タンザニアでは、2021年3月にジョン・マグフリ大統領(当時)が死去した後、副大統領だったサミア・スルフ・ハッサン氏が政府のトップに就きました。ハッサン氏は同国初の女性大統領として国民から大きな期待を集めていますが、彼女のリーダーシップのもとで改善の歩みを続けているのが、女性の教育を受ける権利です。
タンザニアの教育課程は、初等教育(小学校)の7年間のみが義務教育であり、その次の中等教育以降は就学率が極端に下がります。特に約7割の女性が結婚と出産のため、中等教育課程で中退すると言われています。同国では2000年代初めに「妊娠した女子生徒は退学させられ、二度と学校に戻れない」という法律が制定されました。また、マグフリ前大統領は「妊娠した女性の出産後における学業継続を認めない」とする姿勢を公に示し続けてきたこともあり、女性の出産後の学業復帰は絶望的なものでした。
この法律は2021年12月に廃止され、女性は出産後に学校に戻ることができるようになりましたが、まだ多くの問題が残されています。保育園や両親などに子どもを預けることができない母親は、子どもを学校に連れて行かざるを得ないのですが、先日、タンザニアのアドルフ・ムケンダ(Adolf Mkenda)教育相が「出産後の女性の教育を認める政府の決定は、赤ちゃんを授業に連れてくることを意味するものではない」と発言。育児中の女性がクラスに戻れるようにするだけでなく、ほかの生徒が集中して勉強できる環境を整えることも必要なのです。そのため、タンザニア政府は代替教育プログラムの推進や保育園や託児所などの設立を検討しています。
女性のエンパワーメントのためには、育児や教育支援が不可欠。アフリカでは、ケニアやナイジェリアなどテクノロジーの恩恵によるオンライン教育が爆発的に普及し始めている地域も存在しています。出産後さまざまな理由で登校できないタンザニアの女性の中には、認可教育以外の場所でも教育を受けることができる「EdTech(エドテック)」に希望の光を見出している人もいるかもしれません。