春の花といえば真っ先に思い浮かぶのが「桜」。桜が盛大に咲いている姿を見ると、自然とカメラを向けたくなります。ですが、桜は色が淡く、その繊細な色が出にくいため、桜を美しいまま撮影するのは至難の業です。そこで今回は、桜をきれいに撮るテクニックやコツを紹介しましょう。
ボケコントロールで多彩な表現が生まれる。散り際はシャッター速度の選択がカギになる
風景の中に咲くサクラを撮影するなら絞り込んでパンフォーカスにし、枝ぶりや花をアップで見せるなら絞りを開けてボケを生かすのが基本です。一本のサクラに対して風景的に狙ったり、切り取ったり、アップにしたりと、多彩な表現を試みられるのがサクラ撮影の面白さです。
サクラの枝ぶりは細身なことが多く、前景にサクラを入れても絞りを開ければ枝の茶色があまり目立たず、ピンク色の柔らかな前ボケを生かせるのも特徴です。サクラの華やかさを生かすのにおすすめの方法なので、メインのサクラだけでは物足りなく感じるときに試してみてください。
また、散り際の美しさもサクラの魅力のひとつ。散り際を捉えるにはシャッター速度の選択が大切で、サクラ吹雪なら中速シャッター、花筏はスローシャッターで動感を引き出してみましょう。
基本テクニック
サクラ風景を撮るときはパンフォーカス、花狙いならボケを生かす
山や海を背景にしたサクラを風景的に狙うなら、絞りF16程度(マイクロフォーサーズ機ならF8)まで絞り込んで、近景から遠景までシャープに見えるパンフォーカスにするのがベストだ。一方、望遠やマクロレンズで絞りをF2.8~F8にすると、背景がきれいにぼけてサクラの持つ繊細な美しさを引き出せる。
背景をぼかしてすっきりと前ボケを入れて優しい雰囲気に
絞り開放F2.8で背景をぼかし、サクラをすっきりと見せた。さらにメインのサクラとレンズの間に別のサクラを入れて前ボケを作り、優しく華やかな雰囲気に仕上げている。
135ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/100秒)+0.7補正 ISO100 WB:5000K
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○
標準域で絞り込んでサクラも富士山も見せる
○写真は標準域48ミリで風景的に狙ったサクラ風景。サクラにピントを合わせてF16まで絞り込み、サクラと富士山のどちらにもピントの合ったパンフォーカスにすることができた。同じ48ミリでも近景にサクラがあるとパンフォーカスにするのは難しく、微妙なボケで中途半端な印象だ。
応用テクニック①
シャッター速度1/15秒でサクラ吹雪の動感を引き出す
サクラ吹雪の動感を生かすなら、適度な軌跡の長さとなる1/30秒前後で撮ろう。また、花びらが浮き立つような暗めの背景を選ぶこと、そして風に吹かれてたくさんの花びらが舞い散る瞬間を捉えることが大切だ。そのためにもピントはサクラの木にあらかじめ合わせておき、シャッターチャンスを待ちたい。
1/50秒
1/15秒
1/5秒
舞い散る様子なら1/50秒、サクラ吹雪なら1/15秒が◎
1/50秒だと軌跡が短いので舞い散った感が強い。1/15秒にすると花びらの軌跡が適度な長さになり、サクラ吹雪の雰囲気がよく出ている。1/5秒になると一面が花びらだらけになり、枝ぶりも大きく揺れてイマイチである。風の強さや焦点距離によって適切なシャッター速度は異なるので、テスト撮影は必須だ。
応用テクニック②
花筏の流動感はNDフィルターを使って長秒露光する
花筏の軌跡を生かすなら、NDフィルターを使って10秒を超えるスローシャッターを切りたい。風による流れは緩やかなので、数秒のシャッター速度では中途半端なブレ感になってしまう。さらに、サクラの枝ぶりや水草など静止しているモチーフを画面に入れると、画面にメリハリがついていい。
ND16フィルター
↓
13秒のスローシャッターで軌跡を捉える
池に落ちたサクラの花びらが風に吹かれて流れ出す。そのタイミングを狙って13秒のスローシャッターを切ると、美しい軌跡を描いてくれた。昼間はF16やF22まで絞り込んでもシャッター速度はせいぜい数秒だ。花びらの軌跡狙いならNDフィルターは必須である。
130ミリ相当 絞り優先オート(F16 13秒) +0.7補正 ISO100 WB:晴天 NDフィルター
写真・解説/深澤武