アウトドア気分が高まる季節。今年は自作のアイテムを伴って、いっそう味わい深い時間を過ごそう。意外と簡単に作ることができ、手にすれば大いに心を満たしてくれるアウトドア小物の作り方を紹介!
CRAFT2 革でナイフシースを作る
前回、完成したナイフにぴったり合うシース(さや)が欲しい。手作りシースの定番は革か木だが、ここではあえて本誌で馴染みのないレザークラフトを取り上げよう。初心者でも十分楽しめる内容なので、皆さんぜひチャレンジを!
*金ヤスリのアウトドアナイフ作りの様子はコチラ!
手作りナイフにぴったり合うシースが完成した。革だけに、時とともに味わい深さが増すだろう
革のシースを作りたくて訪ねたのは、クラフト作家の長野修平氏。趣旨を伝えると、「カンタン、カンタン!」と頼もしい返事。「要はナイフの形状に合わせて革を切り、筒状に縫い合わせればOK」との説明を聞くと、確かに手軽な感じがする。というわけで、長野さんにシース作りを実践してもらったところ、菱目打ちやスピーディースティッチャーといった特殊な道具が登場したものの、やっぱり作業はいたって単純。もちろん、熟練度によって仕上がりに差はあるだろうが、味わい深い革のシース、初心者だって間違いなく作れます!
<レザーシース作りならではの道具と資材>
革に糸を通すための穴をあける道具、菱目打ち。刃の本数はいろいろあるが、今回は4本のものと1本のものを使用。1本数百円程度〜 針を使うよりもスピーディーに縫える道具、その名もスピーディースティッチャー。内部に糸を巻いたボビンが収まる。3000円前後で購入可能 皮革用の糸。左が針に通して使うロウ付け麻糸。右はスピーディースティッチャー専用品 皮革用の針。最もシンプルな縫い方で使用する。2本使う 今回の主材は2.5mm厚の牛革。300×300mmで4000円程度。使用したのは100×300mmほど トコ面仕上げ剤。革のトコ面(裏面)にツヤを出し、保護する。今回は無色を使用 皮革用の接着剤。皮同士の仮留め、接合補助に
<1、ナイフに合わせて型紙を作る>

<2、革をカットする>
01 革の裏面に型紙をあて、輪郭を写しとる 02 型紙を少しずらし、スペーサーの形を写しとる 03 墨つけ完了 04 墨線どおりにカットする。普通のカッターナイフで十分切れる 05 スペーサーも含め、カット完了
<3、各部材を加工する>
01 革の裏面に中心線を引く 02 スペーサーを仮置きして、水抜きのためにカットする部分を墨つけする。幅は適当でかまわない 03 水抜き部分をカットした。こうして先端にすき間をあけておけば、濡れたナイフをしまっても水がたまらない 04 ナイフの先端を奥にぴったり合わせた状態で、ハンドルの先端から5〜10mmほど尻側に線を引く 05 ハンドル部とナイフ部の折り曲げ線を引く 06 スペーサーに、ハンドルがあたらないようにするための窪みを、現物合わせで墨つけする 07 墨つけした位置をカッターで切り、窪みをつけた 08 ハンドル部とナイフ部の折り曲げ線を彫刻刀(丸刀)で削る 09 折り曲げ線を削ったことで、このように折り曲げやすくなった
<4、ベルトループを仮留めし、縫い穴をあける>
01 ベルトループを折り曲げ、現物合わせでベルトが通るほどの幅の見当をつけて、ベルトループを縫いつける部分に墨つけする 02 墨つけした部分の両面に接着剤を塗る 03 接着剤を塗ってから5分おき(コレ大切!)、接合面を合わせ木ヅチで叩いて接着する。これでしっかり仮留めできる 04 糸を通すラインに菱目打ちをあて、カナヅチで叩く 05 このように裏面に刃先が出るまで打ち込む 06 場所に応じて1本の菱目打ちを使い分ける 07 糸を通す穴があいた 08 裏返して、穴を結ぶように墨線を引き、墨線どおりに彫刻刀(丸刀)で削る 09 削り終えた。この溝に糸が収まる。この作業をしないと、ナイフをシースに収めたときに糸にあたり、切ってしまうおそれがある
<5、ベルトループを縫う>
*縫い方の詳細は記事の最後も参照してほしい!
01 1本目の針を最初の穴に通す。裏側から通す 02 反対側から2本目の針を通す。2本とも糸尻(糸の後端)が裏面にくるよう、2本目はいったん次の穴に通してから、1本目と同じ穴に通す 03 2本目を裏面から再び次の穴に通す 04 1本目を反対側から次の穴に通す 05 糸が弛まないよう引っ張る。これを繰り返す 06 裏面にある2本の糸の糸尻を、巻き込んで押さえながら縫い進める 07 最後の穴まで縫い終えた 08 最後まで縫ったら、縫い終えた糸に針を通しながら2縫いほど戻る。2本とも裏面でこの作業を行なう 09 糸をカッターで切る 10 糸を2本とも切り、最初に巻き込んでおいた糸尻と、最後に糸を切った部分に接着剤を塗る 11 接着剤を塗ったところを木槌で軽く叩いて押さえる 12 糸が溝に収まっている。これでナイフで糸を切ることはない 13 表面の状態。ベルトループを縫い終えた
<6、本体を仮留めし、縫い穴をあける>
01 スペーサーをつける位置にあて、墨つけする。これがのりしろになる 02 本体ののりしろとスペーサーの両面に接着剤を塗る 03 接着剤を塗って5分おき、張り合わせる 04 張り合わせた部分を木槌で叩く。これで仮留め完了 05 菱目打ちで縫い穴をあける 06 縫い穴があいた
<7、本体を縫う>
01 スピーディースティッチャーの糸を、シース全長を1往復半するほど引き出す 02 最初の穴にスティッチャーの先端を通す 03 スティッチャーの糸を引っ張り、穴に通す 04 スティッチャーを抜き取る 05 スティッチャーの先端を次の穴に通す 06 スティッチャーの先端を少し抜くと糸がたわむので、たわんでできた輪に、最初の穴に通しておいた糸を通す 07 通した糸を(写真左向きに)引っ張るとともに、スティッチャーを抜き取り、糸を(写真右向きに)引っ張って締める。これで1縫い。これを繰り返す 08 最後は、スティッチャーを少し抜いてできた糸のたわみに、前の穴に通しておいた糸を2重に通して、しっかりと締め上げる 09 さらに1穴戻って、手順08と同じ作業を繰り返す 10 しっかりと締めて、余った糸を切る 11-1 ベルトループのときと同様に、糸を切った部分に接着剤を塗り、木槌で軽く叩いて押さえる 11-2 これで本体を縫い終えた
<8、ナイフに合わせて形をつける>
01 縫い終えたシースを水につけて柔らかくする。つける時間は革の質によってまちまち。水を吸いやすい革なら数分程度。今回は20分ほどつけた。水を吸った革は色が濃くなる 02 柔らかくなったシースを水から取り出し、ナイフを奥まで差し込んで、指で押してシースに形をつける 03 ヘラを使って、しっかりと形をつける 04 形がついた。このまま革の水分が抜けるまでしっかりと乾燥させれば、形は崩れなくなる
<9、仕上げ剤を塗る>
01 革のトコ面(裏面)にトコ面仕上げ剤を塗る。ヘラでこするようにして塗り込むとツルツルになる 02 表面にもウエスで
塗り広げる 03-1 完成! 03-2 世界にひとつ! 手作りナイフに
ぴったり合う
手作りシースだ
針でも、スピーディースティッチャーでもどっちでもOK!
今回は2種類の縫い方を紹介するため、ベルトループは針、本体はスピーディースティッチャーと使い分けたが、すべて針で縫っても、スピーディースティッチャーで縫っても、もちろんOK。2種類の縫い方の手順をイラストでも掲載しておこう。
01 1本目の糸を最初の穴に通す 02 2本目の糸を、次の穴に通してから最初に穴に通す 03 2本目の糸を、1本目の糸尻を巻き込みながら次の穴に通す 04 1本目の糸を次の穴に通す 05 糸尻を巻き込みながら、2本の糸を交差させて縫い進める 06 最後の穴まで縫ったら、表面に出たほうの糸を1穴戻って通し、裏面の縫い終えた糸、2縫い分に通してしっかり締める 07 裏面に出たほうの糸を、縫い終えた糸、2縫い分に通してしっかり締める。締めた後、余った糸をハサミで切る
01 スティッチャーの先端を最初の穴に通す 02 スティッチャーの糸を引っ張り、穴に通す 03 スティッチャーを抜き取る 04 スティッチャーの先端を次の穴に通す 05 スティッチャーを少し抜き取って、先端の糸をたわませる 06 糸がたわんでできた輪に、最初の穴に通しておいた糸を通す 07 スティッチャーを抜き取り、糸を両方向に引っ張って締める。これを繰り返す 08 最後の穴にスティッチャーを通し、糸がたわんでできた輪に、前の穴に通しておいた糸を2回通す 09 1穴戻ってスティッチャーを通し、糸がたわんでできた輪に、最後の穴に通しておいた糸を2回通してしっかり締める。締めた後、余った糸をハサミで切る *掲載データは2013年4月時ものです。
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写真◎佐藤弘樹