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【4大リスク】紛争、債務危機、温室効果ガス、SDGs…2023年の途上国が危ない!

2023/2/16

新型コロナウイルスのパンデミックから回復基調にあるなか、インフレやエネルギー危機に見舞われている世界の国々。2023年は世界全体で経済成長があまり見込めない年になると予測されています。そんな中、財政面での余力がない途上国は、さらなる逆風を受けることになりかねません。非営利団体である「センター・オブ・サステナブル・ディベロップメント」のアナリストが指摘する、2023年に注目するべき途上国の4つのリスクとはどのようなものなのでしょうか。

 

[1]SDGs:折り返し地点で目標から後退している途上国も

2030年までに達成すべき目標が示されたSDGs。2015年の国連サミットで採択されてから、2023年はちょうど折り返し地点にあたり、9月には各国の首脳が集まり進捗について確認するSDGsサミットが開催されます。しかし17の持続可能な目標のうち、ゴールに向けて進むどころか、後退しているものもあると指摘されています。例えば、極度の貧困状態にある人々は世界で約6億人。食料、教育、医療などを十分に得られない環境下にいる人々は数百万人にものぼります。そのようなリスクを抱えている国には、タンザニア、ウガンダ、マダガスカル、ナイジェリア、バングラデシュなどが挙げられます。途上国がSDGsの目標を達成するためには、「誰一人取り残さない」というSDGsの原則にもとづき、世界各国が資金面での支援をさらに強化する必要性があると言えるでしょう。

 

[2]気候:資金不足により、温室効果ガス削減に黄色信号

中国を除く途上国が排出する温室効果ガスは、世界全体の38%を占めており、2030年には約半分を占めるまでになると予測されています。多くの途上国で、先端技術を活かして地球環境問題の解決を目指す「グリーン・トランスフォーメーション」が進められていますが、資金面の不足などでその動きは鈍りが見られているのです。例えば、途上国(中国を除く)は日照時間が長く恵まれた気候条件の国が多いのに、資金調達に苦労していることから、太陽光発電設備の容量は世界の20%以下。もし十分な資金を確保できてグリーン・トランスフォーメーションを推進できれば、温室効果ガスの排出量をより抑えられるでしょう。このような気候問題に関するリスクがある主要な国として、ブラジル、メキシコ、南アフリカなどの名前が挙げられます。

 

[3]債務:利上げと世界経済の鈍化による債務危機の可能性

途上国が2023年に中長期で負う対外債務は、推定3810億ドルにものぼると見られています。実際、世界銀行は2022年12月、途上国では輸出入収入の10分の1以上を公的機関などの長期対外債務の返済に充てており、2000年以降で最高水準であると指摘。しかも利上げが進み、グローバル経済が鈍化することで、さらに多くの国が債務危機に見舞われるリスクがあると言われているのです。そのようなリスクを抱えている途上国は、アルゼンチン、アンゴラ、スリランカ、エクアドルなど。債務の透明性を高め、債務情報の提供を通じて、途上国の債務リスク管理能力を上げていくことも必要と言われています。

 

[4]紛争・暴力:必要数の半分しか追いついていない人道的支援

2022年に始まったロシアのウクライナ侵攻のように、世界では武力紛争が起きている地域がまだ少なくありません。また、不安定な政治情勢によって、暴力や貧困に苦しんでいる人々もいます。国際救済委員会(IRC)が発表した「緊急ウォッチリスト2023」で、注視するべき国として挙げられたのは、ソマリア、アフガニスタン、イエメン、シリア、南スーダンなど。いずれも紛争、暴力、災害などに見舞われている国々で、国連人道問題調整事務所(OCHA)によれば、そのうち人道的な問題のおよそ半分しか支援が追い付いていないそうです。世界がそのような人道支援に手を差し伸べ、支援を行きわたらせることが求められています。

 

これらのリスクを抱える途上国として挙げられた30か国は、必要とする資金が、合計で9030億ドルも不足していると指摘されています。その差分は他国から調達する必要があることは間違いありません。世界全体で経済成長が鈍化するとみられる2023年。先進国からの資金面での援助が減少する可能性が高く、途上国はさらなるリスクを抱えることになそうです。

 

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