コスモスの開花時期は、6月から11月と長く楽しめます。大まかに分類すると、夏咲き、秋咲き、早咲きと、開花時期の違う3種類のコスモスがあります。ですが、一般的なコスモスの開花時期は、9月から11月の秋。コスモスはきれいな形をしているのでアップで写したり、ピンク色のコスモス畑を広く捉えたりと、さまざまな狙い方が可能です。かわいらしく乙女チックなコスモスの撮影方法や雰囲気のある一枚を撮るテクニックなどをご紹介いたします。
花の向きを意識してフレーミングしよう。構図の選択でコスモス写真の雰囲気を作り出す
季節感を取り入れながら、コスモスをクローズアップしてみましょう。秋のイメージは大きく分けて二つあり、ひとつは爽やかな秋晴れのイメージ。もうひとつは、夕暮れの物悲しいイメージです。前者は青く澄んだ空にコスモスが映えます。そして、後者は夕暮れの弱い光に染められて、どことなく寂しげな姿です。そこで、それぞれどんな構図を選べばそのイメージになるのかを考えてみましょう。いつも花を画面の真ん中に入れてしまう人は、意識的に四隅方向にずらしてみましょう。写真の雰囲気は主に背景や露出、色の選択で決まりますが、フレーミングによってもイメージが変わります。
基本テクニック
空間の取り方で写真の印象は変わるので、イメージに合わせて作画する
画面に広がりを出すには、コスモスを小さく写して、少し空間を作るといい。この際、画面のどこに花を置き、どこに空間を作るかで写真のイメージが変わってくる。主に、花が開いている方向を開ける、真ん中に置く、開いている方向を切り詰める3パターンに分けられるが、花の撮り方では前者がセオリーとなる。
花の向く方向をあける
花を真ん中に置く
花の向く方向を切り詰める
どれが正解かは、光や花のイメージによって変わる
花の向く(開いている)方向を空けると、開放的で前向きなイメージになる。真ん中に置くと流れが生まれにくく、平凡になりがちだ。向いている方向を切り詰めると窮屈感や悲しい雰囲気が出る。どれが正解かは、光や花のイメージによって異なる。この写真は夕暮れで、1日が終わる物悲しいイメージに仕上げたかったので、花の向く方向を切り詰めた右の写真を選んだ。
コスモスが向いている方向を切り詰めて寂しいイメージに作り上げる
花が向く方向をただ切り詰めれば寂しげに見えるというものではない。明るさや色合いなど、構図以外の複数の要素を組み合わせて、ひとつのイメージを完成させていく。ここでは、花の向く方向を切り詰めつつ、やわらかな光と明るめの露出、青い色合い、ソフトなボケで“寂しげ”を作り出した。構図が同じでもほかの要素が真逆なら、構図を失敗した写真になりかねない。
150ミリ相当絞り優先オート(F2.81/60秒)+1.7補正ISO100WB:白熱電球
応用テクニック①
秋晴れの青空を大胆にフレーミングして開放感を引き出す
秋のイメージで取り入れたいのは、秋晴れの爽やかさだ。好天続きで爽やかな秋のすがすがしさを、コスモスの写真で表現してみよう。基本テクニックでは寂しげな表現に仕上げたが、ここではその逆で開放的なイメージを作る。花の向く方向を空けつつ、爽やかな青空を大胆にフレーミングすると開放感が引き出せる。鮮やかな色設定も有効な手段である。
△
同じ光で、コスモスの向く方向を切り詰めてみると、ちょっと窮屈に感じられる。空の広さも狭いため、下の写真に比べると開放感は弱い。
縦位置で空を広くとり、元気なイメージに
寂しげな撮り方の真逆をやったら開放的な印象になった。花の向きに空間を設け、強い光と鮮やかな色彩でキバナコスモスを捉える。また、主役の周囲はボケで埋めずに、空へ伸びる様子を見せる。縦位置で空を広くとったこともあり、より爽やかな元気なイメージになった。
24ミリ相当絞り優先オート(F2.81/5000秒)+0.3補正ISO200WB:晴天
応用テクニック②
花の対角に脇役を入れると画面のバランスがとりやすい
クローズアップでは、画面の要素は主役と背景、または主役と脇役と背景になる。前者の場合は、先にも述べた通り、背景の光や撮りたい花のイメージに合わせてバランスをとります。そして後者の場合は、画面の中心よりやや四隅にずらした位置に主役を置き、その対角に脇役を配置すると画面のバランスがとりやすい。
夕日のボケをコスモスの対角にフレーミングする
コスモスが夕日の光を浴びているようなイメージにしたかった。花が右上を向いていたので左下に配置し、夕日が対角側の右上にくるようポジションを選んで撮影した。縦横ともにバランスがとれ、花の向いた方向を開けたことで開放感や流れも生まれた。
300ミリ相当絞り優先オート(F5.61/100秒)+1.3補正IS200WB:9000Kフィルター機能:ファンタジックフォーカス
コスモスを一輪狙いする時は、クローズアップでの撮影がおすすめです。空や夕日などの背景を効果的に利用して、バランスのいいフレーミングを気にかけながら、コスモスを撮影しましょう。
写真・解説/吉住志穂