ナイジェリアのムハンマド・ブハリ大統領は、2021年10月25日、ナイジェリア中央銀行のデジタル通貨(CBDC)「eナイラ」の導入を発表しました。中央銀行の信用裏付けがあるデジタル決裁は、単純に既存の紙や硬貨を使わないことだけでも国民生活に大きな変革をもたらすはずです。ビットコインに代表される仮想通貨は法定通貨を基準としていないので混同される読者も多いかもしれませんが、現在、世界各国が政府主導で続々に実証実験を行なっているデジタル通貨は、ナイジェリアと同様に法定通貨に裏付けられているものです。
決済の利便性が向上
すでに世界初の中央銀行デジタル通貨「サンドダラー」が2020年10月にバハマで発行されていますが、欧州中央銀行(ECB)の「デジタルユーロ」や中国の「デジタル人民元」、そして日本の「デジタル円」なども数年内の発行を目指して実証実験を進めています。
デジタル通貨は、紙幣や硬貨と異なり、デジタル上ですべてを管理する通貨であるため、決済における利便性は飛躍的に上がることが見込まれます。信用度やセキュリティ、決済端末の普及など、さまざまな問題点が指摘されていますが、当局がそれらを運用しながら解決していくのであれば、国民の理解を得て普及に向けた歩みを強く推し進めていくことが当面の課題でしょう。
各国の中央銀行が発行するデジタル通貨は、基本的に自国発行通貨と価値を連動させています。ビジネスにおける決済においては、通貨価値の変動幅が大きいものは不向きですが、それでもデジタル通貨の導入は利便性だけの視点でいえばプラスの要素でしょう。
通貨は国家の威信そのものであり、過去の長い歴史の中で通貨発行権における攻防は凄まじいものがありました。現代においては、それがビットコインであり、Meta(旧Facebook)主導による「Libra」でしょう。
グローバル展開を検討している企業で、さらにデジタル通貨関連事業を検討しているのであれば、今回のナイジェリアのケースは参考になるでしょう。2億人以上の人口を有するアフリカ最大の国におけるデジタル通貨の取り組みは、世界各国の政府や大手企業、中央銀行も注目しているに違いありません。リサーチを早めに開始して、大きなビジネスチャンスに向けた準備を始めてみてはいかがでしょうか?