中村文夫の古レンズ温故知新「リコー AF RIKENON 50mm F2」
「AF リケノン 50mm F2」は、1981年3月にリコーが発売した世界初の一眼レフ用AFレンズ。一眼レフのAF化は1985年発売の「ミノルタ α-7000」で実質的なスタートを切るが、α-7000が登場するまでの数年間、多くのカメラメーカーが試行錯誤を繰り返していた。そんな中、一番乗りを果たしたのがリコーだった。
これが一眼レフ用で世界初!レンズ単体でAF達成
AF方式は1977年に世界初のAFカメラとして大ヒットしたジャスピンコニカと同じ三角測量方式。合焦スピードは現在とは比べものにならないレベルだが、AFボタンを押すとジッという短い作動音と共にピントが合う様は健気そのもの。使っているといつの間にか心が大らかになり、たとえピントが外れても笑って許せるようになる。
光学系は解像力の高さで定評がある「XR リケノン 50mm F2」と共通。廉価版の標準レンズだが、ピントが合ったときのシャープさは侮れない。
レンズ内にAF機構を内蔵しているのでレンズ単体でAFが作動するが、測距できるのは1m以遠。定価は33,800円で、AFなしのリケノン50mmF2が9,000円だったことを考えると高価な製品だった。
マウントはKマウントだがレンズ上部のAFメカが邪魔をして、おでこの出っ張ったペンタックスのデジイチには装着できず、唯一「K-01」だけ利用できる。その点ミラーレス機ならマウントアダプターを介せばOKだ。F値が小さいとピンボケが増えるのでF5.6以上での使用が推奨されている。
開放だとハイライト部ににじみが出るが、解像度は高くボケ味も良い。ジャスピンコニカが採用したハネウェル製VAFのピントステップ数は4段階だが、このレンズが採用したセイコー製FCMは16段階。ピント精度は高いがAF検出能力が低いので、何回もやり直さないと、なかなかピントが合わない。
PENTAX K-01 F2 1/125秒 ISO400
〈文・写真〉中村文夫