2018年秋に発売され、光学125倍、3000mm相当というオドロキの超望遠を実現した「ニコン COOLPIX P1000」。月や太陽、星といった天体撮影を一気に身近にしてくれる存在だ!
3000mm相当の超望遠で天体写真が身近になる
月や太陽は撮影したいと思っても、超望遠レンズにテレコン、天体望遠鏡などを使う必要があり、実は手軽に手が出せる被写体ではなかった。しかし3000mm相当という超望遠ズームのP1000なら驚くほど手軽に撮影できる。強力な手ブレ補正により、手持ちでも画面からハミ出すほどアップになった月が撮影できるのは凄い。
もちろん手持ちでの3000mmは、自分の呼吸で揺れるくらいデリケートな撮影になるので、実用的には三脚と赤道儀を使うのがオススメ。赤道儀があれば電子ズームも活用して木星の縞や土星の環などを撮影することも可能になる。そして惑星は見かけ上のサイズがとても小さく、撮影するときには大気の揺らぎによる解像度低下が目立つため、なるべく惑星が空の高い位置に昇ったところで撮影するといい。一眼レフ用レンズでは頑張っても月を画面半分程度に入れるのが精いっぱいのところを、一気に月の拡大撮影ができてしまうとは、本当に驚異的なカメラだ。
3000mm相当なら月は画面より大きくなる!
通常、カメラで月を撮影しても月は小さくしか写らない。しかしP1000なら、月をどう切り取るかが悩みどころになる。2400mm前後の焦点距離を使えば満月でも画面にすべて入れることができるが、今回は細い「有明の月」だったため、さらに超望遠3000mmで撮影した。
ニコン COOLPIX P1000 マニュアル 絞りF8 1/125 秒 ISO400 WB:オート(3000mm相当)
約12000mm電子ズームならさらに寄れる!
月の「嵐の海」付近を拡大。中央付近にケプラーと呼ばれる特徴的なクレーターが見える。月の高度が低かったこともあり、大気の揺らぎの影響を強く受けているが、電子ズームでここまで拡大しても破綻のない撮影ができることにビックリ。
ニコン COOLPIX P1000 マニュアル 絞りF8 1/10 秒 ISO100 WB:太陽光(電子ズーム12000mm相当)
太陽も超望遠で狙うと面白い
一眼レフと違い、太陽を直接レンズ越しに見てしまう危険性がないので安心。しかしカメラを太陽に向けるのは故障の原因にもなるので、ND100000などのフィルターを使い十分に減光して撮影しよう。
作例を拡大すると右下に小さな黒点が見える。
天体を撮るための機材や設定
P1000には「月モード」があり、RAWで記録しないのであれば、自動で最適な設定に調整してくれる。RAW画像の記録や、月が極端に欠けている場合にはマニュアルで撮影しよう。月の場合、マニュアル露出で感度はISO100。満月なら1/250秒、F8、半月の場合には1/60秒、F8くらいを基準に調整しよう。AFモードを「遠景AF」、AFエリアを「ターゲットファインドAF」にするとフォーカスが合いやすい。
しっかり三脚を立てよう
三脚は頑丈なもの、雲台が滑らかに動くものを使用したい。月や太陽の動きは結構速いので、じっくり撮影するなら赤道儀があると便利。
リモコン ML-L7
3000mm相当ではちょっとした振動がブレや構図のずれの原因になるため、カメラに触らずに撮れるリモコンがあると便利だ。
P1000 には専用の「月モード」がある
月の色合いをコマンドダイヤルで調整できるほか、月撮影がしやすい絞りやシャッター速度などを自動で制御してくれる。
■ニコン COOLPIX P1000
2018年9月14日発売
オープン価格(ニコンダイレクト直販価格:税込 137,700円)
[有効画素数]1605万画素 [撮像素子]1/2.3型原色CMOSセンサー(裏面照射型) [レンズ]焦点距離 4.3〜539mm(35mm判換算 24〜3000mm相当)/ 開放F値 F2.8〜8 / 光学ズーム倍率 125倍 / レンズ構成 12群17枚 [ISO感度]ISO 100~1600・3200・6400 [シャッター速度]1/4000~30秒(バルブ 最長60秒) [ファインダー]0.39型 約236万ドット 電子ビューファインダー(有機EL) [画像モニター]3.2型 約92万ドット TFT液晶モニター(バリアングル) [記録媒体]SD/SDHC/SDXCメモリーカード [サイズ(幅×高さ×奥行き)]約146.3×118.8×181.3mm(突起部を除く) [質量]約1415g(バッテリー、メモリーカードを含む) [付属品]ストラップ、レンズキャップ LC-77、Li-ionリチャージャブルバッテリー EN-EL20a、本体充電ACアダプター EH-73P、USBケーブル UC-E21、バヨネット式レンズフード HB-CP1▼詳しくはこちら
https://www.nikon-image.com/products/compact/lineup/p1000/
〈写真・解説〉青柳敏史