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日本車が競争力で劣る、ラオスで中国車・韓国車が人気である裏事情

2022/12/20

ラオス人が所有する乗り物は、他の東南アジア諸国と同様に小型バイクが主流。便利な足として「トゥクトゥク」が大活躍しています。ラオスは国土の多くが山岳で占められ、“東南アジア最後の秘境”とも呼ばれますが、近年では高速道路などの交通インフラが整い始め、都市部では舗装道路や信号も十分に整備されるようになりました。しかし、ラオスには独特なクルマの文化があり、図らずもサステナビリティーを体現していたのです。

ラオスの首都・ビエンチャンの風景

 

国民の自動車所有率は低い

ラオスの自動車所有率はとても低く、まだ国民の1~2割程度。そこには、いくつかの原因があります。

 

まず、国民の収入に見合った価格で製造・販売されている自動車がありません。ラオスは自国で自動車を生産していないため、人々は外国から輸入した外車を購入するしかありません。国内で販売する際には当然ながら関税がかかってくるので、どうしても高価になっています。

 

しかも、ラオスでは2012年からトラック、バス、建設機械以外の中古車は輸入禁止になっています。輸入車は全て新車になるためかなり高価であり、一般庶民にとってはとてもハードルが高いのです。

 

すでに国内で流通している中古車の販売は認められていますが、台数も少なく本格的な中古車販売店もないため、販売方法は主にインターネットによる個人売買。通りでは「For Sale」のボードを貼ったクルマを見かけますが、個人売買ということに変わりありません。

 

ミニマムな修理

ラオスの自動車修理工場

 

これらの理由から国内流通の自動車台数は増えず、結果的に一台の車を大切に乗り続けるというスタイルになるのです。

 

ただし、一台の自動車を使用し続けるにはこまめな修理が不可欠です。ラオスの自動車修理事情は、どのようになっているのでしょうか?

 

例えば、パワーウィンドウスイッチの故障が起きたとしましょう。一般的には、日本のディーラーであれば、スイッチパネルごと新品に交換すると思います。顧客を待たせることなく確実に修理が完了できる方法ですが、どうしても修理費用が高くついてしまいます。

 

一方、ラオスではスイッチを分解しピンポイントで故障個所を特定。そして、問題となっている電気的接点を磨くなどの手直しを施すのです。こういった修理方法を行うことで修理代が格段に安く済み、新しい部品を使わずに済みます。

 

ちなみに、パワーウィンドウスイッチの分解修理代は、20万キープ(約1570円※)程度で、もし部品交換が必要になったとしても最低限の交換で完了します。デメリットとしては、故障が再発する可能性があることや、修理の待ち時間が長いことです。

※1キープ=約0.0079円で換算(2022年12月15日現在)

 

日本の顧客サービスではなかなか見られない修理方法かもしれませんが、そこは価値観の違いということもあるのでしょう。

 

故障しにくい日本車のデメリット

エンジンも分解して修理する

 

実は、中古車として購入しても修理費用が高価になるとラオスでいわれているのが日本車なのです。

 

ラオスで利用されている自動車は韓国車、中国車、日本車が中心ですが、その中でも存在感が大きいのは韓国車と中国車。日本車の利用が韓国車や中国車に及ばないのは、現地で日本車を修理する人たちのスキルが低いということや、日本製のリペアパーツが高価であることなどが理由とされています。

 

クルマの購入を自動車修理工場に相談すると、「日本車は故障しにくいが、壊れた場合はお金がかかる」「韓国車は故障しやすいが、修理代は安く済む」といわれます。日本車に関しては、メーカーなどが修理スキルの向上やパーツ価格の見直しなどビジネス面の問題点を改善することにより、存在感をさらに高めていく可能性が生まれると思います。

 

ひと昔前までは日本でもラオススタイルの修理が行われていましたが、最近は大きい単位の部品を丸ごと交換する手法が主流となっています。一方で、必要に迫られてのこととはいえ、一台の車を修理しながら長く使うというラオスのスタイルは、大量消費は減らせるのだということを再確認させてくれます。

 

古い部品を無駄に交換することなく、磨いたり手直ししたりして、自動車を大切に使い切るという精神は、サステナビリティーにも通じるところがありますが、日本人も学ぶべきであるように思います。

 

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