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東京メトロの5倍以上の路線延長へ! インドの地下鉄が「日本と韓国を追い抜く」勢いで発展

2022/12/1

網目のように地下鉄の路線が張り巡らされた東京は、世界有数の交通ネットワークを誇る都市。アジアの中では中国の北京や上海、韓国のソウルも、地下鉄の路線延長や利用客数において大きな規模を持っていますが、現在、日本や韓国を上回る勢いで地下鉄を発展させているのが、アジアのもう一つの大国・インドです。

インドの首都・ニューデリーの地下鉄の様子

 

2023年には、中国を抜いて人口が世界1位になると予測されているインド。人口爆発に伴い、急速に経済発展を遂げている同国では、公共交通機関の整備が喫緊の課題です。インドの政府系シンクタンク・NITI Aayogによると、同国で登録された自動車の台数は急増しており、1981年ではわずか540万台でしたが、2019年には2億9500万台まで増加。この影響により渋滞や大気汚染、交通事故などの問題が顕在化してきました。

 

長年、インドを支援してきた日本もこの問題を深刻に捉えており、外務省は2016年の「対インド国別援助方針」の重点分野として、主要産業都市の鉄道や国道などの輸送インフラの整備を挙げました。

 

そこで進められてきたのが、地下鉄の建設です。例えば、同国首都・ニューデリーの地下鉄「デリーメトロ」は2002年に開通し、総延長は390kmになります(12路線)。東京メトロは9路線、総延長は約195kmなので、デリーメトロの規模の大きさがわかります。

 

それまで市民の足となっていたバスは治安面で不安がありましたが、地下鉄の完成によって女性でも安全に移動できるようになり、インドの人々の生活が大きく変わっていきました。

 

ニューデリーの地下鉄の影響は他の都市にも及び、いまではインドの20の都市に地下鉄網が張り巡らされ、総延長は810kmにまで拡大。巨大な交通ネットワークが構築されていますが、さらに今後は地下鉄を有する都市を27まで増やし、総延長が980kmにまで伸びる予定です。

 

ハーディープ・シン・プリ石油天然ガス大臣は、インドのケララ州の都市コーチで11月4日から開かれた「第15回アーバンモビリティ・インディア(UMI)会議&エキスポ2022」で、この新しい建設計画について言及し、「インドの地下鉄網は近いうちに日本や韓国を抜く」と述べました。この発言の裏には、このような計画があったのです。

 

人口爆発と経済発展を支える

交通網が発展する一方、課題もあります。それは公共交通機関の料金とラストマイル交通(Last-mile connectivity)。前者については、公共交通機関の利用料金が収入の20~30%を占めている家庭が、人口全体の半数近くになるそう。人々の移動をより利便にする存在とはいえ、地下鉄などがそれほど家計を圧迫するのは好ましい状態とは言えません。

 

他方、ラストマイル交通とは、最寄りの駅から最終目的地までの近距離の交通手段のこと。例えば、最寄りの地下鉄の駅から自宅までをどのように移動するか? その際の交通手段として、インドは電気自動車やライドシェアなど、より安価で利用できるテクノロジーの導入を積極的に推進。この取り組みは「スマートモビリティ計画」として知られています。

 

東京や大阪などの都市に人口が集中する日本と同じように、インドでは2050年に人口の7割が都市部に居住する見込み。交通網の整備はこれからもっと必要になりそうです。

 

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