“水のある景色”というと、海や川、湖などの風景が真っ先に思い浮かぶかもしれませんが、そればかりではありません。ここでは水滴という小さな世界に目を向けてみます。この小さな世界に広がる幻想的な景色を、今回はマクロレンズを使って、簡単に撮る方法をご紹介いたします。
Lesson 1
マクロレンズを使って大きく写しましょう
水滴は小さいので、存在感を出すためにクローズアップしましょう。ただし、レンズによって最大撮影倍率が異なるため、最も撮影倍率の高いマクロレンズを使うことが有効です。ない場合は、標準ズームにクローズアップレンズを装着して倍率を上げる方法もあります。
マクロレンズの最大撮影倍率「1倍」で撮影
標準ズームレンズの最大撮影倍率「0.38倍」で撮影
撮影倍率の高いマクロレンズのほうが大きく撮れる
マクロレンズと標準ズームの最大撮影倍率で撮影した。どちらも最短撮影距離まで迫りつつ、標準ズームは最望遠側にズームしている。両者の差は歴然で、マクロレンズで撮影したほうが、水滴が大きく写り目立っている。また、被写体に近づくことにより、背景がすっきりと大きくぼけて、水滴がより際立った。
Lesson 2
狙いに応じた適切なピント合わせを行いましょう
水滴は透明なのでピント合わせが難しい被写体です。合わせる場所は、「表面」か「映り込んだ被写体」のどちらか。水滴の表面には空を映して白く反射した部分があるので、そこがシャープに決まると◎。水滴に映り込んだ背後にあるものを捉えるときは、中の像にピントをきちんと合わせましょう。
水滴の表面にピントを合わせる
映り込んだ被写体にピントを合わせる
ピント位置が数㎜違うだけで狙いや描写は変わる
水滴の表面と、水滴に映り込んだ被写体とでは、ピント位置の距離がわずかに異なる。そのため、表面にピントを合わせると映り込んだ像はぼけてしまい、映り込みに合わせると水滴の表面は不鮮明に写る。撮影倍率が高いと被写界深度が非常に浅くなるので、ピント合わせはいつも以上に慎重に行うこと。
ワンポイントアドバイス!
確実なピント合わせは「MF+ライブビュー拡大表示」が有効
水滴のピント合わせはとてもシビアな作業だ。AF ではカメラが迷いがちになるので、MFで合わせたい。さらにおすすめの手段が、ライブビューで水滴部分を拡大するピント合わせだ。拡大することでピントがぴったり合ったのがよくわかり、ピンボケを防ぐことができる。
MFで大まかに合わせた後に拡大表示して、水滴を画面いっぱいに映し出す。この画像を見ながら詳細に合わせていく。
小さな世界だけど、無限に広がる未知なる世界。マクロレンズを使った撮影では、肉眼では見えない世界が、一枚の写真に収めることができます。水滴も素敵な被写体ですが、花や動物、虫など、魅力的な被写体はたくさんありますので、マクロレンズを使っていろいろ撮影してみましょう!
写真・撮影 / 吉住志穂
Profile
吉住志穂(よしずみ・しほ)
1979年、東京都生まれ。日本写真芸術専門学校を卒業後、写真家・竹内敏信氏に師事し、2005年に独立。自然が持つ「こころ」をテーマに、花や風景の作品を撮り続けている。カメラ雑誌などでの執筆多数。オリンパス・デジタルカレッジをはじめ、さまざまな写真教室の講師としても活躍。(社)日本写真家協会会員。