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アフリカでもっとも有名な日本企業ビィ・フォア―ド社長が語る、アフリカビジネスの最前線

2022/6/13

人口増加などによって市場が急拡大し、さまざまなビジネスチャンスがあると考えられているアフリカ。しかし治安や文化の問題など、アフリカに進出するためにはクリアすべきハードルが多いのも現状です。その中で、2004年に設立された株式会社ビィ・フォアードは、越境ECサイトによる中古車輸出事業をアフリカで広く行い、2020年度の業績は売上高562億円、中古車輸出台数約12万5759台を達成し、業績を伸ばし続けています。アフリカでもっとも有名な日本企業ともいわれるビィ・フォアードの代表取締役社長・山川博功氏に、アフリカに注目した経緯や、現在の事業、途上国ビジネスの魅力などについてお聞きしました。

 

山川博功●大学卒業後、東京日産自動車販売株式会社に入社。退社後、中古自動車買取業の株式会社カーワイズに入社し、グループ内で独立、1999年に株式会社ワイズ山川を設立。その後中古自動車輸出業を開始し、2004年に中古自動車輸出部門を分社化、株式会社ビィ・フォアードを設立した。著書に「グーグルを驚愕させた日本人の知らないニッポン企業」(講談社+α新書)、「アフリカで超人気の日本企業」(東洋経済新報社)がある。

 

日本の中古車に対するニーズを実感し、アフリカで事業を拡大することに

井上  2004年から中古車輸出事業を行っているビィ・フォアードですが、当初はニュージーランドなどで事業を展開されていました。その後は次第に、アフリカを中心に事業を拡大していくことになりますが、なぜアフリカに注目されたのでしょうか。

 

山川 日本の中古車に対するアフリカの反応が、他国と全く異なっていたからです。例えばニュージーランドから「中古車を購入したい」という問い合わせが1日に5件程度だとすると、アフリカからはその100倍以上、500件どころではない問い合わせがありました。アフリカの人たちはこんなにも日本の中古車を欲しがっているんだと、そこに大きなビジネスチャンスを感じたんです。

 

井上 弊社では途上国ビジネスに関するお話を伺うことが多いのですが、ビジネスチャンスだと感じても、日本ではまだアフリカでビジネスを展開することに二の足を踏む企業は多いと感じます。山川社長が決断されたのはどういった理由だったのでしょうか。

 

山川 決断ってほどのことではなくて、問い合わせを受けるなかで「こんなに欲しい人がいる、ならば買ってもらいたい」と思っていました。

 

井上 山川社長はそこに怖さはありませんでしたか。アフリカだとどういった支払い方法にするかがネックになっているとも伺います。

 

山川 怖さはなかったですね。支払いに関しては、トラブルなどが起こらないよう、「お金を100%もらわないと商品を売らない」ということは、最初から徹底していました。もちろんお客さんたちも最初は、あまりよく知らない会社にお金を先払いして車を買うことを、不安に思ったはずです。しかし購入した人たちが「ビィ・フォアードから買えばちゃんと商品が届く」「ビィ・フォアードはいいよ」と、口コミで少しずつ広げていってくれた。その積み重ねが、現地で知名度を上げていくことにもつながりました。

 

井上 口コミで広めてもらうことは、最初から意図していたことなのでしょうか?

 

山川 いえ、それは自然にお客さんたちがやってくれたことなんです。私たちがブランディングするためにやっていたのは、車に大きいステッカーを貼ったり、Tシャツを配ったり、キャップを配ったりと、ベタな方法ばかりです。

ただ、ブランディングをする上で会社のロゴデザインにはこだわりました。このブラックとオレンジのロゴ、かっこよくないですか?(笑)最初からアフリカの人たちに受けるものをつくろうとしていたわけではないのですが、競合他社とは一線を画すようなデザインにしたいと思っていました。結果的にはこのロゴも、現地でのブランディングが成功した要因の一つになったのではと考えています。

 

井上 途上国ビジネスでは口コミが効果的だといわれていますが、お客さんが勝手に広めてくれるというのは理想的な形ですね。ロゴのデザインもそうですが、サービス内容なども他の人に紹介したいと思わせる要素があったということだと思います。このあたりは、アフリカ展開したい企業にとって非常に有益な情報だと思いました。

山川社長との対談はビィ・フォア―ド社で行なわれた。こだわったというロゴが見える

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アフリカで独自の物流ルートを構築し、ラストワンマイルの課題を解消

井上 知名度を上げ、事業を拡大させていったビィ・フォアードは、その後アフリカで独自の物流ルートを構築しました。これは他の会社にはなかなかできないことだと思うのですが、そもそもなぜ物流ルートをつくろうと思われたのでしょうか?

 

山川 もともと私たちの事業では、中古車を港まで運び、そこからはお客さんに引き取ってもらうというシステムが基本でした。しかし引き渡しまでにトラブルが起こることも多々あったんです。例えばあるとき、タンザニアのダルエスサラーム港に到着した車を、そこから2000キロ離れたザンビア共和国の首都・ルサカまで運ぼうとしたお客さんがいました。しかしその車のエンジンが壊れてしまい……。私たちで補償しようと思ったのですが、現地では手に入らず、日本から取り寄せることになりました。

その後、エンジンを日本からダルエスサラーム港まで船で運びましたが、かかった船賃は約9万円。これは想定内の金額でした。しかしダルエスサラーム港からルサカまで陸地で運ぶのに、なんと約85万円もかかることが分かったんです。2000キロ走るとなるとドライバーが2、3人必要でしょうし、帰り道は空荷になるので、コストが高くなることは理解できます。それでも日本で2000キロと言うと、せいぜい札幌から博多くらいまでの距離。4、5万程度で運べるはずです。アフリカではエンジン一基を運ぶのにとんでもないコストがかかると痛感し、アフリカで物流ルートがつくれたらと考えるようになりました。

 

井上 そこにビジネスチャンスがあると思われたのですね。

 

山川 はい。そしてもう一つ、南アフリカのエージェントからアフリカの物流網について話を聞いたこともきっかけになりました。その彼から、南アフリカの中ではキャリアカーで車を運べるけれど、国を出た瞬間から道が整備されていないため自走させなくてはならないという話を聞いたんです。同じ大陸でも国によってインフラの整備状況は異なり、アフリカ全体の物流網はまだまだ弱いとあらためて感じました。例えば南アフリカ、ケニアはいろいろなモノが手に入ったり、生活していく上でのサービスも充実している、だけど、ちょっと隣の国に行ってモノを運ぶだけでも不便でしょうがない。こうした背景もあって、物流ルートを構築していこうと決意しました。

 

井上 アフリカは貿易港がない内陸国も多いですし、そういった国に陸送するルートは当時整備されていなかったと思います。インフラだけでなく、ドライバーの質や、通関の煩雑さといった課題もあると思うので、1つひとつ物流ルートを開拓していくのは苦労の連続だったんじゃないでしょうか。

 

山川 苦労に鈍感みたいであまり感じませんでした。ただ毎日何かしらトラブルは起きました。それもあって慣れっこになっています(笑)。

 

井上 アフリカでは事業拡大に苦戦している会社も多いイメージがあります。ビィ・フォア―ドのように事業をスケールする上で、成功のポイントはあったのでしょうか。

 

山川 やっぱりお客さんが欲しているかどうかじゃないですかね。それぞれの会社も需要があると思って起業していると思いますので。リスクを取ってというような経営をしているつもりはありません。ただ事業計画を立ててからとやっているうちに他社に取られてしまいますからスピード重視ではあります。

雇用につながるビジネスという考えに大きく同意

 

信用できる現地エージェントと共に、さらなる事業拡大を目指す

井上 途上国ビジネスにおいては、現地のパートナー選びも非常に重要なことだと思います。信頼できる会社をエージェントとして選ぶために、山川社長が意識されていることを教えてください。

 

山川 私たちの場合は、通関業務ができる会社、つまり国から許可をもらっている会社を基本的にはエージェントにしているため、その時点である程度は信用できる会社が集まります。もちろん、トラブルになることが全くないわけではありませんが……。その上で、私が大切だと考えているのは、その会社がお金を持っているかどうか。ビジネスの世界でお金は、信用度をはかる重要な判断基準です。さらに、ビジネスに対する真面目さも必要だと感じています。

 

井上 途中でエージェントを変えることもあるのでしょうか?

 

山川 もちろんありますよ。ビジネスですから、私たちもシビアに判断しています。例えばタンザニアには数社のエージェントがいるのですが、タンザニアにあるダルエスサラーム港には毎月5000~6000台の車を輸出しています。大手のエージェントには1000~2000台の通関をやってもらうのですが、1台につきいくらかの日銭が入るんです。現地の人たちにとってはそれが大きな収入になります。しかし例えば、ある会社に毎月500台の通関をお願いしていたとしても、その会社のサービスが悪く、お客さんからクレームなどを受けたりすると、「サービスを向上させないと、300台に減らします」などと交渉することもあります。

 

井上 「ビィ・フォアードがいないと経営が成り立たない」という状況だからこそ、そのような交渉をすることができるんですね。現地で雇用を生んでいるところも、ビィ・フォアードのすごいところです。途上国での雇用創出は、社会貢献としてとても大きなことだと思います。

 

山川 彼らに給料をきちんと払えるか、彼らの家族をちゃんと養えるかというのは重要だと思います。それによってタンザニアでもビィ・フォア―ドへの就職がかなり人気だと聞きます。

 

井上  SDGsでは17の目標が設定されていますが、現金がないことが原因となっている課題は多いです。給料を支払えば、貧困削減につながるだけでなく、そのお金が教育や医療などにも使われるでしょうし、国の発展に大きく寄与していると思います。

雇用を生み出すといえば、現在は事業として「車のパーツ」の越境ECをされていますね。

 

山川 これまでとは違うビジネスモデルをつくれたこともあり、パーツ販売事業は今、売り上げが毎月10パーセントずつ伸びる勢いです。なぜ日本の中古車とそのパーツが人気かというと、とても高品質なうえ、日本は国土が狭い上に鉄道なども発達しているので、そこまでの長距離を走っている車は少なく、道路も整備されているので傷みにくい。さらに車検制度もあるため、修理や整備もきちんとなされています。

高品質な日本の中古車パーツはアフリカでも人気があり、これまでにも日本からパーツを輸出するビジネスは行われていました。その一つが、日本に住む外国人などが、日本の中古車パーツをコンテナに雑多に詰めてアフリカへ輸出するというBtoBのビジネスです。そうしたパーツは現地の小売商が仕入れますが、実際に販売されるのは小規模な店舗がほとんど。どこにどのような部品が置いてあるのかが分からず、なかなか目当ての部品を探すことができませんでした。それに対して私たちは、お客さんたちが欲しい商品を自分で探して購入することができる、300万点以上の部品を扱うECサイトになります。しかも商品は、私たちがこれまで自社で築いてきた輸送ルートを使うことで、低コストでお客さんの元に届けることが可能です。さらにタンザニアでは、書類などをお客さんの家やオフィスに配達する「BE FORWARD EXPRESS」という事業も行っています。

2016年4月1日からタンザニアのダルエスサラームで「BE FORWARD EXPRESS」の運用を開始

 

井上 アフリカも都市部は渋滞がひどいですし、バイク便のようなサービスはニーズがありそうですね。今後、「物流」の強さや、アフリカとのネットワークをさらに活かして、新たに展開したいと考えている事業はありますか?

 

山川 2022年4月に、ケニアで中古車ファイナンス事業を手掛けているHAKKI AFRICA(ハッキアフリカ)と業務提携を行いました。これにより、車両価格の40%を頭金として支払えばビィ・フォアードから車が発送され、車を保有しながら返済を行うことが可能になりました。今後はケニアだけでなく、私たちが得意とするアフリカの他の地域でも取り組んでいきたいと思っています。

 

井上 消費意欲が高いアフリカですが、まとまったお金が用意できない人も多いので、ローン返済ができるようになると顧客はさらに増えそうですね。

「BE FORWARD EXPRESS」や「HAKKI AFRICAと業務提携」といった新規事業も積極的に進めている

 

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市場が拡大するアフリカで、ビジネスをしないのはもったいない!

井上 ビィ・フォアードがアフリカで事業を始められてから15年ほどになりますが、その間にアフリカの市場が変化している実感はありますか?

 

山川 もうぜんぜん違いますね。アフリカで事業を始めた当初から「これからミドル層が増える」と言われていましたが、予想をはるかに超えています。車を買うことができる人、購買意欲の高い人がどんどん増えていると実感しています。

 

井上 私もアフリカに行くたびに、スーパーなどで売られている商品などが増えていくのを見ていて、購買意欲の高まりを感じています。その中で今後、日本企業にとって特にチャンスがあるのはどのような分野でしょうか。

 

山川 私は、日本人は「仕組みづくり」が上手だと思っています。例えば、ビィ・フォアードにはたくさんのエージェントがいますが、どんな人でも作業ができるシステムを提供しています。一つの作業を終えないと次の作業ができない仕組みや、荷物のトラッキングシステムなどを、全てコンピューターシステムで管理しているんです。システムをつくるまでには2年半ほどかかりましたが、結果的にはスタッフたちのミスも減らすことができて、業務を効率化することにつながりました。このような仕組みづくりは日本人の得意分野で、今後も活かしていくことができるのではないでしょうか。

 

井上 最後に、山川社長が考えるアフリカビジネス面白さや魅力を教えてください。

 

山川 例えばアフリカの奥地にいる友人から「車の部品を送ってほしい」と言われたら、どうやって送りますか? 普通ならどこにどう頼めばいいのか、途方にくれてしまうと思います。しかし今、ビィ・フォアードのECサイトを使えば、現地にはない車の部品を探して、その友人がいる所まで届けることができます。このように、誰もどうしていいか分からないようなことをできるようにしていくのが、途上国・新興国のビジネスです。私たちも最初は手探りでしたが、現地で付き合いのある会社や人に相談しながらトライ&エラーを繰り返し、なんとか突破口を見いだしてきました。

 

井上 私たちは途上国への進出支援を行っていますが、途上国のビジネスチャンスに気づいていない企業や、心理的なハードルを感じている企業がまだまだ多いのが現状だと思います。今回のようにアフリカに進出している日本企業のリアルな話や、現地のビジネスに関する情報を広く知ってもらうことで、途上国ビジネスに挑戦する企業が増えていけばと考えています。

 

山川 私も同意見です。日本にいると、生活に必要なものはだいたい何でもそろっていて「モノがない」と感じることは少ないかもしれません。しかしアフリカなどの途上国や新興国では、日本で普通に手に入るモノが、自分たちの国でつくれなかったり、そもそも売られていなかったりすることもいまだに多い。このように「モノが十分にない」地域には、まだまだたくさんのニーズがあると考えられます。こんなにもチャンスがあるアフリカでビジネスしないのは、本当にもったいないこと。ぜひチャレンジしてほしいと思います。

 

【取材を終えて~井上編集長の編集後記】

今回取材をしてみて、一番印象的だったのが皆さんの顔です。社長はもちろんのこと、社員の方々も楽しそうな顔をされていました。会社が常に新しいことにチャレンジをしているからこそ、楽しんで仕事をしているのではないかと感じました。今の日本ではリスクをすぐ考えてしまいがちですが、高度経済成長期の日本企業は、ビィ・フォア―ドのようにリスクを恐れずチャレンジしている会社が多かったと聞きます。あれこれ考えるよりも、まずはスピーディに事業を始め、走りながら1つひとつハードルを越えていくことが、途上国でのビジネスには必要なのかもしれません。

 

【この記事の写真】

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撮影/干川 修 構成/土居りさ子(Playce)