高いお金を出して購入したカメラやレンズのファームアップ、ちゃんとやってますか? メニュー項目の変更といった簡単なものから、中には動作自体に関わるものやまったく新しい機能が追加できる場合も。主な現行機種のファームウェア事情を整理してみました。
性能向上や機能追加などファームアップを見逃すな!!
ファームウェアとはカメラやレンズに組み込まれているソフトウェアで、画像処理やAFの動作、メニューの表示などを司っている。
以前は主に不具合の解消を目的としたアップデートが行なわれる程度だったが、最近は性能向上や新機能の追加を目的としたものも増えつつある。ユーザーとしては、愛機の性能が上がったり、機能が増えて使い勝手がよくなったりするのだから見逃せない。
ファームウェアについての情報は各メーカーのウェブサイトなどに掲載されている。小さなバグ修正がこっそり行なわれることもあるので、こまめにチェックしてアップデートしよう。
各社の主要機種のファームアップの主な内容
【ニコン】ゆがみ補正データは定期的に更新を
http://downloadcenter.nikonimglib.com/ja/
★方法:ファームアッププログラムを入れたメモリーカードをカメラに入れて行なう
いろんな意味で熟成度の高い一眼レフがメインだからなのかもしれないが、ファームアップの内容は動作不良の解消、つまりバグフィックスが多い。ただ、新しい交換レンズが発売されると、ゆがみ(歪曲収差)補正用のデータが新しくなる。なお、スピードライトのファームアップは装着したカメラのメモリーカードから行なう方式だ。
【キヤノン】成熟度が高いため、軽微なものがほとんど
http://cweb.canon.jp/drv-upd/eosd/firm.html
★方法:ファームアッププログラムを入れたメモリーカードをカメラに入れて行なう
★EOS 5D Mark IVのVer1.1.0へのアップグレードはサービスセンターでの対応
ニコンと同じく、動作不良の解消のためのファームアップが多い印象(長命だったEOS 7Dには大きな機能追加も行なわれた)。EOS 5D Mark IVのみ、有償で動画機能を強化するアップグレードが用意されている。なお、ファームウェアではないが、機種によってデジタルレンズオプティマイザ用のレンズデータを登録する操作が必要となる。
【ソニー】旧機種でAF性能や操作性の向上が期待できる
http://support.d-imaging.sony.co.jp/www/cscs/update/?cat=ilc
★方法:パソコンにアップデート本体ソフトウェアを入れ、パソコンとカメラを接続してアップデート
旧機種もラインナップに残す方針だからだろう、発売から時間が経過した機種に対しても割と積極的に機能の強化や追加のためのファームアップが行なわれる。AF関連の性能および操作性の向上や動作の安定性向上などが図られることが多い。なお、アップデート時にはパソコンとカメラをUSB接続する必要がある。
【ペンタックス/リコー】K-1は新たな機能追加が著しい
http://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/support/download/firmware/
★方法:ファームアッププログラムを入れたメモリーカードをカメラに入れて行なう
★K-1 MarkⅡ相当へのアップグレードは、修理サービスセンターやリコーイメージングスクウエアなどで対応
動作不良の解消や安定性の向上といったバグフィックス的ファームアップに加えて、新レンズへの対応や使い勝手をよくする機能の追加も行なわれている。特に最上位のK-1には、LV電子シャッターや赤色画面表示、バルブタイマーなどが追加されているほか、K-1 Mark Ⅱ相当へのハードウェアアップグレード(有償)も用意されている。
【パナソニック】Dual I.S.対応にはファームアップが必要
http://av.jpn.support.panasonic.com/support/dsc/download/index.html
★方法:ファームアッププログラムを入れたメモリーカードをカメラに入れて行なう
★GH-5のV-Log L拡張機能の追加を行なう場合にはアップグレードソフトウェアキー「DMW-SFU1」 (別売)が必要。
やはり機能の強化や追加は積極的に行なっている印象で、新機種に新機能が搭載されると、ほかの機種も同等の内容になるようにアップデートしている。交換レンズもボディ内手ブレ補正と連携するDual I.S.への対応やAF 動作の安定性向上などが行なわれている。なお、GH5のみ、有償で動画関連機能のアップグレードが用意されている。
【オリンパス】ユーザーの要望に応えるアップデートも
http://cs.olympus-imaging.jp/jp/support/cs/dslr/fw/index.html
★方法:専用アプリ(オリンパスデジタルカメラアップデーター)でアップデート
上位モデルについては長寿命化を図る目的で、ファームアップによる機能や性能の向上を行なっている。E-M1 MarkⅡのスモールAFターゲットの追加など、ユーザーからの要望に応えるアップデートや、新機種に搭載されたブリーチバイパスの追加などもある。交換レンズもAFまわりや手ブレ補正動作が改善されている。
パソコンとUSB接続した状態で専用ソフトウェアを使用して、アップデートの有無の確認、ダウンロード、アップデートを一括して行なう方式。レンズや外部フラッシュなどはカメラに装着した状態でアップデートできる。機種によってはカメラの設定状態をパソコン側に保存、アップデート後にカメラの再設定も自動的にやってくれる。
【富士フイルム】ファームアップなくして最高性能が得られない
http://fujifilm.jp/support/digitalcamera/download/fw_table.html
★方法:ファームアッププログラムを入れたメモリーカードをカメラに入れて行なう
とても熱心にファームアップを行なっており、よくも悪くも発売してから完成度を高めていくのが通例になっている感がある。特に、AFまわりの機能や性能の向上、フォーカスブラケットなどの機能の追加が重点的に行なわれているが、最近は動画機能の強化も見逃せない。交換レンズも点像復元処理への対応などもされている。
ファームアップで機能向上が特に見込まれるミラーレス機
おおざっぱな傾向としては、一眼レフよりもミラーレスカメラのほうが機能、性能を向上させるファームアップが多いようだ。これは、一眼レフがすでに熟成が進んだ方式であるために、ソフトウェア的手法での機能や性能の向上を図れる余地があまりないからではないかと思う。逆に言えば、大幅な進化のためにはハードウェアの更新が必要で、ペンタックスK-1からK-1 MarkⅡ相当へのアップグレードのように大掛かりになりやすい。ただし、画像処理やメニュー周りはファームアップによる改善が期待できるし、動作の安定性も上がることがあるので見逃せない。
一方、ミラーレスカメラはまだまだ進化中とあって、ファームアップによる機能、性能の向上の余地も大きく、フジフイルムX-Pro2の5.00 や、オリンパスE-M5 Mark Ⅱ、ソニーα7Ⅱ、α7RⅡの4.00などのように、大きなバージョン番号になっているものも少なくない。中には、ファームアップを繰り返したことで、発売当初とはまったく別物と言われるぐらいに進化したカメラもあるほどだ。
また、交換レンズも、ボディ内手ブレ補正機構との連携のためだったり、AF動作の改善などがなされることは多いし、カメラの新機能に対応するためにレンズのファームアップが必要となる場合もある。
つまり、今のカメラやレンズはファームウェアをできるだけ最新の状態にしておくのがベターだと言える。
実際にやってみました
ルミックスGX8をファームアップしてフォーカスセレクター機能を使ってみる
Ver.2.0でフォーカスセレクターを搭載
パナソニックDMC-GX8の場合、ファームウェアをアップデート(最新ver.は2.2)することで、フォーカスセレクト機能が利用できるようになる。発売時には搭載されていなかった機能があとから追加されるのもファームアップのうれしい点だ。
フォーカスセレクトがメニューに追加されて使えるように !
フォーカスセレクト機能はピント位置を変化させながら4K連写を行なうもので、再生状態で画面に触れるとその部分にピントが合った画像が表示される。どこにピントを合わせるか迷ったときに便利。深度合成用の素材としても活用できる。
解説/北村智史