インターネットなどの最先端テクノロジーを活用して、教育分野でイノベーションを起こしている「EdTech」。この産業の成長は途上国において顕著に見られます。新型コロナウイルスのパンデミックによる対面学習の制限やデジタルインフラの拡大が成長を牽引する一因となっており、EdTech市場は、多くの人口を抱える途上国において今後さらに成長していく模様です。
EdTechは、幼児教育から大学等の高等教育機関まで、さらに専門分野の職業訓練における社会人をも対象にしており、生涯学習の観点も考慮すれば、ほぼ全ての世代が顧客対象になる爆発力を秘めています。また、パソコンや学習関連機器などのハードウェア、教育コンテンツとしてのソフトウェア、通信環境としてのインフラ関連、教師に向けたトレーニングなどビジネスとしての裾野が広いこともあり、さまざまな分野、業種の企業が大きな盛り上がりを見せています。
例えば、インドのコンサルティング企業「RedSeer社」が発表した2022年3月のレポートでは、同国のEdTech市場における高等教育や生涯学習の分野は、2025年までに50億ドル(約6190億円※)の市場まで急成長すると予測されています。各大学と企業の提携によりオンラインでの学位取得が広まったことや、コロナ禍の不安定な経済情勢が引き起こした生涯学習の必要性に対する認知向上などが大きく影響しており、ビジネスチャンスの到来と判断した新興企業が続々と設立されています。
※1ドル=約123.7円で換算(2022年4月6日付)
一方、フィリピンでは現地の教育関連テクノロジー企業である「CloudSwyft」が同国の教育省と連携し、デ・ラ・サール大学などの大学に向けて、オンライン環境におけるバーチャルラボ設置ソリューションの試験運用を開始しています。同社のプロダクトは、クラウドベースのソリューションによってハイブリッド学習への移行を可能にするものですが、インフラ整備が未成熟なフィリピンにおいて、デスクトップパソコンを持っていない学生でもモバイル端末があれば、同システムを活用することが可能。このようなユーザー視点の設計が、ハードウェアと設備投資の問題を大きく軽減させることができるものとして高い評価を受けています。
また、CloudSwyftはエンジニアリングや建築、工業デザインなど広範囲な学習内容に適合できるように設計されており、マレーシアやインドネシア、シンガポールなど各国の高等教育機関に採用されています。新興国から教育関連のテクノロジー分野でグローバル展開を果たした同社は、まさに途上国におけるEdTechの成功例と言えます。
現時点で世界をリードしている先進国を人口規模で勝る後進国の人々は、学習や職業において人生を変革できる大きなチャンスと捉えているでしょう。未来を担う世代に向けたトレーニングツールとして今後も右肩上がりの成長が見込まれるEdTech市場は、かなり有望なビジネスチャンスでもあるのです。
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