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「電気自動車」の“覇権”をかけたグローバル競争に挑むインドの課題と可能性

【掲載日】2021年12月17日

最近のインドでは、「充電スタンドに投資しませんか?」という広告が増えています。これは、同国が官民一体となってEV(電気自動車)により一層力を入れていることを示していますが、この広告の裏にはどのような背景があるのでしょうか?

インドの首都ニューデリーに設置されている充電スタンド。EV環境を整えるためには、もっと必要だ

 

今日、EVは世界各国で国家戦略の一つとして位置付けられています。EV分野におけるイニシアティブを早めに握ってしまえば、企業のみならず国家の隆盛を決定づけてしまうほど、EVは経済的にも政治的にも重要な分野なのです。しかし、現実では車両開発技術以外にも、インフラ整備や車両価格など数多くのハードルが存在しており、各国で掲げられている長期目標が絵に描いた餅になってしまう可能性も十分にはらんでいます。

 

自動車販売台数と生産台数の面で世界第5位の自動車市場を有するインドは、温室効果ガスの排出量削減や再生可能エネルギーへの移行を目指したe-モビリティの推進による構造転換を急ピッチで進めています。エコカー普及政策のFAMEや国内製造業に向けた生産連動型のインセンティブ制度(PLI)など、消費者と生産者の双方に向けた施策で国家としてのエコシステムを構築する戦略を実施しています。

 

問題点はあらゆる分野に及んでいますが、最大の問題の一つがインフラ。EVの普及には充電設備の充実と莫大な電力をまかなう電力設備の強化が伴います。現在インドの家庭用充電インフラ設備は国内に約1800か所ありますが、普及に向けた試算では290万か所の公共充電ステーションが必要になるとされており、現時点では全然足りていません。このような課題を乗り越えるためには、政府の膨大な追加支出が必要です。

 

また、EVの知見を有する技術者の数も大幅に不足しています。熟練労働者に至るまでにはさまざま訓練が必要であり、民間企業の努力だけでは達成困難でしょう。また、日本と比較すると道路の質が悪い地域が多く、悪天候による崩落も日常茶飯事です。中央政府、州、市など全ての政府系機関が互いに協力し、ガバナンスと財政の両立を目指す施策の展開が必須であると思われます。

 

消費者の視点から見れば、購入価格も普及に向けた大きな課題でしょう。一回の充電による走行距離や速度の問題は時間の経過と共に解消されていくはずですが、従来の自動車と比較してはるかに高価なものであると感じられる状況のなかでは、気持ちのうえでは環境保護のためにEVを購入したいが、経済的事情のためにあきらめざるを得ないと考える人々が多いのも容易に理解できます。

 

公共の充電スタンドの設置は認可不要

数多くのハードルが存在し、政策によるEV普及の達成まで長い道のりのように感じられるかもしれませんが、インドでは公共の充電スタンドの設置に関しては現時点で認可が不要で、電力省(MOP)や中央電力庁(CEA)が定める基準や仕様に準じている限り、個人や団体でも設置することができます。トラブルが発生する可能性もありますが、新たな時代に向けた社会構造の転換タイミングでは、このような方針が有効かもしれません。それが爆発的な普及に向けた礎になるかどうかは、今後の動向を見守っていくことでおのずと判明することでしょう。

 

世界各国の自動車メーカーは、新たなEVの開発に向けた資材調達のプラットフォームを構築しており、さまざまな国の最先端技術を有するメーカーの参加を促しています。すでに多数の日本企業が外国自動車メーカーの調達プラットフォームに参加を表明していますが、インフラ事情やEV展開を支える技術者育成の問題のように、視点を変えることで大きなビジネスチャンスが潜んでいるかもしれません。可能性のあるマーケットは世界中に広がっています。

 

【参考】EXPRESS mobility. Do Indian EV policies provide enough assistance for charging infrastructure to help the country’s mobility transition? 2021 November 17. https://www.financialexpress.com/express-mobility/do-indian-ev-policies-provide-enough-assistance-for-charging-infrastructure-to-help-the-countrys-mobility-transition/2371112/