事例集
事例集
2021/8/16 21:00

セルフビルドの家にベンチつきストーブをIN!DIYerの自作薪スト&ロケスト集【1】

床を撤去して地面に設置
地元の大谷石をフル活用した自給暮らしを支えるベンチつきストーブ

セルフビルドした家の雰囲気に合ったヒートベンチつきストーブ。なお、煙突は2階の寝室まで延ばしており、焚き口と煙突の最上部の高低差は約4.5m。横引きの長さはベンチ部分、2階部分ともに約4mずつある

Profile
七田紹匡さん(54歳)/栃木県在住/材料費…約4万円/製作期間…約3年

 

セルフビルドした家で自給自足の生活を送る「エコヴィレッジみより」の七田紹匡さんは、10年ほど前に農業体験で訪れていたWWOOFer(*欄外参照)が持ってきた本『ロケットストーブ』で初めてロケストの存在を知る。その性能とアイデアに魅せられ、直感的に「これは作るしかない」と思い、本誌の121号でも紹介した石窯暖炉と並行してロケットマスヒーター作りに着手した。

ストーブとヒートベンチはかなりの重さになると予想したので、床の大引きの一部を撤去して直接地面の上に設置することに。土台には解体現場からもらい受けた大谷石、ヒートベンチの煙道の一部には同じく廃材の土管を使用。さらに蓄熱層に使ったベントナイト(粘土の一種)の量をなるべく減らせるよう、庭から採取した砂と石を骨材にして混ぜ、製作コストを抑えた。

「部屋の中もストーブの装置の一部。同じ構造のストーブでも、住んでいる環境、家の構造によってパフォーマンスは変わるので、まずは作ってみて使ってみないとわからない。失敗してもやり直せばいいんです」(七田さん)。

現に、七田さんのストーブも完成から2年が経つが、これまでに煙突の引き方を2回変えており、現在の煙道レイアウトに落ち着いた。満足のいく形になるまで、改造を繰り返してブラッシュアップできるのもDIYロケストの魅力といえる。

*WWOOFer(ウーファー)とは、金銭のやり取りを行なわずに農業体験や人と人との交流をする「WWOOF(ウーフ)」において、ホスト側のお手伝いをする人々のことを指す言葉。

 

天井の梁から網を吊り下げ、ストーブからの輻射熱を利用して食材を乾燥。写真は切り干し大根を作っているところ

 

ストーブ天板は250℃程度まで上昇する。煮込み料理なども可能

 

焚き口は深さがあるので、焚き始めは火バサミで薪の位置を調整する

 

本体は耐火レンガを角筒状に組んだヒートライザーにドラム缶をかぶせた

ストーブ設置部分の下地にはコンクリートを打ち(約100mm厚)、耐火モルタルで接着しながら耐火レンガを積んでヒートライザー&バーントンネルを製作。そして、ヒートライザーの周りをガルバリウム鋼板で筒状に覆い、パーライトとベントナイトを混ぜた断熱材を充填。大谷石とコンクリートで形成した土台にドラム缶を載せ、耐火モルタルですき間を埋めてヒートライザーを囲った。

ストーブ本体。中央の焚き口はカットしたペール缶にラス網を巻き、耐火キャスタブルでコーティング。鉄板は知り合いの鉄工所にドーナツ状にカットしてもらった

 

焚き口の横にコンクリート枡を設置。焚き口からの伝導熱で低温調理が行なえる。夜、食材を入れておくと翌日の昼食のいいおかずになるとのこと

 

ヒートライザーに断熱材をコーティングしたところ。ガルバリウム鋼板は鉄製のボルトで固定した(七田さん撮影)

 

ヒートライザーの周りに大谷石を積み、ベニヤ板の型枠にコンクリートを流し込んで土台を製作。この上にドラム缶を載せてヒートライザーを囲った(七田さん撮影)

 

ヒートライザーの製作。接着用の耐火モルタルは薄く塗り、目地が重ならないように積んだ(七田さん撮影)

 

ヒートベンチの先から延ばした煙突で2階の寝室も同時に暖める

煙突を天井まで延ばす際に、「どうせなら2階も暖房できるのでは?」と思いついた七田さん。2階に延ばした煙突を横引きし、むき出しのままで簡易的なベンチを製作した。

排熱が2階に到達するころには表面温度は30℃台まで下がっているが、最低気温が-15℃を下回るような日でも、小さな石油ストーブを併用するだけで部屋が暖められるようになった

 

煙突の屋外部分には断熱材を巻きつけて凍結を防止。木酢液は煙突のつなぎ目から下にチューブを延ばしてポリタンクにためている

 

大谷石で構成したヒートベンチの煙道は途中から2本に分岐

ヒートベンチは解体材の大谷石を組んで製作。L字形に折れ曲がっており、折れ曲がった先で煙道は2本に分かれる。その煙道には土管を使い、ベントナイト+砂+石を混ぜたものを蓄熱層とし、表面を漆喰で仕上げた。なお、最初の完成以来、煙道は使い心地を確かめながら2度変更している。1度目の変更時は煙の引きがよすぎて熱がもったいなかったので、完成当初のように煙道を分岐することにして排煙の滞留時間を長くしたとのこと。

L字形のヒートベンチ。木製の背もたれがあり、座り心地は上々

 

完成当初の煙道。2階とは別に、居間から続くサンルームにも煙道を延ばしていた(七田さん撮影)

 

1度目の煙道経路変更。以前は火入れすると、サンルームの縦の煙突が冷えすぎたせいか煙がまったく引き込まれず逆流することがあった。そこで、サンルームの暖房は諦め、しっかり機能していた2階の煙突のほうに折り返して1本化することに(七田さん撮影)

 

ヒートベンチの製作の様子。ストーブに近いほうのベンチには点検口を設けている(七田さん撮影)

 

蓄熱材を充填したところ。なるべく多く石を詰めて、ベントナイトはそのつなぎとして使う程度の量に留めている(七田さん撮影)

写真◎佐藤弘樹

*この記事のデータや内容は2018年12月時のものです。