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風景写真家のリアルRAW現像レタッチ術【桜+青空編】深澤武カメラマンの場合

写真家は作品を仕上げるときに、どのくらいRAW現像やレタッチをしているのだろうか。実際に仕上げ方次第で写真は変わる。風景写真で調整する機会の多い青空について、リアルなRAW現像&レタッチ術を深澤武さんに聞いた。

 

仕上げのひと手間で写真は劇的に変わる!深澤流・仕上げの一手

風景作品は青空の深さで決まる!カラーコントロールポイントを使って部分的に明るさを調整する

Before(元画像)

After

 

後処理だけに頼るのはNG、青さを引き出す心得は「撮影7:後処理3」が大切

青空が映えるかどうかで風景作品の仕上がりは大きく左右されるので、撮影段階から深みのある青を引き出せるよう心掛けている。逆光では深い青色は出しづらいため、順光や斜光を選ぶのが基本だが、大事なのは太陽の光が風景をしっかりと照らしていることだ。青空の青さが同じでも、光が弱いと露光量が多くなり、霞んだような薄い色になってしまう。もちろんPLフィルターを使ってできるだけ霞みを取り除くが、元々の空色が大事であることは間違いない。よい条件で撮影することが最良の結果につながるのだ。

通常は適度にコントラストを付けると青空がクリアになるので、RAW現像は明るさとコントラストの調整からスタートすることが多い。その際、新緑や紅葉などメインの被写体を見ながら調整していく。ただ春霞の桜シーズンなどは、青空だけが薄い色になりがちである。そんなときは青空にコントロールポイントを配置して、部分的に明度を下げていくと深みのある青空を引き出すことができる。

春霞ほどではないが、半逆光気味のときも注意が必要。順光や斜光に比べると青空と山や木々との明暗差が大きく、青空の色が薄くなりやすい。階調補正機能を強めにすると明暗差が抑えられ、引き締まった青色を引き出すことができる。まれに山の稜線との境などがムラになることもあるが、青空が深みのある色になるように露出決定し、RAW現像やレタッチでシャドーを明るく調整すれば自然な感じに仕上がる。

 

深澤流・春霞の空を深い青空に仕上げるRAW現像術

使用ソフト:ニコン Capture NX-D(ver.1.5.0)

 

① 元画像では暗すぎるのでプラス側に露出補正

撮影時、青空を基準に露出を決定したので、元画像では桜が暗く沈んでいる。桜のハイライトが輝いて見えるよう、まずはプラス側に露出補正。ここでは「+2/3EV」を選択した。ハイライトを生かすことで、完成作品になったときにメリハリが出る。この状況では青空は薄くなるが、この後「カラーコントロールポイント」を使って暗くするので問題なし。

 

② 青空の深みを出すために「カラーコントロールポイント」で明るさ調整

青空全体を暗くすることで深みを出す。カラーコントロールポイントを青空部分に均等に6箇所配置。まずはこの6箇か所を一括して明るさ調整する。「B(明るさ)」スライダーを「-12」にして暗くした。なお、調整範囲はスライダー操作によって広げられるが、細かく配置したほうがムラになりづらい。


 

③ 低空ほど霞みが強いので、下部の3箇所をさらに暗くする

画面下部に配置した3箇所のカラーコントロールポイントを選択する。上部の青空より下部がやや明るい程度に、「B」スライダーをマイナス方向に調整。ここでは「-36」にすると青空のグラデーションが自然に仕上がった。

 

④ シャドー調整で陰になった桜を明るめに仕上げて完成

左側の桜の枝が陰になっており、写真全体が暗い印象である。調整項目にある「トーン(ディテール)」アイコンをクリックし、シャドースライダーで暗部の明るさを調整する。ここでは「シャドー」を「29」にすると適度にメリハリのある作品になった。シャドーを明るくすると青空もより際立ってくる。ただし、明るくし過ぎるとのっぺりした感じになってしまうので注意したい。これで完成!

 


 

 

「カラーコントロールポイント」とは?
マスクなどを使わずに、明るさやコントラストを部分的に調整する機能。コントロールポイントを配置した所の色を識別して、画面内の似た色を持つ部分に対して範囲を決めて調整ができる。一番の上のスライダーが調整範囲、「B」明るさ、「C」コントラスト、「S」彩度、の調整となる。さらに「R、G、B」の各色、暖色または寒色への色調整も可能だ。

 

 
〈写真・解説〉深澤 武