ロシアによるウクライナ侵攻、それにともなう各国の経済制裁などにより、さらに深刻さを増している世界的なエネルギー危機。一般的に途上国は予算などの問題などからエネルギーの確保が難しく、このような状況ではさらに不利な立場におかれるとみられがちです。しかし一方で途上国の中には、民間投資を募り積極的にエネルギー危機を乗り越えようとしている国もいくつかあります。少し耳慣れないキーワード「リープフロッグ現象」とともに、世界のエネルギー分野の「今」を俯瞰してみましょう。
「リープフロッグ現象」とは?
リープフロッグ(Leapfrog)とは跳躍、つまり大きなジャンプのこと。新しい技術やサービスが誕生した場合、通常、先進国では段階的に発展・普及していきますが、道路や電気などの社会インフラが未整備の途上国では、ひと足飛びに普及する場合があります。これがビジネス用語における「リープフロッグ現象」です。
既存のインフラや法律などが足かせとなり、社会への導入がスピーディーに進まないことが多い先進国に対し、こうしたしがらみが少ない途上国では、一気に新技術が社会に受け入れられることがあるのです。道路の整備もままならないアフリカやアジアの一部地域でも、スマートフォンや通信インフラなどが普及しているのは、わかりやすい例でしょう。
再生可能エネルギーでリードする途上国
そしてこのリープフロッグ現象は、再生可能エネルギー分野でも報告されています。世界銀行(The World Bank)がまとめたレポートによると、モロッコでは再生可能エネルギーが設備容量(発電能力)の約5分の2を占めているそう。またインドは主要経済国の中で、再生可能エネルギーの電力増加率が最も高い国となっています。このような目覚ましい進展は、政府による野心的なクリーンエネルギー目標の設定と、投資家への優遇政策の結果です。
さらにバングラデシュの例をみてみましょう。同国では2022年6月、900万人がクリーンエネルギーに移行。 電力供給を受けられるようにするため、政府が5億1500万ドル(約700億円)の融資に署名しました。この融資により、首都ダッカと北部のマイメンシンにて、地方電気協同組合(BREB)のデジタル化と近代化が支援されます。結果、電力システムの損失が2%以上削減され、電力供給量が向上するのです。
バングラデシュのプログラムでは、100以上の顧客にソーラー発電システムが提供。蓄電システムと分散型再生可能エネルギーの強化により、年間4万1400トンの二酸化炭素排出量の削減が期待されています。
先進国との共同での取り組み
一部の途上国にて大胆に進められている再生可能エネルギーへの取り組みに対して、日本を含めた先進国からの投資も行われています。米英の政府機関と米ブルームバーグが年1回発行する、途上国の再生可能エネルギー状況をまとめた「Climatescope」によると、日本からの投資は中東や北アフリカに集中しているそうです。
またJETRO(日本貿易振興機構)がまとめたレポートには、バングラデシュでは太陽光発電において、日本のノウハウと技術、さらには合弁事業を期待する声も掲載されています。
世界的なエネルギー危機と再生可能エネルギーへの転換は、途上国・先進国にかかわらず、まさに可及的速やかに対策を取る必要があります。安価な化石燃料に頼ってきた先進国の場合、コストの高いクリーンエネルギーへの投資はリスキーとみなされる場合もあることでしょう。こうした点からも、途上国における再生可能エネルギー分野は、今後が大いに期待されるところです。
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