50以上の国々からなるアフリカでGDP第1位を誇るナイジェリア。およそ2億人の人口を抱え、アフリカ経済を牽引する国の一つと言える存在です。そんな同国は、テクノロジー分野で100万人の技術開発者を育成させる取り組みを進めています。ナイジェリアは近い将来、デジタル分野に関連するオフショア開発(※)で委託先の選択肢になるかもしれません。
※アプリケーションやウェブページの開発といったIT(情報技術)関連の業務の一部を海外の会社に委託すること
ナイジェリアは、近年はサービス産業の成長が目覚ましく、GDPが4323億ドル(約57兆円※)とアフリカでトップを走っています。そんなナイジェリアの国家情報技術開発庁(NITDA)のKashifu Abdullahi氏が先日、第16回アレックス年次会議にパネリストとして登壇し、デジタル分野における技術者の育成について触れました。
※1ドル=約132円で換算(2023年1月10日現在)
日本でも、あらゆる企業が労働人口の減少や働き方改革の推進を背景にデジタル化を進めています。それに伴い顕著になっているのが、企業が求めるデジタル技術を持った人材の不足で、その数は約1800万人にのぼるそう。これは日本に限った話ではなく、他国でも同じような傾向が見られ、世界の技術開発者の人材不足は8500万人と予測されています。
そんな世界の人材不足にナイジェリアは着目。100万人のナイジェリア人の技術開発者を世界中のバリューチェーンに組み込むことを目的としたプログラムを開始しました。Abdullahi氏は「ナイジェリアでは、他の先進国に製造業で敵わないものの、人材の分野では躍進できる可能性がある」と指摘しているのです。
同氏がこの会議で言及した、PwCコンサルティングのレポートによると、技術開発者やプログラマーの年収は概ね3万〜15万ドル(約396万〜1980万円)。仮に200万人のナイジェリアの開発者が、ナイジェリア国内からリモートで働き、一人2万ドル(約264万円)の収入を得ることができれば、ナイジェリアで年間400億ドル(約5.2兆円)以上の収入が生まれると試算されています。
また、Abdullahi氏は、世界の技術開発者不足を金額で表した場合、8.5兆ドル(約1123兆円)に達する見込みとも発言。アップル、マイクロソフト、アマゾン、アルファベット(グーグルの親会社)、メタの5大IT企業の評価額は合計で9兆ドル(約1189兆円)になります。つまり、もしナイジェリアだけで世界が求める技術開発者を補うことができたら、同国はアフリカどころか、世界有数の経済大国のような存在になれるかもしれないと同氏は考えているようなのです。
現在、ナイジェリアは同プログラムでAI、ブロックチェーン、ロボット工学、データ解析などの技術部門の人材育成を推進。同時にデジタル経済が発展するための政策を実施したり法的な枠組みを見直したりしています。
Abdullahi氏は「デジタル経済はイノベーションであり、それは人である」と述べ、デジタル経済を推進するためには技術開発者の存在が必要不可欠であると話しています。それは世界各国の共通の課題であり、ナイジェリアがその解決策の一つになる可能性があります。
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