日本で働く外国人労働者を国籍別に見た場合、最も多い国はどこでしょう? 答えはベトナムです。2023年、同国はさらに多くの人材を海外に送り出しており、その数は前年同期比の15倍。世界各国でベトナム人の労働者が増える見込みです。
厚生労働省によると、日本で働く外国人労働者の総数は172.7万人(2021年10月末時点)。国籍別に見ると、3位フィリピンの19.1万人、2位中国の39.7万人を上回っているのがベトナムの45.3万人。日本で働く外国人労働者の約26%を占めています。
それほど日本に多くの労働者を送り出しているベトナムですが、2023年はさらに多くの人材を海外へ派遣しています。2023年1月から3月までの第1四半期で、海外に送り出した人材は3万7923人。同国の年間計画の34.5%を占め、前年同時期と比べると15倍以上にも増えているのです。
ベトナム国内で日本向け人材の育成と派遣を行う機関のESUHAIの副所長によると、2023年初頭に日本企業から2400人の労働者の派遣の要請を受けたとのこと。需要が高い分野は食品や食品加工業、機械工学、製造、自動車関連業など。最近は医療業界からの要請も多いといいます。新型コロナウイルスのパンデミックが落ち着きを見せ、多くの業界で労働需要が急増していることから、人員不足に陥る日本でベトナムに白羽の矢が立ったのでしょう。
日本企業がベトナム人を欲しがる理由は、ベトナムが親日国であることや、儒教の国ということもあり、礼儀正しく、温厚で勤勉な人が多く、日本人と価値観が似ていることが挙げられます。多くの企業がすでにベトナム人労働者を受け入れている実績があるので、初めて外国人労働者を受け入れる企業にとっても安心感があるでしょう。
一方、ベトナム側にも「日本で働けば稼げる」というイメージがまだあるようです。人口が東南アジアの中でもそれなりに多く(2022年は約9946万人)、送り出し機関も他の国よりたくさん存在しているので、供給量が多いと見られます。
しかし、労働力不足にあえぐ国は日本だけに限りません。ベトナム労働省海外労働局によると、2023年3月の単月だけで9494人を海外に送り出し、前年同期比で8.66倍となっているそうです。送り出し先は日本のほか、台湾、韓国など。海外に労働者を派遣できるライセンスを所有する現地の約500社では、人材の研修を行って、海外からの要請に応じて適正なスキルを持った労働者を派遣しているそうです。
ベトナム労働省海外労働局は2023年に欧州諸国とも労働協定を結びたいと考えており、その協定が締結されれば、アジアのみならず世界各国にベトナムから労働者が派遣されることになります。
2023年に予定されているベトナムから海外に行く人材の数は約11万人。アフターコロナで人材不足に直面する多くの国を支えることになりそうですが、各国で優秀なベトナム人の奪い合いになることも予想されます。
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