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【雪景色撮影の超攻略術⑧スナップ編】印象を大きく左右するのはホワイトバランス!最適な設定とは!?

2018年平成最後の冬、風景としての雪、スナップとしての雪、「雪」でも様々な撮影描写ができます。今回は、被写体としての「雪」を撮るテクニックの数々をご紹介いたします。

雪景色撮影は、当たり前ですが画面の中に雪の白が多いということに注意が必要になります。ホワイトバランス、露出、構図、光という項目ごとに、白い被写体を印象深く表現するための基本テクニックはもちろんのこと、寒さ対策、スノーレジャー、寒冷地での撮影機材のトラブル対策など、冬の撮影で必要な知識を盛りだくさんにご紹介していきます。

 

 

街中ならではの色みを生かすのがポイント。夜間の人工灯も格好の被写体として活用しよう

降雪地帯でなければ、雪が降るのは年に数回の大きなイベント︒普段とは違う姿を見せる街に飛び出し、スナップ撮影を楽しみたいと思う人も多いでしょう。そうした街中を中心とした撮影で気をつけたいポイントをご紹介します。
 

 

① 光と露出を意識することで映画の一場面的な1枚に

普段なら気にも留めない光景だが、街灯の光と雪の白さが組み合わさることで冬の情景が生まれた。マイナス補正で露出を切り詰め、街灯に照らされた部分だけを浮かび上がらせた。

50ミリ相当 絞り優先オート(F2.5 1/16秒) -1補正 ISO1000 WB:電球

 

 

街の明かりを生かして夜の雪景色を狙おう

普段の夜景では邪魔者扱いされがちな街灯も、雪が積もると立場が一変。積もった雪がいわゆるレフ板の役割も果たし、夜は街灯の明かりを反射、さらに拡散させてくれるのだ。おかげで積雪時は普段より夜の街角が柔らかく写る。積雪時は近所で立派な夜景を撮るチャンスだ。
 

 

② 夜空を背景、街灯を照明に 降雪をよりくっきりと

暗い夜空をバックに、街灯を逆光のライティングとして活用しながら、降りしきる雪を写してみた。傘を差して歩いている人のシルエットと明るい街灯との対比が印象深い1枚だ。

50ミリ相当 絞り優先オート(F3.2 1/80秒) -0.3補正 ISO1600 WB:白熱電球

 

 

③ 街のあらゆるものがフォトジェニックに

カメラマンにとって街灯以上に目障りな自動販売機も、雪が降ると格好の“照明器具”に変身。静かな闇の中で光るスポットライトとして、通行人の姿を照らす様子をカメラに収めた。

28ミリ相当 絞り優先オート(F2.5 1/23秒) 補正なし ISO400 WB:電球

 

 

ホワイトバランスが印象を大きく左右する

降雪時に気をつけたいのは、露出やオートホワイトバランスが不安定になりがちな点。雪は色再現の難しい被写体で、特に暗い降雪時はどうしても濁ったグレーになりがちです。上段では被写体の色みについて触れましたが、それを生かすためにもホワイトバランスは重要といえます。

雪を被写体にするときはホワイトバランス設定をマニュアルにして、結果を確認しながら繰り返し撮影してみましょう。スナップを撮り歩くような場面では、最初にテスト撮影をするとよいでしょう。カメラによって多少差もありますが、日中のわりと明るい場面では太陽光を、降雪が激しい場面では蛍光灯を選ぶのが1つの目安。夜間撮影では、照明の種類に合わせて、電球を選びます。慣れたら色温度を数値で指定していくと、さらに自分のイメージに近づけることができるはずです。

また夜の降雪や積雪では、ライティングも重要なポイント。もっともフラッシュや照明を使うのではなく、利用するのは街灯や自動販売機の明かり。強い蛍光灯が雪で適度に拡散することで、スポットライトのような視覚効果が生まれたり、冬の夜が優しく表現されたりすることもあります。
 

 

④ 静けさを連想させる青みをプラスしてみた

オート

オートホワイトバランスでは画面全体が濁って、雪もすっかりグレーになってしまった。

蛍光灯

深々と雪が降り積もる世界を表現するため、ホワイトバランスを蛍光灯にセット。オートでは濁っていた雪が、青みを帯びて冬の静けさをイメージさせてくれるようになった。

28ミリ相当 絞り優先オート(F5.6 1/100秒) 補正なし ISO200 WB:蛍光灯

 

 

色再現にこだわって印象に残る1枚を目指そう

真っ白な雪は、カメラ任せで写すとホワイトバランスが狂いがち。正しく補正するのはもちろんだが、さらに一歩進んで自分の印象を表現してみよう。思い切った設定が印象的な1枚を生むこともある。モノトーン気味の場面ならいっそモノクロで撮影するのもアリだ。
 

 

⑤ 雪の白さを強調するならモノクロで黒を締めてみよう

雪景色はモノトーンになりがち。それならいっそモノクロで表現してみよう。この場面ではカフェの外壁やテラス席が黒を基調にしていたので、降雪や積雪を浮かび上がらせることができた。

45ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/50秒) 補正なし ISO200 WB:オート

 

 

⑥ ありふれた歩道が雪化粧でドラマチックに

雪が積もり始めた歩道を人が歩いていた。このような場面では雪が解けるどころか、さらに積もって足跡を消してしまう。急いで狙おう。

雪の表面にうっすらと残る足跡と自転車の轍。路面だけを切り取ってもよかったが、足跡や轍の行方が気になったので見る人のイメージが広がるように、道の遠くまでフレームに収めてみた。

45ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/125秒) 補正なし ISO200 WB:太陽光

 

 

足跡や轍を生かして絵づくりしてみよう

雪が積もった地面にできる足跡や轍は、偶然が生み出す一期一会のアートといえる。普段は見ることがないものだけに、雪が積もったら歩道や路地裏、公園などに出掛けてみよう。雪が解けてしま ったり、足跡が増えてしまったりしたらおしまいなので、撮影は時間との勝負だ。
 

 

⑦真っさらな白い路面が夜の静けさを連想させる

足跡や轍を狙うのとは逆に、雪が積もった後の誰も通っていない道というのも狙いどころ。特に夜から雪が降り始めたら真っさらな道が撮れるチャンスなので、路地裏や公園などを回ってみよう。

50ミリ相当 絞り優先オート(F2.5 1/13秒) 補正なし ISO800 WB:電球

 

 

写真・解説/鹿野貴司