人口増加などによって市場が急拡大し、さまざまなビジネスチャンスがあると考えられているアフリカ。しかし治安や文化の問題など、アフリカに進出するためにはクリアすべきハードルが多いのも現状です。その中で、2004年に設立された株式会社ビィ・フォアードは、越境ECサイトによる中古車輸出事業をアフリカで広く行い、2020年度の業績は売上高562億円、中古車輸出台数約12万5759台を達成し、業績を伸ばし続けています。アフリカでもっとも有名な日本企業ともいわれるビィ・フォアードの代表取締役社長・山川博功氏に、アフリカに注目した経緯や、現在の事業、途上国ビジネスの魅力などについてお聞きしました。
日本の中古車に対するニーズを実感し、アフリカで事業を拡大することに
井上 2004年から中古車輸出事業を行っているビィ・フォアードですが、当初はニュージーランドなどで事業を展開されていました。その後は次第に、アフリカを中心に事業を拡大していくことになりますが、なぜアフリカに注目されたのでしょうか。
山川 日本の中古車に対するアフリカの反応が、他国と全く異なっていたからです。例えばニュージーランドから「中古車を購入したい」という問い合わせが1日に5件程度だとすると、アフリカからはその100倍以上、500件どころではない問い合わせがありました。アフリカの人たちはこんなにも日本の中古車を欲しがっているんだと、そこに大きなビジネスチャンスを感じたんです。
井上 弊社では途上国ビジネスに関するお話を伺うことが多いのですが、ビジネスチャンスだと感じても、日本ではまだアフリカでビジネスを展開することに二の足を踏む企業は多いと感じます。山川社長が決断されたのはどういった理由だったのでしょうか。
山川 決断ってほどのことではなくて、問い合わせを受けるなかで「こんなに欲しい人がいる、ならば買ってもらいたい」と思っていました。
井上 山川社長はそこに怖さはありませんでしたか。アフリカだとどういった支払い方法にするかがネックになっているとも伺います。
山川 怖さはなかったですね。支払いに関しては、トラブルなどが起こらないよう、「お金を100%もらわないと商品を売らない」ということは、最初から徹底していました。もちろんお客さんたちも最初は、あまりよく知らない会社にお金を先払いして車を買うことを、不安に思ったはずです。しかし購入した人たちが「ビィ・フォアードから買えばちゃんと商品が届く」「ビィ・フォアードはいいよ」と、口コミで少しずつ広げていってくれた。その積み重ねが、現地で知名度を上げていくことにもつながりました。
井上 口コミで広めてもらうことは、最初から意図していたことなのでしょうか?
山川 いえ、それは自然にお客さんたちがやってくれたことなんです。私たちがブランディングするためにやっていたのは、車に大きいステッカーを貼ったり、Tシャツを配ったり、キャップを配ったりと、ベタな方法ばかりです。
ただ、ブランディングをする上で会社のロゴデザインにはこだわりました。このブラックとオレンジのロゴ、かっこよくないですか?(笑)最初からアフリカの人たちに受けるものをつくろうとしていたわけではないのですが、競合他社とは一線を画すようなデザインにしたいと思っていました。結果的にはこのロゴも、現地でのブランディングが成功した要因の一つになったのではと考えています。
井上 途上国ビジネスでは口コミが効果的だといわれていますが、お客さんが勝手に広めてくれるというのは理想的な形ですね。ロゴのデザインもそうですが、サービス内容なども他の人に紹介したいと思わせる要素があったということだと思います。このあたりは、アフリカ展開したい企業にとって非常に有益な情報だと思いました。
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