達人に訊く
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2022/1/12 18:18

高所作業のための道具とその使い方・後編/超実践的DIY道具ラボ(18)

家屋のメンテナンスを手がけていると、屋根や煙突の掃除、2階ベランダや外壁上部の補修、植木の剪定など、高所での作業が必要になることがある。そこで今回は高所で作業するための基本的な道具のバリエーションを見ていきたい。

服装や脚立のバリエーションを解説した前編はコチラ!

 

脚立とハシゴの使い方

脚立とハシゴは、使用中に傾いて倒れたり、滑ったりしないように設置することが大切だ。まず設置する地面の状況を見極め、脚立は4本の足が水平に立つことを確認し、脚立全体が傾いていないか確認する。どうしても水平に置けないようなら、足場の地面を少し削って全体が水平になるように修正するか、厚めの合板を敷いたりして水平面を作ってから設置しよう。ハシゴは2本の脚が水平に立つことを確認し、滑らないようにがっちりと地面にふんばることができるか確かめること。ハシゴは横から見て75度の角度で屋根などに寄りかかるように設置する。

ハシゴは上部がしっかり構造物に寄りかかるように余裕をもって立てる。ハシゴの角度は75度に設定するのが理想。写真のような場合、ハシゴ下部と小屋の階段をロープで固定するとより安定する

 

脚立やハシゴの昇り降りでは、3点確保を守るように心がける。3点確保とは、動きの中で両手両足の4点のうち、3点が確実に踏ん張っている状態のこと。たとえば、昇りの動きで両手が支柱をつかんでいるとき、両手は支柱をつかんだままにして、右足を上げて1段昇る。このとき左足はステップに踏ん張っているので、3点で確保していることになる。3点確保は木登りや険しい登山でも守られる基本的な昇り降りのルールで、これを守ることで脚立やハシゴからの転落を確実に防ぐことができる。

 

脚立を使うときは、手をついて身体を支えられる(3点確保できる)構造がある場所か、足場板に立たずに作業するのが理想

 

ロープによる身体の固定方法(屋根上作業時)

本格的な高所作業ではさまざまな安全対策が実施されているが、今回はなるべく安価でより安全に屋根上作業を行なえるよう、簡易な安全ロープを張って墜落を防止する方法を紹介する。

基本的には作業する屋根面の反対側にロープを張り、腰につけた安全ベルトとロープを結んだ状態を作ること。若干作業範囲に制約ができ、移動するのにロープの掛け替えといった作業が必要となるが、屋根からの落下は防止できる。安全ベルトやロープ、接続金具はホームセンターで購入することができるので、店員に相談すればそれほど高額な出費をしなくても装備をそろえることができるはず。ロッククライミングやフリークライミングをやっている人なら、手持ちの器材を使うことも可能だ。

ロープはm単位で販売されていることが多い。購入したら端部分がほどけないようにテープを巻くなど処理してから使用する

 

黄色と黒色の縞模様が特徴のトラロープ。強度が高い太さ12mmのタイプがおすすめ。ポリエチレン製で結び目が少し滑りやすいので注意して使うようにしたい

 

安全ベルトを腰に装着し、ここにロープを結ぶ。ベルトを締める位置は腰骨の高さにする

 

 

事前に足場を組んで作業するのもアリ

高所作業でもっとも本格的なものといえば、足場を組んで作業する方法。足場とは、単管パイプと足場板、足場板を支える支持材などで構成される、建物を囲む仮設の作業スペースのこと。基本は外径48.6mm規格の単管パイプを骨組みに、足場板や階段板、ランヤード(墜落防止用ロープ)を引っかける手すり材などを組み合わせて、高所でも安全に作業できるようにしている。

 

住宅に設置された単管足場の例。作業は足場板の上に立って行ない、手すり状に配置された単管パイプにランヤードのフックを掛けて安全を確保する

 

2丁掛けフックタイプのランヤードがついた安全ベルト

 

ただ足場はとても便利だが、材料をそろえるのにかかる費用や手間、各部材の組み方などを事前に知っておくことが必要。足場を組んだ高所作業の機会はそうそうなく、次回の使用まで単管パイプや金具類を劣化させずに保管しておく場所を確保するのは難しい。そのためDIYでは業者からレンタルするのが望ましい。レンタル料金は壁面積250平米で1カ月~1カ月半単位で20~30万円程度が相場。これに、輸送、安全管理、設置、撤去などの費用が加算されることもある。昇降機付きのタワーや高所作業車を貸し出しているところもあるので、近所のレンタル業者をチェックしてみよう。

 

骨組みに使う単管パイプ、接続金具のクランプ(写真は直交)、固定ベース。近年はハンマーだけで組み立てられる、ユニット化されたパイプを使うことが多い(クサビ緊結式足場)

 

金属製足場板。使うときは足場自体の重量制限によるスパン(渡し長さ)に注意する

 

自在ステップ。足場に階段を作るために使われる足場板だ

 

単管パイプに差し込んで使うジャッキベースにキャスターを組み合わせたもの。地面がコンクリートの場合に限るが、ベース金具として使えば移動式の足場(タワー)などが組めるようになる

 

単管パイプ用の簡易ブラケット(足場板受け)。足場板を好みの高さに取りつけられる

 

現在はあまり見られなくなったが、足場を構成する部材には丸太を番線(なまし鉄線)で組んだものもある。自然木なので使用後は薪にするなり、ガーデニングや木工の資材として活用できるため、DIYでの足場作りではこちらのほうが現実的かもしれない。使われる丸太は直径10cm程度のスギやヒノキの間伐材の皮をむいたもので、5~7mが定尺とされている。

イラスト◎丸山孝広

*掲載データは2017年6月時のものです。