「夏は雑草との闘いである」。これが菜園ライフや里山暮らしをする人の一致する意見だ。太陽の熱射を受け、ムシムシする空気の中で、刈り払い機を持ち、長袖&長ズボン姿で伸び盛る草に挑む。これが実にツライ。でも、草刈りが終わった後、ひとッ風呂浴びて飲む冷えたビールって、実にカンドー的!
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「田舎」と呼ばれている地域では、刈り払い機(草刈り機)の常備が当たり前だ。農家では「一家に1台」どころじゃない。「ひとり1台」のケースだって珍しくないのだ。千葉県いすみ市の里山にあるドゥーパ!のガーデンスタジオも例外ではない。2サイクルのエンジン式と電動式バッテリータイプの2種類の刈り払い機を用意しており、夏が近づくと、とにかく草刈りに追われる。人気はやはりバッテリータイプだ。スイッチひとつで始動するし、軽くて取り回しが楽で静か。ただし、バッテリーが20分ほどでなくなるから、充電する時間帯が必要で、これを休憩時間にしている。
これに対してエンジン式は、ポンピングで燃料を送り込んだり、チョーキングしたり、スターターを引っ張ったりして、始動までにするべき手続きがいろいろある。パワフルだがうるさいし、振動も大きい。やや重い。排気ガスも充満する。ただし中には、エンジン式にこだわる人もいる。聞くと「あの振動とピーキーな2サイクル音がいいのだ」という。確かに、エンジン式刈り払い機で草刈りに集中していると、つい夢中になっちゃって、最後に気持ち悪くなるなんてこともあった。実は、これはかなりヤバイ状態なのだ。独立行政法人「国民センター」によると、刈り払い機の作業中の事故は、60歳代が最も多く、次いで70歳代、50歳代とか。事故の内容も、「刈り刃のキックバックで指を切断」「軍手が絡まり、巻き込まれて指を切断」「刈り刃の回転による飛散物が目に混入」「転倒して刈り刃が身体に接触」など、実にさまざまだ。
そこで、夏の草刈りシーズンを控えた今、気をつけたい草刈り作業をまとめてみた。
服装について
前述の写真を参照すること。頭のてっぺんからつま先まで油断禁物。刈り払い機の刈り刃による事故のほか、スズメバチへの対策も怠ってはいけない。また、草むらに入るときはマムシに注意すること。
作業時間
1日2時間以内、連続30分以内、休憩5~10分を基本にしよう。振動障害予防のためもあるし、熱中症対策にもなる。疲労による事故も防げる。
刈り刃に接触する事故対策
キックバックを避けるために、刈り刃の左右往復刈りを避けること。右から左に振りながら、刈り刃の先端から左側の3分の1の部分を使って刈ること。刈り刃の先端から右側の3分の1の部分が障害物にあたるとキックバックを起こしやすい(上写真参照)。できれば、切り株や岩、狭い場所などがある場所では、刈り刃が障害物にあたってもキックバックしにくい、ナイロンコードに変えたほうがいい。ベテランの中には、草などが絡むのを嫌がって、飛散防止カバーをはずす人がいるが、これは飛散物の事故の原因にもなるのでやめること。
刈り払い機(草刈り機)と刈り刃の種類と一般的な特徴
刈り払い機の草刈り、スペシャル情報
これ、おすすめ!斜面の草刈りで大活躍の「土手歩き」
一度やった人ならわかるはずだが、急斜面での草刈りはけっこう辛い。足元が不安定で、滑ったり、足が痛くなったり、体勢を立て直すために各所に力が入り、疲労の度合いもハンパじゃない。そこで使ってみたのが「土手歩き」という斜面専用草刈りスパイクだ。靴を載せるとほぼ水平になるように、角度をつけた鉄板を組み入れたもので、斜面でも足首を曲げずに作業できる。20~45度位までの斜面に対応でき、靴の脱着も簡単。本誌が実際に試した結果、ホントに楽だし、安全に作業できることがわかった。(イーハトーブ合同会社)
肩掛けベルトを2点吊りベルトにすると作業が楽になる
これも「土手歩き」を考案した同社のアイデア。刈り払い機を1点で吊っている肩掛けベルトに1mほどのロープを結んで延長し、ハンドルとシャフトの交差位置に縛って2点吊りベルトにすると、刈り払い機がより自由に動かせ、作業が楽になるとか。一度試す価値あり?
チップソーの目立てで切れ味をアップ!
あまり聞いたことはないが、古いチップソーは、ダイヤモンド砥石をつけたディスクグラインダーで目立てすれば、驚くほど切れ味がよくなるそうだ。コツは砥石をほんの1秒くらいずつ、チップソーのチップの「逃げ面」と「すくい面」にあてることらしい。強くあてると削りすぎでチップソーの寿命が短くなってしまうとか。
刈った草を「まとめながら」刈る
刈り刃を右から左へ動かして刈り進むとき、左端で刃先を少し左側に倒してやると、刈った草がそこにまとまるので、刈り跡がきれいになるばかりか、あとで刈った草を集めるときに都合がいい。地域住民総出で行なう村道の草刈り作業のときは、これであなたはヒーロー?
文・写真◎脇野修平/取材協力◎金綱良行
参考文献/農家が教えるラクラク草刈り・草取り術(農文協刊)
*掲載データは2015年4月時のものです。
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ドゥーパ!創刊編集長、脇野修平が20年間のDIY雑誌のロケ体験、取材体験、施工体験を綴った書籍『庭遊びの達人が教える 野外DIY実践術』が好評発売中。約40点の面白作品の施工レシピや思い出コラムなど、本誌読者には見逃せない内容だ。カラー176ページ、学研プラス刊。本体2000円+税