最近、耳にすることが増えた「Web3.0」。1990年代から普及が始まったインターネットの新時代を指す用語で、ブロックチェーン技術を活用したデータの分散化(脱中央集権化)を概念としていますが、このWeb3.0を巡ってインドが野心を燃やしています。
まず、Web3.0について簡単に見ておきましょう。インターネットの発展の歴史は大きく3つに分けることができ、それぞれ大まかに以下の特徴があります。
・Web1.0(概ね1991年〜2004年):ユーザーは消費者。コンテンツは静的(テキスト中心)
・Web2.0(概ね2004年〜今日):ユーザーはコンテンツの消費者だけでなく生産者。コンテンツは動的(動画や画像が中心)。巨大IT企業がプラットフォームを構築し、ユーザーのデータを所有
・Web3.0(これから):ユーザーは消費者であり生産者。ブロックチェーンに基づく脱中央集権化
現在、インターネットはWeb3.0に移行しているところですが、これまでのように米国の巨大IT企業がユーザーのデータを独占的に所有してきた時代とは異なり、これからはユーザーがデータを所有すると言われています。
では、どうしてインドがWeb3.0の世界をリードすると期待されているのでしょうか? インドの関係者は3つの根拠を挙げています。
1: Web3.0人材が豊富
インドの主要IT関連企業が加盟する団体「NASSCOM」は、インドはWeb3.0で豊富な人材を持っているので、この分野をリードする力を十分に持っていると述べています。毎年、200万人以上がSTEM分野で学位を修めており、ブロックチェーンや暗号資産(仮想通貨)関連での雇用は2018年から138%増加したようです。分散型IDプラットフォームのEarth ID社でリサーチ&ストラテジー担当の副社長を務めるSharat Chandra(シャラット・チャンドラ)氏によれば、世界におけるWeb3.0関連の開発者の11%をインドが占めており、その数は世界で3番目に多いそう。さらに今後12〜18か月の間に、同国でのWeb3.0開発者が120%以上増えるとの見通しも伝えています。
2: インドにおけるWeb3.0の市場規模
NASSCOMによれば、インドには450社のWeb3.0スタートアップが存在し、そのうちの4社はユニコーン企業(評価額が10億ドル〔約1400億円〕を超える、設立10年以内の未上場ベンチャー企業)。2022年4月までにインドのWeb3.0エコシステムは13億ドル(約1810億円※)を調達しており、今後10年でインド経済に1兆1000億ドル(約153兆円)をもたらすと期待されているのです。
※1ドル=約139.3円で換算(2022年11月14日現在。以下同様)
3: 関連製品の開発
CoinDCXやポリゴン(Polygon)、コインスイッチ(CoinSwitch)などのスタートアップを含め、インドのWeb3.0関連企業は、分散型金融(特定の仲介者や管理者を必要とせずに金銭のやり取りを可能とする制度)やゲーム用NFT(非代替性トークン)、マーケットプレイス、メタバース、分散型コミュニティ(企業や組織ではなく、ユーザーが所有する共同体)、オンチェーン調整メカニズム(ブロックチェーン上で暗号資産の取引などを処理する仕組み)などに関する製品を国内だけでなくグローバル向けに開発しています。
一方、NASSCOMはインドが克服しなければならない問題も指摘。同国では暗号資産業界と政府、金融当局は必ずしも一枚岩ではなく、暗号資産の利益に対する高い税率や、曖昧な規制などによって、人材と資金が流出していると言われています。
このような課題があるものの、インドのWeb3.0業界は世界をリードしようと意欲満々。アメリカの大手IT企業がリードしてきたWeb 2.0の時代とは異なり、Web3.0では「インドの時代」がやって来るかもしれません。
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