2022年1月、中国とインドが別々に中央アジア諸国とサミットを開催しました。これは中央アジアの重要性が増していることを示していますが、どのような背景があるのでしょうか? 中央アジアの特徴を概説しましょう。
中央アジアはユーラシア大陸の中央部に位置し、概ね5か国(カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン)からなるとされています。かつてのシルクロードにおいて東西貿易の中枢に位置しているこの地域は、乾燥地帯や山岳地帯、砂漠などの厳しい自然環境と常に向き合ってきた一方、中央アジアの覇権を巡るイギリスとロシアの戦い「グレート・ゲーム」の舞台となり、諸民族による絶え間ない争いの歴史も有しています。
中央アジアは多民族で構成されており、キルギスのように日本人に似ていると言われている民族も存在します。また、中央アジアは「トルコ人の土地」を意味する「トルキスタン」とも呼ばれており、トルコ系住民が多く、キルギス語やカザフ語、ウズベク語などのトルコ系諸語が話されている一方、ロシア語も広く使われています。
中央アジア5か国は、宗主国であった旧ソビエト連邦が1991年に崩壊した時点から、それぞれに主権国家として独立の道を歩んできました。各国共にイスラム教の強い影響を受けており、カザフスタンやトルクメニスタンに代表される石油や天然ガスなどの地下資源および農業、畜産業、綿繊維などが主要産業です。外務省によると、各国のGDPは、カザフスタン1712億ドル(約20兆円※)、キルギス77.5億ドル(約9000億円)、タジキスタン80億ドル(約9200億円)、トルクメニスタン473.5億ドル(約5.5兆円)、ウズベキスタン599.3億ドル(約6.9兆円)と、カザフスタンの経済力が抜きんでています。
※1ドル=115円換算(2022年2月17日時点)
中央アジア5か国の人口とGDP
国 | カザフスタン | キルギス | タジキスタン | トルクメニスタン | ウズベキスタン |
人口(万人) | 1900 | 650 | 970 | 610 | 3390 |
GDP(億ドル) | 1712 | 77.5 | 80 | 473.5 | 599.3 |
出典:外務省
この5か国の経済は貿易、特に輸入に支えられています。総人口7500万人を超える将来的な巨大市場の獲得を目指して、中国、インド、ロシアを中心に、さまざまな国がアプローチしています。特に、インドはアフガニスタンでタリバン政権が復活し、敵対している隣国・パキスタンとの外交問題もあるため、輸送ルートを見直しており、その中で中央アジアとの関係強化が重要視されています。
アメリカの影響力が低下する中で……
2022年1月にはインドのナレンドラ・モディ首相による同国初の中央アジア5か国との首脳会議が開催されました。タリバン暫定政権のアフガニスタンの安全保障に関する問題がメインの議題とされています。また、中央アジア開発へ無償の協力金を提供するなど他国(特に中国)に後れをとるまいとの強い意気込みが感じられます。一方、中国は「一帯一路」構想の重要エリアとして中央アジアに今後ますます接近することでしょう。なお、トルクメニスタン以外の4か国が、既に上海協力機構に加盟しています。
もちろん日本も外交を展開しており、2015年には安倍晋三総理大臣(当時)が中央アジア5か国を訪問しました。さらにJICAによるODAや人材育成支援など、数多くのサポートが実施されています。アメリカのアフガニスタン撤退の影響もあり、中央アジアを巡る覇権争いは激しさを増していますが、この地域では日本も重要なプレーヤーなのです。