サクラやナノハナと違い、さまざまな色を楽しめるのがチューリップ。開花時期は、早咲きで、3月下旬から4月中旬、普通咲きが4月中旬から5月ごろ、遅咲きで、4月下旬から5月。
春のあたたかな日差しの中で凛と咲くチューリップ。シベが花びらに包まれた独特の形状をしているので、狙い方や撮り方にも独自性があります。どのように撮影すれば、カラフルなチューリップのらしさやかわいらしさを表現できるのか、ご紹介いたしましょう。
チューリップはわりと大きな花なので、マクロレンズでなくても十分クローズアップできる
チューリップの撮影でもっとも活躍するレンズは望遠ズームレンズです。焦点距離が長いのでボケが作りやすく、密集感を引き出すこともできます。また、背景の写る範囲が狭いので、公園内の人工物や観光客がうっかり入ってしまう恐れも少ないです。
チューリップはわりと大きな花なので、マクロレンズでなくても十分クローズアップできます。花畑の一部を狙うなら、単焦点のマクロレンズより、ズームのほうが細かいフレーミングをしやすいので便利です。近くの花なら標準ズームでも寄ることはできますが、焦点距離が短くなると、密集感やボケまで少なくなってしまいます。チューリップの場合は、画面内の花の大きさではなく、密集感とボケ量でレンズを選びましょう。
基本テクニック
望遠レンズでチューリップ畑の密集感を引き出す
望遠レンズは圧縮効果により、花同士の距離が近くに感じられるという特徴がある。チューリップ畑のボリューム感を出すなら望遠レンズが断然有利。望遠使用時は、花壇に寄れたとしてもすぐ手前の花を狙うのではなく、あえて遠くの花を狙うのがポイント。また、カメラポジションを花の高さ近くまで下げることで、花の重なりが厚くなる。
標準域(64ミリ相当)
標準域は見た目に近い素直な画角だ。しかし、望遠に比べると、花と花との間に葉や茎の緑が見えていて、望遠ほどの密集感はない。
望遠域(300ミリ相当)
300ミリ相当でカメラポジションを下げて撮影
望遠ズームの望遠端(300ミリ相当)を選んで、花畑のやや奥の花にピントを合わせた。カメラポジションを下げているので花が重なって見えるが、さらに望遠を使うことによって圧縮効果が生まれて密集感が高まった。あまりクローズアップしていないが、開放F2.8のため前後の花がぼけ、ピント面の花々が引き立っている。
300ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/800秒) +1補正 ISO200 WB:晴天
応用テクニック①
望遠レンズで周囲の様子も取り込むにはローポジション+縦位置で撮る
望遠でのクローズアップばかりでは写真に変化がない。そこで、焦点距離を少しだけ短い中望遠に抑え、周囲の風景を取り入れてみよう。ただ密集感が減少するので、ポジションを下げて花を重ねたり、縦位置にして奥行きを出したりしよう。横位置よりも縦位置のほうが、遠くの風景まで入れることができ、奥行きが出せる。
△
望遠レンズは画角が狭いため、周囲の雰囲気を取り入れるのが難しくなる。
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縦位置構図で奥のサクラまで入れてフレーミング。80ミリ相当の中望遠域を選ぶことで、背景の写る範囲が少し広がったが、サクラは中途半端だ。
ポジションを少し下げるだけで絵柄は変わる
上の△写真とは同じ焦点距離だが、ポジションを下げたことで、花の重なりが厚くなり、密集感が増した。さらに、中途半端に入っていたサクラがしっかりと写り、公園の様子がより伝わる。
80ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/1000秒) ISO200 WB:晴天
応用テクニック②
一輪狙いで花畑の雰囲気を出すには前ボケの取り入れと背景描写がカギ
背景をぼかしすぎると平面的になってしまうというデメリットがある。しかし、そこに前ボケを加えると、周囲にもたくさん花があるように感じられ、花畑の雰囲気を出せる。前ボケを作るには「絞りを開ける」「焦点距離の長いレンズを使う」「前ボケになる花に近づく」「花と前ボケの花が離れている」ことが必要な要素だ。
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中ほどの花が主役。包まれている密集感によって花畑の雰囲気に
写真は、背景はぼけているが、奥行きはなく、周囲を花に包まれたような感じもない。少し引いてみると、多くの花が入り込んできた。中程の花にピントを合わせると、前後の花がぼけて、花畑の密集感が出た。
前後のボケ量を減らしてチューリップの存在感をうっすら見せる
前後を大きくぼかすと彩りやソフト感は残るが、花なのかどうかがわかりにくくなる。ここでは焦点距離を最望遠から少し戻してボケ量を減らし、チューリップとわかる程度のボケに抑えている。
210ミリ相当 絞り優先オート(F3.2 1/200秒) +2補正 ISO100 WB:日陰
写真・解説/吉住志穂