作りたいもので探す
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2022/4/20 17:17

塗装で家具を蘇らせる(1)/水性多用途塗料を重ね塗りするエイジング塗装のやり方

使い込んだり、年月を経ることで家具は徐々に劣化していく。一番顕著に表れるのは塗装部分だ。一番目立つ部分でもあるので、再塗装は家具を蘇らせるには効果的だ。

ちょっと飽きた家具は再塗装でイメージチェンジ!

古ぼけても愛着のある家具を塗装で再生しよう。

今回の記事ではふたつの家具をモデルにして水性多用途塗料を使う方法と、ワックスを使う方法で実際にリペインティングしている。

 

CASE1 水性多用途塗料を重ね塗りするエイジング塗装

Before

 

After

 

下地調整の手順例

  1. 全体のほこりやチリをぬぐってしまう。
  2. 研磨カスを受ける下敷き、滑り止めを敷く。
  3. 1回目の研磨。60番か80番のサンドペーパーで研磨し、古い塗装を落としていく。
  4. 研磨後は研磨カスをはき落とす。
  5. 2回目の研磨。120番で1回目の研磨すじを削り落とすように研磨する。
  6. 研磨カスをはき落とす。
  7. 3回目の研磨。180番で2回目の研磨面をよりなめらかに研磨していく。
  8. 研磨カスをはき落とす。
  9. 4回目の研磨。240番で研磨面をならすように研磨する。
  10. 研磨カスをはき落とし、よく絞ったウエスで全体を水拭きする。
  11. 全体を完全に乾燥させる。

 

きれいな塗装の7割は下地調整で決まる

塗装は、劇的に色調や雰囲気を変えることができるので、塗料を塗ることに気を取られて当然だが、塗装の本当の醍醐味は、下地調整と呼ぶ塗装する面をなめらかに研磨する工程にある。

今回塗装したカラーボックスはMDFボードに樹脂のシートを張った素材なので、下地調整は塗装が載りやすいように、面全体を均一に荒らすという工程になる。荒らすといっても、ザラザラにするのではなく、少しずつサンドペーパーの番手を細かくしながら、研磨によってつくスジをだんだんと細かいものにし、最後に塗料がなめらかに載りやすい、微細なスジのついたなめらかな面を作る作業になる。

下地調整の最終段階は、手でさわった感じがサテン調のサラサラした感じにするのが目標になる。一般の木材でも工程は同様だ。

市販のサンドペーパー(紙やすり)を使ってサンディングする

 

やすり目の程度は裏に印刷された数字で判断できる。写真のサンドペーパーは120番

 

電動サンダーを利用してスピーディに均一に下地調整する

研磨には紙やすりとも呼ばれるサンドペーパーを使う。サンドペーパーは鋭い鉱物の粒を用紙に接着したもので、用紙に印刷される番号が小さいほど粗く、番号が大きいほど細かくなる。木工では60番、80番、120番、180番、240番、320番、400番などが多く使われる。

基本的なサンディングは現在では電動工具のサンダーを利用する。以前はサンディングブロックという、硬木の角材にサンドペーパーを巻いたもので面を研磨するのが基本だったが、あまりに時間がかかるのと、熟練しないと研磨むらを作ってしまうので、ごく小さな研磨以外、現在はDIYからプロまで電動サンダーが使われる。

電動サンダーにはいくつかの種類があるが、今回のような家具の場合はオービタルサンダーと呼ぶ種類のサンダーを選びたい。オービタルサンダーはサンダーの中で一番作動が穏やかで下地調整に使いやすいモデルだ。市販のサンドペーパーが使えるのでコストパフォーマンスも有利だ。

 

平面下地調整のメイン工具

スプリングを使って適切なテンションでサンドペーパーが固定でき、アルミダイキャストベースで正確な平面を保持できる。中上級者にも使いやすいオービタルサンダー

 

<オービタルサンダーのセッティング例>

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エイジング塗装の手順例

  1. 下地調整が済んだ面に下塗りの塗装をする。下地が透ける部分があってもよい。
  2. 塗装面が完全に乾くまで十分乾かす。
  3. 下塗りの塗装の上に上塗りする。多少まだらに透けるように薄めに塗ってもよい。
  4. 上塗りの塗装が下塗りの塗装面に密着し、完全に乾燥するまで待つ。
  5. 180番のサンドペーパーで必要な部分を削り、下の塗装面を出したり、木地面を出したり使い込んだ感じに加工する。
  6. (おまけ)塗装が完全になじんだ頃を見計らって、アンティークワックスなどクリアのワックスを塗ると、より自然な感じになる。

 

明るい重ね塗りで塗装に表情をつける

異なる色を塗り重ねておいて、塗装が乾燥したら部分的に塗装をはがして、下地と下塗りと上塗りの兼ね合いやはげ具合で、使い込んだ雰囲気を出すのがエイジングだ。今回はこのテクニックを使って、暗い(黒い)感じの棚を正反対の明るく軽やかな雰囲気に塗装する。塗装のはがしはエイジングの一種であるが、今回は補助的な工程として、下塗りに対して上塗りを少しむらに塗って、下塗りの色味も見える状態で塗装するエイジング塗装とした。

使用した塗料はアサヒペンのマグカラーと呼ばれる水性多用途塗料。屋内外木部だけでなく鉄、プラスチックなどにも塗れる多用途塗料で、暖かな雰囲気の色調で35色をラインナップする家具塗装に使いやすい塗料だ。

塗装に使った塗料はアサヒペン・水性多用途マグカラーの水色、カーキー、アイボリー。マグカップ型の容器ひとつで0.8平米程度塗れる

 

下地調整の済んだ上に下塗りをするが、古い家具の下塗りプライマーは大体が白色なので、それを意識してアイボリーをベタ塗りする。下塗りは入隅や細かな部分まで塗っておく。広い平面は多少かすれても大丈夫だ。下塗りが済んだら十分に乾燥させる。乾燥時間は塗料の指示時間以上はとりたい。下塗りが十分乾いたら上塗りする。塗り色は水色をチョイスした。わざとかすれさせて塗り、下塗りが透けて見える部分を残したりすると、水性多用途塗料でも変化のある表情をつけることができる。上塗りが乾いたら全体を見渡して必要な部分にサンドペーパーをかけて下塗りや下地の見える部分を作れば完成だ。重ね塗りは事前に端材などで練習しておくと雰囲気がつかみやすいだろう。

 

<簡単!サンディングブロックの作り方>

<水性多用途塗料を使ったエイジング塗装例>

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*掲載データは2015年12月時のものです。