アウトドア気分が高まる季節。今年は自作のアイテムを伴って、いっそう味わい深い時間を過ごそう。意外と簡単に作ることができ、手にすれば大いに心を満たしてくれるアウトドア小物の作り方を紹介!
CRAFT1 金ヤスリでアウトドアナイフを作る
鉄工用の金ヤスリが、なんとナイフに変身する。簡単レンガ炉で熱し、ハンマーで叩いて、ディスクグラインダーで成形・研磨するという流れ。はじめてでも1日あればできてしまうナイフ作りをリポート!
金ヤスリから作ったナイフ。刃の長さは約90mm。ハンドルはヒメシャラの木
そもそもこの特集の発端となったのが、阪口カメラマン発案の「鍛造ナイフを作ろう!」企画。さすがは自宅を在来工法でセルフビルドするほどディープなDIYerの阪口カメラマン、「わしはネパールのグルカ族村の鍛冶屋のナイフ作りだって見たことがある!」などとスゴイのかどうかよくわからないことを並べたてるのは聞き流すとして、「炉はレンガで簡単に作れるし、材料は鉄工用の金ヤスリでOK」という、ドゥーパ!的な親しみやすさを感じさせるアピールに惹かれ、やろうやろう!ということに。なんとも男心をくすぐるMYナイフ作り。本当にできるのか〜!? 興奮するぜ〜!
<使う材料はコレだけ!>
材料は鉄工用の金ヤスリ。長さは150mm
<ナイフ作りで大活躍の道具一覧>
金床は150mmのものを使用。ホームセンターで3000円程度で購入 ナイフの成形と研磨にはディスクグラインダーを使う ディスクグラインダーの砥石。金属用の切断砥石と研磨砥石、多羽根ディスクを使い分ける 炉への送風のためにエアダスターを使用。ブロワーやドライヤーでもいい 炭を動かしたり、熱した鋼を取り出したりするには火バサミを、ハンマーで叩くときに鋼を保持するにはヤットコを使う。ハンマーはやや重めのものがいい(使用したのは1.1kg)。皮手袋は長いほうが安全
<1、炉を作る>
01 レンガをこのように積み(26個使用)、バーベキュー網を挟むだけの簡単な炉を作る。耐火レンガを使用したが、一度きりなら普通レンガでもOKだろう。網は高温で破れる可能性を考慮し、2枚重ねにした 02 網の上に炭を載せ、火を熾す 03 エアダスターで送風して炉の温度を上げる。送風装置は炉にぴったりくっつけなくても十分に利く(というより、熱くてくっつけられない。無理しないように)。長めの皮手袋をはめて防護しよう。くれぐれも火の用心を
人力では無理がありました……
最初は板切れであおいで炉の温度を上げようと頑張ってみた編集部豊田。2時間ほどネバったが思うように温度が上がらないまま体力が切れ、エアダスターのお世話になることに。体力自慢のDIYerは、一度挑戦してみてもいい……かも。

<2、鋼を熱して叩く>
01 あらかじめ炉の近くに、金床、ハンマー、ヤットコをセットしておく 02 金ヤスリを炉の中に入れる 03 火がよくあたる位置に金ヤスリを置き、上から炭をかぶせる 04 送風して炉の温度を上げ、鋼が赤〜オレンジになったら炉から取り出す。5分ほどでこのような色になった。やっぱり送風力が重要のよう 05 金床の上に鋼を載せ、ヤットコで保持しながら、ハンマーで叩く。鋼が赤いうちは叩くとつぶれて伸びる手応えがある。いかにも金属を叩いているようにキーンキーンと音が鳴るようになったらダメ。熱し直そう。ナイフの峰にするほうは叩かず、刃にするほうをつぶすように叩く。とはいえ、思いどおりに叩けるようになるには、当然ながら経験が必要 06 叩きながら鋼が冷めたら熱し直す。送風により炉の温度がどんどん上がり、炎の色が赤から黄へと変わっていく。1000℃くらいが炉の適温らしいが、もちろん測れないので、作業を繰り返しながら感覚をつかみたい 07 熱しては叩き、叩いては熱すを繰り返す。重めのハンマーなので、けっこう疲れる。今回は2人で交代しながら叩いた。くれぐれも集中力を切らさないように 08 ナイフの刃にする部分が適度な厚さにつぶれているか確認する。あとでさらにディスクグラインダーで削るので、この時点では少し厚めがいい 09 叩き終えた状態
<3、焼きなましをする>
01 叩いた鋼をもう一度赤く熱させる 02 熱した鋼を土に埋める。これが焼きなまし。熱した鋼を土中でゆっくり冷ますことで、鋼が軟らかくなり、成形しやすくなる。1時間ほど埋める
<4、成形する>
01 土中から掘り出した鋼。作りたい形にマジックで墨つけする 02 金属用切断砥石をつけたディスクグラインダーで墨線どおりにカットする 03 ナイフの形状が大まかにできた 04 金属用研磨砥石をつけたディスクグラインダーで表面を磨き、刃の形状を作る。ただし、ここで刃を鋭くしすぎると、焼き入れのときに割れる恐れがあるので、ほどほどにして、最後に研いで仕上げることにする 05 成形が完了。もとが金ヤスリであることを示すべく、あえて峰付近の表面にはギザギザを残した
<5、焼き入れをする>
01 炉の傍らに、40℃ほどの湯を用意する。ここでは天ぷら用温度計を使ったが、手を入れてイイ湯加減ならOK 02 再び温度を上げた炉に成形したナイフを入れ、全体が赤くなるまで焼く 03 赤くなったナイフを湯につける。これで焼き入れ完了
<6、焼き戻しをする>
焼き入れしたナイフを180℃で1時間ほど焼く。これが焼き戻し。焼き入れして過度に硬くなったナイフを少し軟らかくする工程。これにより折れにくくなるとともに、刃が研ぎやすくなる。オーブンレンジやホットプレート(フタをする)などを使うと温度調節がしやすい
<7、刃を研ぐ>
01 焼き戻しが終わったら、焼き入れで黒くなった表面を磨く。多羽根ディスクをつけたディスクグラインダーを使用 02 砥石で刃を研いで仕上げる。包丁を研ぐように、均等な力で両面を研ぐ。切れ味を確かめながら、納得するまで研げばいい
<8、ハンドルをつける>
01 ほどよい太さのヒメシャラの木をハンドルにすることにした。ナイフとバランスがいい長さにカットする 02 金ヤスリのナカゴ(下側の細い部分)の太さより少し細い径のドリルで穴をあける 03 ドリルであけた穴にナカゴを差し込み、木づちで根元まで叩き込む 完成! 外で無闇にこのようなポーズをとっていると銃刀法違反になる恐れがあるので要注意…。ナイフは必要なときに取り出し、使ったらすみやかにしまうように。くれぐれも刃の扱いには用心を *掲載データは2013年4月時ものです。
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写真◎阪口 克