床を撤去して地面に設置
地元の大谷石をフル活用した自給暮らしを支えるベンチつきストーブ
Profile
七田紹匡さん(54歳)/栃木県在住/材料費…約4万円/製作期間…約3年
セルフビルドした家で自給自足の生活を送る「エコヴィレッジみより」の七田紹匡さんは、10年ほど前に農業体験で訪れていたWWOOFer(*欄外参照)が持ってきた本『ロケットストーブ』で初めてロケストの存在を知る。その性能とアイデアに魅せられ、直感的に「これは作るしかない」と思い、本誌の121号でも紹介した石窯暖炉と並行してロケットマスヒーター作りに着手した。
ストーブとヒートベンチはかなりの重さになると予想したので、床の大引きの一部を撤去して直接地面の上に設置することに。土台には解体現場からもらい受けた大谷石、ヒートベンチの煙道の一部には同じく廃材の土管を使用。さらに蓄熱層に使ったベントナイト(粘土の一種)の量をなるべく減らせるよう、庭から採取した砂と石を骨材にして混ぜ、製作コストを抑えた。
「部屋の中もストーブの装置の一部。同じ構造のストーブでも、住んでいる環境、家の構造によってパフォーマンスは変わるので、まずは作ってみて使ってみないとわからない。失敗してもやり直せばいいんです」(七田さん)。
現に、七田さんのストーブも完成から2年が経つが、これまでに煙突の引き方を2回変えており、現在の煙道レイアウトに落ち着いた。満足のいく形になるまで、改造を繰り返してブラッシュアップできるのもDIYロケストの魅力といえる。
*WWOOFer(ウーファー)とは、金銭のやり取りを行なわずに農業体験や人と人との交流をする「WWOOF(ウーフ)」において、ホスト側のお手伝いをする人々のことを指す言葉。
本体は耐火レンガを角筒状に組んだヒートライザーにドラム缶をかぶせた
ストーブ設置部分の下地にはコンクリートを打ち(約100mm厚)、耐火モルタルで接着しながら耐火レンガを積んでヒートライザー&バーントンネルを製作。そして、ヒートライザーの周りをガルバリウム鋼板で筒状に覆い、パーライトとベントナイトを混ぜた断熱材を充填。大谷石とコンクリートで形成した土台にドラム缶を載せ、耐火モルタルですき間を埋めてヒートライザーを囲った。
ヒートベンチの先から延ばした煙突で2階の寝室も同時に暖める
煙突を天井まで延ばす際に、「どうせなら2階も暖房できるのでは?」と思いついた七田さん。2階に延ばした煙突を横引きし、むき出しのままで簡易的なベンチを製作した。
大谷石で構成したヒートベンチの煙道は途中から2本に分岐
ヒートベンチは解体材の大谷石を組んで製作。L字形に折れ曲がっており、折れ曲がった先で煙道は2本に分かれる。その煙道には土管を使い、ベントナイト+砂+石を混ぜたものを蓄熱層とし、表面を漆喰で仕上げた。なお、最初の完成以来、煙道は使い心地を確かめながら2度変更している。1度目の変更時は煙の引きがよすぎて熱がもったいなかったので、完成当初のように煙道を分岐することにして排煙の滞留時間を長くしたとのこと。
写真◎佐藤弘樹
*この記事のデータや内容は2018年12月時のものです。