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国際的な基準値の30倍。深刻化するインドの大気汚染

2022/12/22

インドの大気汚染は、日本でも頻繁に報道されるほど深刻化しています。ひどい時期には、白っぽいモヤが空いっぱいに広がっていることが確認できます。現在、世界規模で温室効果ガスの削減が進められていますが、インドも2070年までに二酸化炭素排出量をゼロにする目標を掲げました。インドの大気汚染の現状と二酸化炭素を減らす取り組みについて説明します。

青天時でもモヤがかかっているインドの都市

 

インドにおける大気汚染物質PM2.5の値は普段でもとても高いのですが、最近は平均150~300とWHOが掲げる基準数値の30倍にもなってしまいました。特にインドのお正月(ディワリ)の時期がピークで、PM2.5の値は首都デリーを中心に最高値の300に達します。原因としては、お祝いの花火や爆竹、小麦を収穫した後のわら焼きが大きく関係しています。さらに、クルマの排気ガスを合わせると、非常に多くの有害物質が大気中に存在することになります。

 

雨が降ると大気中の汚染物質は落ち着きますが、ディワリの時期は乾季のため雨はめったに降りません。よって、汚染された空気はしばらく大気中に残り続けます。首都デリー周辺の学校は外出できるレベルではないとして、2022年11月初旬には学校を当面休校にしました。その他の地域の学校でも空気清浄機をつけたり、マスクを配布したりと対策をとっています。

 

さらに、心筋梗塞や肺の疾患、頭痛といった身体の不調も、大気汚染が原因で発症することが多いとされています。

 

インドの約束

2021年11月にはイギリスで、持続可能な社会を目指した「国連気候変動枠組条約第26回締約会議(COP26)」が開催されました。地球温暖化の問題が取り上げられ、各国の代表がさまざまな誓約をする中、インドのナレンドラ・モディ首相も5つの誓約をしました。

 

  • 2030年までに非化石燃料の発電容量を500GWにする
  • 2030年までにエネルギー需要の50%を再生可能エネルギーにする
  • 2030年までに予測されるGHG排出量を10億トン削減する
  • 2030年までに経済活動によってもたらされる二酸化炭素の量を45%削減する
  • 2070年までに二酸化炭素の排出をゼロにする

 

その後、インドでは本格的に二酸化炭素削減に向けての取り組みが始まりました。さらに、身近にある具体的な取り組みとして下記のことが行われています。

 

  • 交通を抑制し、車両数を減らす
  • 各都市にスモッグ計測装置を設置する
  • 爆竹の販売と購入を非合法化する

 

交通量規制については、以前はナンバープレートが偶数か奇数かによって通行できる曜日を決めるという施策もありました。ただ、一部の地域だけで実施されていたので徹底されておらず、交通量はいまだに減りません。

 

また、爆竹の販売が非合法化されているにもかかわらず、2022年のディワリもたくさんの花火や爆竹を目にしました。インド人からは「去年はコロナでできなかったからみんな待ち望んでいた。店に行けば爆竹は売っている」との声が聞かれました。

 

ゼロエミッション事業を推進

完成に向けて建設が進む高速道路

 

排出量ゼロに向け、政府規模で実施している取り組みもあります。その一つはグリーンテクノロジーの導入に向けた動きで、グリーンエネルギーの容量を2027年までに275GWにする施策です。

 

さらに、電気自動車の導入も進んでおり、インド政府は、2030年までに自動車の30%を電気自動車にすると公約しています。

 

2022年には日本政府主導のもと、UNDP(国際連合開発計画)とインドの気象庁が共同でネットゼロエミッション(※)事業を開始しました。脱二酸化炭素や持続可能な研究開発を行うためには気候変動や気象学の知識が欠かせないとして、気象庁が中心となって取り組んでいます。全予算のうち約12%の資金がインドに割り当てられました。この資金を原資とし、電気自動車の充電ステーション設置やソーラー電池を導入した診療所の拡大、中小企業へのグリーン技術の導入促進などが行われます。

※ネットゼロエミッション:正味の人為起源の二酸化炭素排出量をゼロにすること(参考:一般財団法人環境イノベーション情報機構

 

さらに、車両数を削減する取り組みとして、高速鉄道の設立が始まりました。ムンバイからアーメダバードまでの約500キロメートルを結ぶラインをつくることが決まり、現在工事が着々と進んでいます。高速鉄道ができることで、都市部の渋滞が緩和し、クルマの流れがスムーズになるとの期待が高まっています。

 

このようにインドは二酸化炭素の排出ゼロに向けて、少しずつではありますが確実にプロジェクトを進めています。ただ日常生活においては、大気状態が改善されなかったり、交通渋滞が収まらなかったりと、まだ実感することはできません。世界規模で地球温暖化がクローズアップされている現在、なかなか浸透しないこれら取り組みを徹底させるためには、政府だけでなく社会全体も一丸となり、継続的に訴えていく根気強さが必要なのかと思われます。

 

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