達人に訊く
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2022/8/13 14:14

夏休み短期集中連載!ピザ窯・パン窯を自分で作るための8つのポイント(2)

窯作りに挑戦する皆さんのために、押さえておくべきポイントをまとめて解説。これさえチェックすれば、あなたの頭の中では、すでに立派な窯ができあがってるはず。ほら、意外と簡単に作れそうでしょ?

*ピザ窯・パン窯の基本とPOINT1・2はコチラ!

 

<記事内ギャラリー>

 

POINT3 ドーム型か、アーチ型か、スクエア型か?

 

窯は、内部の形状によって空気の流れが変わり、薪の燃え方、熱の回り方が変わる。つまり、ピザやパンの仕上がりに影響を及ぼすことになる。

が、それはあくまで「突き詰めれば…」の話。形に関わらず、窯で焼いたピザやパンは十分においしいはずだ。大まかな焼き具合なら、薪やオキ火の位置によって調整することもできる。

ちなみに理想は、横から見て丸く尻上がり、上から見ると滴のような形状だといわれている。粘土を使えば可能だが、耐火レンガで作るには難しい形だ。

 

ドーム型
耐火レンガをドーム型(半球型)に組んだ窯。壁、天井の各部から中心までの距離が均一なので、ムラの少ない焼け具合になる(兵庫県・Kさん製作)

 

ドーム状の型を合板で作り、その型に合わせて、カットした耐火レンガを並べていく

 

ドーム型に組むには、耐火レンガひとつにつき、3面をカットする。スライド丸ノコがあれば比較的作業が速いが、それでも手間はかなりのもの。なお、レンガや石材のカットはディスクグラインダーでもできる

 

アーチ型
上部が半円状のため、熱が回りやすいアーチ型。DIYでは最もポピュラーなタイプ。壁を積み上げ、天井をアーチ状に組む。ここでは手前の列にはアーチ用の扇形レンガを使い、奥の列には標準形のレンガをそのまま使用。扇形の目地は真っすぐになり、標準形の目地は上が広がる

 

アーチ状(カマボコ状)の型を作り、さらに目地分のスペーサーを合板などで作って並べていけば、アーチ型に組める。組み終わったら、目地に耐火コンクリートを流し込みながら、スペーサーを抜いていく(神奈川県・Mさん製作)

 

スクエア型
四角い箱のような単純な形。これでも十分にピザやパンが焼ける(木村博明さん&ドゥーパ!ワークショップ参加者製作)

 

幅が広い耐火材を壁の上に渡せば完成。実に簡単だが、薄いと割れやすいので注意。二層式窯の上段の床と同様の資材を使うといい

 

DIYで作る窯のほとんどは、ドーム型、アーチ型、スクエア型のいずれかに分けられる。

この中では、ドーム型が熱の回りがいい。ただし、作るのは最も大変なはずだ。ドーム型の木型を作り、レンガをひとつずつ加工するという手間がかかる。

アーチ型も標準形の耐火レンガを使えば、ドーム型と同様の手順で作ることになる。ただドーム型ほど複雑な形状ではないので、比較的作業は楽だ。さらに、もともと扇形をしたアーチ用の耐火レンガも販売されているので、それを使えばグッと手軽になる。

スクエア型はもっとも単純。前項で紹介した二層式の上段の床と同じように、板状の資材をのせて天井を作ればいい。

どの形状にもいえるのは、窯口を小さくすれば熱が逃げにくいということ。

とはいえ、小さ過ぎると、空気の流入が少なくなって薪が燃えにくくなる(煙突をつければ解消できる)。また、ピザやパンだけでなく、ピール、トレー、ダッチオーブンなど、出し入れするもののサイズも考慮しなければならない。

なお、窯本体のサイズは、ピザ、パン、ダッチオーブンなどのサイズから見当をつければいいが、大きいほど温まるまでに時間がかかり、小さいほど薪が燃えにくくなるということは知っておこう。

 

窯口を小さくする場合は、カットして形状を合わせた耐火レンガを、耐火コンクリートで接着する。耐火コンクリートが硬化するまで、クランプなどで押さえて固定する

 

POINT4 煙突

窯に煙突があれば、空気の流れがスムーズになり、薪がよく燃え、煙の抜けもいい。

煙突は細め(100~150mm程度)で、真っすぐ立ち上がっているほうが、空気の流れが強くなり、薪が燃えやすい。

煙突がうまく働けば、窯口が小さくても薪が燃えるため、熱が逃げにくい窯を作ることができる。

熱が逃げにくい窯を目指すなら、煙突にはダンパーを装備したい。ダンパーは煙突を遮断する板のこと。薪を燃やす間は開放して空気を流し、窯が温まったら遮断して熱が逃げるのを防ぐというわけだ。

もともと空気をよく取り込み、薪がしっかり燃える窯なら、窯口から煙が出ることにはなるが、必ずしも煙突は必要でない。

 

資材の選択が面白い煙突。本体は2本の土管を連ねて耐火セメントで接着。土台は穴あきレンガで、笠はボウル。薄いレンガを抜き差ししてダンパーとしている(栃木県・Iさん製作)

 

DIY窯の煙突資材で最もポピュラーなのは、薪ストーブ用の煙突。簡単に組み立てられ、安価なのが魅力。あらかじめ窯に開口部を設けておき、煙突を差し込んで、耐火コンクリートなどで固定する(京都府・Hさん製作)

 

窯の天井に開口部を設け、耐火レンガで簡単に囲っただけの煙突。ダンパーは耐火レンガをスライドさせるだけ。とても単純だが、立派に役目を果たしている(長野県・Sさん製作)

 

煙突側面の目地部分に鉄板と鉄筋で作ったダンパーを差し込んでいる。レンガを積んで作る煙突は、手間はかかるが、窯との一体感があって完成度が高まる。雨が入りにくいよう、煙の排出口を側面に設けていることに注目(千葉県・Mさん製作)

イラスト◎丸山孝広