星空のきれいな景色(星景)を見ると撮影したくなるもの。カメラが好きな人にとって、一度は挑戦してみたい!被写体です。星や月、惑星など撮りたい気持ちはあるのだけれど、「難しい!」「真っ暗!」「星が映らない!」など撮影方法の悩みは尽きません。夜の撮影ということで一見難しく感じますが、星景写真は天体として星を捉えるよりも簡単です。これから流星群や皆既月食、火星の接近など、天体撮影では、イベントも盛りだくさん。カメラを通してきれいに撮る方法やテクニックをご紹介いたしましょう。
星景写真は新月でなくても撮影できる。夜空に表情がある時間帯も狙い目だ
天体の撮影は、新月の日がベストタイミング。なぜなら、星の輝きを鈍らせる月がないからです。月明かりは思いのほか夜空を明るく照らし、4等星などの輝きが乏しい星は夜空に埋没してしまいます。しかし、地表の表情や空の色の移り変わりが写真表現と密接に関係してくる星景写真では、真っ暗な新月である必要はありません。空の明るさは月齢によって変わるので、撮影のタイミングを決める重要な要素になります。
そのほか、空がうっすらと明るい状態の日没後30分~2時間や、黎明(明け方)のタイミングなどは、空に表情があって星景を撮るのに適した時間帯です。ただし、これらは晴れていることが前提の話となります。
基本テクニック①
夜空に月があるときは月齢を確認して月明かりを生かして撮影しよう
月がない日は地表物が黒くなってしまうので、月明かりのある夜も撮影を楽しめる。星景写真は月齢でいうと上弦の月の前「月齢1夜から6夜」の夕方から深夜、もしくは下弦の月の後「月齢23夜から29夜」の深夜から早朝にかけてが撮影のタイミングだ。月明かりも明るすぎずに程よく、地表物がきれいに写る。上弦の月と下弦の月の間の期間は、月明かりが強くて星が写りにくく、昼間のような描写になりがちなので雰囲気が出ない。
月明かりによって紅葉の森が浮かび上がり、星空と共演
上弦の月が森と沼を照らし出し、紅葉の森が画面に浮かび上がってきた。ここでは紅葉の色彩もうっすらと描きたかったので、プラス2.3の露出補正を行っている。星空の印象は少し弱くなるが、空にもトーンが生まれて雰囲気のある星景写真になった。
16ミリ相当 絞り優先オート(F4 10秒) +2.3補正 ISO1600 WB:太陽光
応用テクニック
日没や月没を生かして夜空に色彩や濃淡を盛り込む
日の出前や日没後の30分~2時間は、意外と星景写真が映える時間帯だ。この時間帯は肉眼では確認しにくいが、空のグラデーションが実にきれいなのである。満天の星とは違った、グラデーションの夜空に金星をはじめとした明るい星が輝く星景が狙える。さらに、少し雲が出ていても構図のアクセントになってくれるのでよいことずくめ。なお、この時間帯は明るいので、感度はISO200前後でもシャッター速度があまり遅くならない。
月が沈んだ直後の青みがかった星空を撮影
月齢11夜、月が沈んだ直後の時間帯に撮影した。空は漆黒とならずに青みがかり、そこに無数の星が小さく輝いている。星が小さいので、 25秒露光でも星の動きはあまり気にならない。また、ホワイトバランスは太陽光モードにして、その自然な色みを引き出している。
24ミリ相当 絞り優先オート(F3.5 25秒) +0.3補正 ISO200 WB:太陽光
日の出前に撮影、オレンジの空がアクセントに
日の出1時間ほど前の時間帯。肉眼ではここまで見えていなかったが、撮影したら東の空にオレンジのグラデーションがくっきりと写り込んだ。夜空の高い部分はまだ暗く、星が瞬いている。山脈のシルエットも画面を引き締め、色彩のある星景写真に仕上がっている。
17ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 7秒) +3補正 ISO3200 WB:太陽光
星景は新月じゃないと撮影できない!なんてことはありません。月明かりも、夜空や地表を彩りますので、さまざまな色の変化が楽しめます。また日没後や日の出前など、時間帯を変えて撮影すれば、夜空のグラデーションがきれいに撮影できるでしょう。
写真・解説/秦 達夫