最近、STEM/STEAM教育が途上国で盛り上がりを見せています。それぞれの国の問題を解決したり、現代の産業や経済のグローバル化などに対応したりするために、途上国が国家レベルで、この教育モデルの構築に取り組むケースが見られるようになってきました。
2022年3月、ナイジェリアでSTEAMを専門とする高等教育機関(ポリテクニック)をリバーズ州トンビアに設立する法案が可決しました。同校はソフトウェア工学や人口知能分野、さらに困難なビジネス状況に陥った場合においても創造的な解決手法を見つけ、世界に羽ばたく人材を育成することを目指していくための先駆的な機関です。
また、ジャマイカもSTEAM教育を国家で推進しており、4月1日の同国西インド諸島大学におけるSTEMキャリアフォーラムにおいては、初等教育段階からSTEM学習を推進しプロジェクトベースで問題解決型の能力評価を重視していく旨が大臣から発表されました。
そもそもSTEM/STEAM教育とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術)、Mathematics(数学)の頭文字を並べたもので、国によって定義は異なりますが、「問題解決的な学習」をコンセプトにしています。当初は「科学(S)・技術(T)・工学(E)・数学(M)」という4つの学問分野を統合的に学ぶためのモデルでしたが、その後「A(芸術)」を加えたモデルへと発展。日本の文部科学省は「芸術、文化、生活、経済、法律、政治、倫理等を含めた広い範囲でAを定義し、各教科等での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくための教科等横断的な学習を推進することが重要」と述べています。
芸術が加えられたように、数学や科学をベースにしながら「創造力」や「感性」を重視する教育は、評価方法はもちろん、実際にそれらの分野を包括的に指導する側にも、既存の教育システムや価値観に捉われずに、新たな基準を作り出していくことが求められます。また、学習したことをビジネスに昇華させる過程では、さらに高度なレベルが求められるため、教育機関だけでなく産業界をも巻き込んだ国家的な取り組みになっていると言えます。
時代に適した感性や一見何事にも活用が難しいと思われる技術を掘り出して、ビジネス——つまり「商品」——としてマネタイズできる先進的なプロデューサーやプロジェクトマネージャーもSTEAM教育の先に求められてきます。
STEAM教育において日本は世界各国での評価が高く、資源の多くを輸入に頼っている島国を世界的に飛躍させた高品質な工業製品を生み出す原動力の1つであったと言えるでしょう。すでに掃除や日直、学級会といった特別活動を中心とする「日本式教育」は海外に輸出されていますが、これからは「日本式STEAM教育」の確立と途上国への伝達もより大切になりそうです。
【参考】
文部科学省『STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進について:文部科学省初等中等教育局教育課程課』2022年4月25日閲覧)https://www.mext.go.jp/content/20210714-mxt_new-cs01-000016477_003.pdf
杉山雅俊・江草遼平・手塚千尋・辻 宏子(2021)『日本型STEM/STEAM教育の構築に向けた学習指導要領解説の比較分析』日本科学教育学会研究会研究報告、36 巻 2 号 p. 177-180 https://doi.org/10.14935/jsser.36.2_177
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