サクラやナノハナと違い、さまざまな色を楽しめるのがチューリップ。開花時期は、早咲きで3月下旬から4月中旬、普通咲きが4月中旬から5月ごろ、遅咲きで4月下旬から5月。
春のあたたかな日差しの中で凛と咲くチューリップ。シベが花びらに包まれた独特の形状をしているので、狙い方や撮り方にも独自性があります。どのように撮影すれば、カラフルなチューリップのらしさやかわいらしさを表現できるのか、ご紹介いたしましょう。
背景も含めて1枚の作品。主役だけでなく、背景の観察も大事
写真にすると、見たときの感動が伝わらないという声をたまに聞きますが、写真のテクニックを上手に使えば、見た目以上に美しく見せることも可能です。露出を調整したり、背景をぼかしたり、美しい色や形だけをフレーミングしたりなど、撮影に迷ったらまずは基本に戻ってみましょう。
さて、ここではチューリップの魅力を引き出すフレーミングのパターンをいくつかご紹介します。背景も含めて1枚の作品なので、チューリップの美しい部分を切り取るのはもちろん、ぼかした背景の細部にもこだわることが大切です。主役だけではなく、背景にも目を向けて観察してください。
基本テクニック
同系色や爽やかな色など、きれいな色で画面を埋める
多くの色が入るほど彩りは豊かになるが、そこに統一感があるとなおベスト。チューリップと背景が暖色系同士、あるいは淡い色同士など、似ている色を組み合わせると画面がまとまりやすくなる。また暖色なら温かい印象、黄緑なら爽やかな印象など、色によるイメージを生かすと、より雰囲気を高められる。
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明るい画面の中に暗い部分が入ると目立つし重たい
上の写真は、主役と前後のボケは明るい色なのに、背景の一部に黒い色が入ってしまったため、若干重く感じられる。画面の中ではわずかな面積だが、明るい中に一点でも黒い部分が入ると目立つ。そこで黒い部分はフレームアウトして、温かみのある色合いだけでまとめた。
150ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/2000秒) +1.3補正 ISO100 WB:くもり
淡い色同士で爽やかに、同系色の濃淡の変化で主役を目立たせる
上の写真は、主役が赤系で背景は緑。赤と緑は反対色だが、淡い色同士なのでまとまりがある。下は主役と背景が同じ色のチューリップだが、主役はやや日陰で暗く、背景には日が当たって明るかった。露出は主役に合わせたが、背景も明るくなり、両者に濃淡の差が生まれたので、主役が背景に溶け込むことはない。
応用テクニック①
色や形、光に注目して、マクロレンズでクローズアップする
チューリップの形はシンプルなので、部分的なクローズアップも様になる。狙いどころとしては花びらの先端や花の下の部分の丸いフォルムだ。色のグラデーションや光の陰影も意識しながら、美しい造形をマクロレンズでクローズアップしてみよう。
花びらも背景もオレンジと黄色でまとめる
オレンジと黄色が組み合わさったチューリップの花びらに迫った。背景も同じ種類のチューリップをぼかしているのでまとまっている。花の美しい色や形が引き出されていれば、どんな種類の花なのかがわからなくてもOK。
120ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/100秒) +1補正 ISO200 WB:曇天
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チューリップの丸いフォルムに注目
全体を写すとチューリップを写したというだけで、造形に迫った感じはない。マクロレンズでチューリップの丸みのある形を切り取った。そして、その形を見せるのを邪魔しないよう、背景を大きくぼかしてフラットに仕上げている。
150ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/250秒) +1.3補正 ISO100 WB:くもり
応用テクニック②
花壇ならではのカラフルな部分を切り取る
多くのチューリップ畑は観光を目的としており、どこにどの花色の球根を植えるかが計画的になされている。色彩豊富なチューリップ畑では複数の色の組み合わせが楽しめる。列ごとに分けられた花色の層を背景に入れたり、青い花で作られた川を捉えたりと、工夫が凝らされた花畑を色彩に注目して上手に切り取ろう。
川に見立てたムスカリを添えたチューリップ畑
最近よく見かけるのがチューリップ畑の間に青いムスカリの花を植えて、水の流れを表現した花畑だ。S字を描くように見えるポジションを選び、画面にリズムを作っている。
225ミリ相当 絞り優先オート (F5.6 1/25秒) ISO100 WB:太陽光
五線譜のような彩りを背景に
彩り豊かなチューリップの花壇は、遠くから望遠レンズで狙うと色が何層にも重なって見える。それを背景にすれば、虹色の背景になる。
ここでは背景を見せたいので主役は控えめにして、背景の面積を多くフレーミングした。
400ミリ相当 絞り優先オート(F3.5 1/250秒) +1.3補正 ISO200 WB:日陰
写真・解説/吉住志穂