ここ数年、撮影ツアーができるほど人気の工場写真ですが、その多くは夜に撮られたものです。夜の暗闇に光る明かりや煙突、タンクなど、工場を形成する様々な機械類を、フォトジェニックに撮影するためのテクニックの数々をご紹介いたします。
現実をそのまま見せるのではなく印象的に仕上げるテクニックを覚えよう
夜の工場街へ撮影に出掛けても、目の前の工場は写真のように明るくなく、むしろ暗い印象。実は、工場夜景の写真の多くが見た目よりも明るく鮮やかに仕上げてあるのです。また、煙や水蒸気、光跡などのアクセントを入れてインパクトを出しています。ここでは、印象的に仕上げるテクニックを、もう少し紹介します。
【工場×雨の日】
レンズについた水滴を生かして雨の日らしさを盛り込む
少し変わった視点で工場を捉えてみた。雨脚が強い夜は雨粒がレンズについて閉口するが、ときにはそれがよい結果をもたらしてくれる。この雨粒が街灯の明かりに照らされると、玉ボケが生まれ、画面に光のアクセントが加わるだけでなく、雨の晩の雰囲気も引き出してくれる。この際、玉ボケが工場に重ならないようにするのがポイントだ。雨の日の夜景撮影なら、工場に限らずに使える手法だ。
24ミリ相当 絞り優先オート(F11 20秒)ISO400 WB:白色蛍光灯
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レンズについた雨粒が気になったので拭いたカットがこちら。単に地面がぬれている景色が広がるだけで、イマイチ情感や雨天感に欠ける。
【工場×タイミング】
炎の赤い光が夜空を焦がした瞬間を逃さずに撮る
長い夜の一瞬、製鉄所からの赤い光が夜空を焦がした。このタイミングを逃せば、次はいつこの光景が見られるかわからない。このあと数カット撮ったのち、また元の静かな夜に戻った。工場が生きているのを実感する瞬間だった。
158ミリ相当 絞り優先オート(F11 8秒) -1.3補正 ISO200 WB:白色蛍光灯
【工場×構図】
煙の流れや大きさを予測して構図を決める
煙や水蒸気は目に見えるので、画面に取り込むのは意外と簡単。工場の機械類で構図を整えつつ、煙や水蒸気が流れるほうに少し余白を設ける。右の写真は、上空に大きく水蒸気が上がっていたので、それを画面に取り入れるために、機械類と空の割合を半々にフレーミングした。
164ミリ相当 絞り優先オート(F11 15秒) -0.3補正 ISO400 WB:クリックホワイトバランス
工場を引き立てる輝くレールの脇役を入れて構図を組み立てる
夜も休まずに働き続ける製紙工場。レールが光っているのは、貨物列車が行き交い、錆びる暇がないためである。主役の工場を引き立てるために、反射して輝くレールを手前に入れて奥行きを強調した。縦位置を選んだことも、奥行きの強調に一役買っている。
112ミリ相当 絞り優先オート(F11 25秒) +1.3補正 ISO400 WB:白色蛍光灯
工場夜景は、現実離れしたインパクトの強い写真に仕上げたいものです。ですので、煙、水蒸気や光線などをアクセントとして、印象深く撮影する構図取りや撮影テクニックを利用しましょう。