国で知るSDGs ✕ ビジネス

データとトレンドで見るICT産業大国「インド」の全て

2022/5/19

NEXT BUISINESS INSIGHTSでは、世界で注目される発展途上国の現在を様々な視点で紐解いています。本記事では、そんな豊富な記事をより深く理解するために、国別に知っておきたい基本情報をまとめました。今回は、2030年には世界トップの人口数になると予想されている「インド共和国」。世界的大企業がいま率先して投資を始めている、インド市場の現在を知っていきましょう。

 

 

データで見るインドの概況

 

●人口…13.5億人

●2050年の人口予想…15.3億人

●平均年齢…28.5歳

●インターネット普及率…34%

●携帯電話普及率…87%

●スマートフォン普及率…24%

●一人当たりのGDP…2300ドル

●総GDP…2719億ドル

●その他…地域ごとに大きく異なる気候特性、連邦法・州法の採用、英語の他にヒンディー語・マラティー語・タミル語など地域ごとに様々な現地言語が残る

 

インドは、この先10年足らずでGDPは日本を超えて世界3位の経済大国になると言われています。その大きな要因として挙げられるのは、ボーナス期で伸び続けている人口数です。現在の平均年齢が30歳未満と今後の経済担う若年層人材が潤沢であることから、市場としての将来性に注目が集まっているのです。

 

いまだインターネット普及率、スマートフォン普及率ともに30%前後ではあるものの、インドのICT産業や人材の持つ能力には多くの国が注目し続け今や「IT大国」と世界的に呼ばれる位置にいます。約300万km2もの広大な面積の土地には、29州で構成されており、最高40℃~最低10℃までと寒暖差の激しい地域もあれば、雨季にはモンスーンが発生するような地域もあったりと環境特性に様々な違いがあり主要産業も地域別に異なっています。

 

世界的に将来性の高い国であるインドの特性を、さらに4つのパートに分けて見ていきたいと思います。

 

【パート1】農林・水産

(概況・特徴)

・総人口に対する農林水産業の従事者比率…約50%

・農地面積…17,972万ha(2016年時点)

・主な農産物…さとうきび、コメ、小麦、馬鈴薯、バナナ、マンゴー、グアバ、トマト、パパイア、オクラ、チャ、ショウガ、牛乳など(農水省ホームページ、2019年)

(課題)

・人口増加に反して農業人口が減少

・フードロスの増加

(新たな動き)

・スマート農業、先端技術を持つベンチャー企業の活発化

・加工食品へのニーズが増加

・都会的で向けのコーヒーショップや、ベーカリーが増加

 

インドの農産物で生産量1位を誇る品目シェアと単収。3段目のマンゴスチンの生産は、実態としては稀となる

 

前述の通り人口が増加し続けているインドではありますが、一方で農業従事者の人口が減少傾向にあることが課題として挙げられています。また、その生産・加工技術は体系化されているものではなく小規模農家が多いため、フードロスが増加していることも大きな課題。

 

インドの農林水産では、近年新たなアグリテックが多く生まれていることも特徴です。その内容は、衛星画像やセンサーを活用したデータ分析(営農情報提供サービス)から、新たな農業資材に関する情報、農機レンタルあるいはシェアリング、ファイナンスなど多岐に渡ります。

 

近年都市部では洗練されたスターバックスのようなコーヒーショップが若者を中心に人気を集めており、おしゃれなパッケージのフィルターコーヒーなども販売されています。

 

雰囲気のいいベーカリーも増えており、中には日本式のカレーパンやチーズケーキが販売されていたり、日本のようにトングとトレーで店内で買い物をするタイプの店も出てきています。また中間層や働く女性も増加しているため、キノコや乳製品などを中心に食の安全・安心や保存のきく加工食品へのニーズが増加していることも、今後日本企業でも進出可能性が高く見られるポイントでしょう。

 

インドで展開されているコーヒーショップ「Third Wave Coffee」のフィルターコーヒー

 

【パート2】保健医療

(概況・特徴)

・平均寿命…68.5歳(男性67歳/女性70歳 2016年時点)

・妊産婦の死亡率…10万人あたり145人(2017年時点)

・乳幼児の死亡率…1000人あたり37人(2018年時点)

・疾病構造や死亡要因…循環器疾患27%、感染症・周産期・栄養不全26%、その他非感染症疾患13%、呼吸器疾患11%、傷害11%、がん9%

・医療費支出額…800億ドル

(課題)

・医療従事者が数、質ともに不足している

・医療教育への十分な投資がされていない

・全人口の保険加入率が25%程度に留まっている

・老年看護や高齢者ケアの概念が浸透していない

(近年の新たな動き)

・POC機器市場の伸長

・民間企業による高齢者ケアのための医療サービス提供

・健康志向が高まり、ジムや健康食品への関心が高まっている

 

 

 

医療と衛生状況も向上しているインドではありますが、国全体の課題としては医療機関・従事者の体制が万全でないことに加え、医療教育もまだまだ十分に追いついているとは言えない状況です。医療機関も都市部には集中していますが、地方ではまだまだ環境が整っていません。しかし、そういった状況が近年、求めやすい価格で簡易検査を可能とする「POC機器」市場を伸長させている一因でもあります。2020年時点ではインド国内で約700もの医療機器メーカーがあり、インドの医療機器市場はアジアでも4番目、世界でも20位内に入る規模となりました。

 

機器とともに知識不足がゆえに課題となっていることには、糖尿病も挙げられるでしょう。インドの糖尿病患者数は世界で最も多く、2025年には1億5000万人にも達すると言われています。生活習慣病である糖尿病にとっては、日常的な検査と適切な治療が求められそれらの体制が万全でないことが問題点として挙げられているのです。しかし、その反動として社会的に健康志向意識が高まり、近年トレーニングジムや健康食品に注目が集中する現象が起きています。

 

環境が整っていないという意味では、医療教育が普及していないことと老人介護・高齢者ケアの概念が浸透していないことも大きな課題です。インドでは伝統的に家庭内での高齢者ケアが一般的で外部にケアを依頼することが浸透していません。しかし、調査では約45%が「重荷である」と回答しているのです。そういった声をもとに、病院・NGO・民間企業によって、検査・診察・看護・理学療法・緊急対応・健康モニタリングといった医療サービスの提供がスタートしています。

 

【パート3】教育・人材

(概況・特徴)

・学校制度…5・3・2・2制

・義務教育期間…8年生まで(6歳~14歳まで)

・学校年度…4月1日~3月31日

・学期制…3学期制(1学期:4月~8月/2学期:9月~12月/3学期:1月~3月)

・15-24歳までの識字率(2018年時点)…91.66%

・15歳以上全体の識字率(2018年時点)…74.37%

・総就学率(2017年時点)…就学前13.7%/初等113%/中等73.5%/高等27.4%

・初等教育の純就学率(2013年時点)…92.3%

・就学人口(2011年-2012年度)…幼稚園/保育園333万6365人/初等学校9131万5240人/上級初等学校6254万2529人/中等学校3777万6868人/上級中等学校4266万8238人

(課題)

・児童・生徒数に対して教員人材が足りていない

・教員人材訓練の環境が万全ではなく、訓練未履修の教員が存在している

(新たな動き)

・海外への留学が増加。留学先はアメリカを中心に各国へ分岐している

・EduTech産業が急伸している。新型コロナウィルス感染症流行後、オンラインでの遠隔教育を中心に様々なEduTechソリューションが発展している

 

 

人口ボーナス期であるインドは、約40%の人口が5~24歳の若年層です。今後数十年に渡り目覚ましい成長を見せることが予想されますが、若年層の数に対して教育環境が整っていないことが現在の大きな課題です。

 

初等教育の就学率は92%と高いものの、15歳以上になると識字率の男女格差が生まれ始めて一定の年代以上における教育格差が見受けられます。最大の課題は、増加する就学児に対してしっかりとした訓練を受けた教員が足りていないことでしょう。インドではいまだ地域、身分にとどまらず部族や宗教間など様々な視点での格差が根差しており、その格差を埋めて国内で均等で十分な教育環境を整えることが必要とされています。

 

反面、ICT産業で世界的注目を集めているインドでは、教育とテクノロジーを掛け合わせた「EduTech」産業が凄まじい成長を遂げています。国内では4400もの新興企業が稼働しており、その数は世界でアメリカに次いで2位にランクされました。新型コロナウィルス感染症流行してからは、その技術をもって遠隔教育が盛んに採用。EduTechソリューションのユーザーは2倍になり、利用者のオンラインで過ごす時間は50%増加したと言われています。

 

【パート4】IT・インフラ・環境

(概況・特徴)

・主要港数…13

・港湾処理能力(1TEU…20フィートコンテナ1個 2018年時点)…1638万TEU

・鉄道網(2019年時点)…6万7368km

・道路網…560万km以上 国道(2019年度)…13万2500km 州道(2017年度)…17万6166km

・輸出製品構成…石油製品14%/宝石類11%/機械製品7%/その他68%

・輸入製品構成…原油・石油製品32%/機械製品13%/宝石類11%/その他45%

(課題)

・製造分野の零細企業制が多い

・石炭中心の電気構成や車両増加による都市部の大気汚染が深刻化

・道路網への依存が高いなど、物流サービスが非効率

(近年の新たな動き)

・再生可能エネルギーが最も安価な国であるため、太陽光電池の開発などが盛ん

・2030年までに新車のEV化を国家目標に掲げるなど、電気自動車産業への積極的な取り組み

・Eコマースの需要拡大に伴い、数多くのブランドや店舗が参画

・製造業振興の国策「Make In India」の推進

・90億ドルもの資金調達を達成した、FinTech市場の伸長

 

 

インドが世界で最も注目されるITや、インフラ、環境を見てみましょう。まず2014年にモディ政権下で提唱された製造業振興策「Make In India」からも見てとれる通り、インドの目下の課題は製造業のテコ入れにあります。当初はインドが抱える様々な課題から政策はうまく実行できずにいましたが、第2次モディ政権では法人税の引き下げや労働法改革、電気自動車産業など新産業の推進を掲げて今後の展望が期待されています。電気自動車の新産業とともに、太陽光産業など再生可能エネルギーをローコストで運用できることもインドの強みです。

 

IT産業においては、新型コロナウィルス感染症流行を皮切りにEコマースの積極導入が図られるばかりでなく、FinTech市場において世界でも記録的な額である90億ドルの資金調達を達成するなど、先進技術によるIT成長率には目を見張るものがあります。

 

「NEXT BUSINESS INSIGHTS」を運営するアイ・シー・ネット株式会社では、開発途上国の発展支援における様々なアプローチに取り組んでいます。新興国でのビジネスを考えている企業の活動支援も、その取り組みの一環です。そんな企業の皆様向けに各国のデータや、ビジネスにおける機会・要因、ニーズレポートなど豊富な資料を用意。具体的なステップを踏みたい場合の問い合わせ受付も行っています。「NEXT BUSINESS INSIGHTS」の記事を見て、途上国についてのビジネスを考えている方は、まずは下記の資料集を参照ください。

●アイ・シー・ネット株式会社「海外進出に役立つ資料集」