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【滝&渓流の撮り方④】納得の1ショットを手に入れる秘訣は、構図とカメラ設定だ

2018年猛暑が続く中、この夏休みに、滝や渓流などの避暑地で、心も体も癒される方も多いはず。そんな時に、カメラを持って涼しげな撮影を試みる方もおられると思います。緑が覆い茂るこの季節、水流との彩りも美しくなります。ここでは、滝と渓流の基本的な撮影操作のテクニックや、シーン別の構図決定のノウハウなどご紹介いたします。

 

 

実践編

「構図+基本操作」で最高の1枚に仕上げる

水風景を的確な設定で撮影したのに、どこか物足りない。それはきっと、被写体を魅力的に見せる構図を選択できていないからだ。この実践編ではシーンごとの適切な構図決定に重点を置きつつ、基本操作も含めて解説していく。

 

シーン① 橋の上から渓流を俯瞰で撮影


画面左上に木を、右下に岩を配置して画面を構成。安定感はあるものの、渓流の流れが直線的でややおとなしい印象だ。

 

単調だった渓流の流れのカーブを取り入れて動きを引き出す

橋のたもとにある木々の葉を取り入れるために少しだけ移動する。画面左側に緑を大きく取り入れ、川の流れを使って視線が左下から右上に向かうように構図を決める。遠近感が誇張され、さらにカーブを描く渓流によって動きが感じられる画面になった。

28ミリ相当 絞り優先オート(F14 1/4秒) -1補正 ISO100 WB:太陽光

 
【基本操作】
1 シャッター速度:1/4秒
2 PLフィルター:90%
3 露出補正 -1
4 絞り F14
5 ホワイトバランス 晴天

ホワイトバランス「晴天」で、清涼感のある流れを引き出す

広角28ミリ相当で撮影することで、遠近感をア ップ。また雨にぬれた葉や渓流の色を引き出すためにPLフィルターを強く効かせた。雨上がりの撮影だが、清らかな水の流れを表現したかったのでホワイトバランスは「晴天」を選んだ。

 

シーン② 観光スポットである仙娥滝を日没後に撮影


山梨県の昇仙峡に流れる仙娥滝。全景を写すとただの観光写真だ。滝のどの部分に感動したのかが伝わらず、魅力に欠ける。

 

滝の全景をすべて写さずに、印象の強い部分だけを切り取る

滝の撮影では落ち口や滝壺まで入れて写すと説明的になりがちだ。そんなときは滝のいちばん魅力的な部分だけに着目し、望遠レンズで大胆に切り取る。ここでは滝の左側にある滑らかな岩肌を多く取り入れて、縦位置で構成し、画面右上に木の枝を少し取り入れてスケール感を出した。

180ミリ相当 絞り優先オート(F11 0.4秒) -0.7補正 ISO800 WB:太陽光

 

【基本操作】
1 シャッター速度:0.4秒
2 PLフィルター:70%
3 露出補正 0.7
4 絞り F11
5 ホワイトバランス 太陽光

日没後の青かぶりを利用して独特な岩の質感を表現する

WB「太陽光」、仕上がり設定を「風景」にして、日没後の青カブリを強調する。PL は強めに効かせて岩肌の質感を出しつつ、マイナス0.7補正して暗部を引き締めて、霧状に飛散する水しぶきも浮かび上がらせた。

 

シーン③ 森の中にある落差の低い滝を撮影


森の中に流れる雰囲気を出そうと、滝と上の木々を切り取る。滝の落差はそれほどなく、流れも弱くて特徴がないため、平凡な印象になってしまった。

 

滝の個性を引き出すため、滝つぼを大胆にフレーミング

滝撮影では、滝そのものだけに注目するのではなく、周囲の環境にもしっかりと目を向けよう。この滝は独特の色合いをした広い滝壺が魅力だったので、広角レンズを使って滝壺を大きく取り入れて作画した。水中の大きめの石が滝と重ならないように構成し、落ち着いてみられる画面にしている。

24ミリ相当 絞り優先オート(F11 0.5秒) ISO100  WB:太陽光

 
【基本操作】
1 シャッター速度:1/2秒
2 PLフィルター:100%
3 露出補正 なし
4 絞り F11
5 ホワイトバランス 太陽光

PLフィルターで滝壺の色を強め、シャッター速度1/2秒で水中も描写

PL 効果を最大に効かせて滝壺の色を強調する。スローシャッターで滝の流れを美しく表現したいが、シャッター速度が遅すぎると水中の石のディテールを描けなくなってしまうため、1/2秒のシ ャッター速度を選択した。

 

シーン④ 逆光によって輝く渓流を撮影


川面を照らす夕刻前の光が印象的で、広めにフレーミングした。画面のバランスはいいが、暗い部分が多くて光の魅力が伝わりにくい。

 

水が輝き、かつ流れに凹凸がある場所を望遠183ミリ相当で狙う

川面を観察すると、光を浴びたしぶきが美しく感じられた。望遠レンズを使って画面左側を暗く、右側を明るく構成してインパクトを出し、しぶきを中心付近で捉えて視線を集中させた。シャッターを切るタイミングは肉眼で確認しつつ、理想的なカットが得られるまで何枚も写している。

183ミリ相当 マニュアル露出(F22 1/20秒) ISO100  WB:太陽光

 
【基本操作】
1 シャッター速度:1/20秒
2 PLフィルター:90%
3 露出補正 なし
4 絞り F22
5 ホワイトバランス 太陽光

1/20秒のシャッター速度を選択し、しぶきの美しさを描写する

しぶきを美しく描写するためにF22まで絞り込み、やや速めのシャッター速度1/20秒に設定する。PLフィルターは強く効かせて夕方の光の色を出し、かつ余分な反射を取り除いてしぶきを浮かび上がらせた。

 

フレーミングと合わせて、基本的な操作も、今回ご紹介いたしました。同じ瞬間や景色、環境での撮影は、なかなかないかと思いますので、今回ご紹介した基本操作を元に、滝や渓流の最高の瞬間を撮影できるよう、カメラの設定や、フレーミングなどのテクニックを使っていきましょう。

 

写真・解説/伊藤亮介