の上で、外壁にビスを打つのは避けたいという施主の要望に応えた構造だ。なお、壁に接合していないため、柱まわりの骨組みを頑丈にしてある点にも注目したい。
できるだけ開放感のある骨組みに
ちょっと変わった骨組みのデザインは、強度を確保しつつ、オーニングをたたんだときに最大限の開放感を得られるよう考えたもの。真ん中付近の垂木の間隔を広くして、先端の2本の横桟を省いたことで、狙いどおりの仕上がりに。
便利に使い分け!たためるフェンス
通常は、目隠しとして機能する高さに設定したフェンス。その一部を、ラッチと蝶番を使って下向きにたためるようにしているのが面白い。大きな荷物をベランダから運ぶことを想定したアイデアだそうだが、気が向いたときだけフェンスをたたんで外の様子を感じられるというのも便利に違いない。
S字フックが大活躍
居心地のいい空間にするには、好みの演出を施したいもの。H邸では、その演出にS字フックが大活躍だ。屋根の骨組みやフェンスにフックをかけて、プランターなどを吊るしている。2本のフックの間にバーを渡して布をかけた日よけも、この空間には欠かせないアイテムだとか。
邪魔にならない小さなテーブル
フェンスの一部に、少し広めの板をつければ、それだけでテーブルのできあがり。これぐらいのサイズなら、あまり邪魔にならないわりに、グラスやコーヒーカップ、読みかけの本などを置くには十分で、使い勝手がいい。
施工◎リーベワークス/写真◎佐藤弘樹
*掲載データは2011年2月時のものです。