大都市近郊ではカタクリ園として整備されている所もありますが、山林や民家の裏庭に普通に咲いているのを目にすることも多い花です。カタクリは晴天時にはよく花を開きますが、早朝や曇天時には花を閉じていることが多いので注意しましょう。
晴天時にはよく花を開くが、早朝や曇天時には花を閉じていることが多い
カタクリは比較的密に群生するので、標準や広角レンズなら群生の広がりを狙えます。ピンク色がカラフルなので、望遠やマクロレンズでボケを生かすと華やかになります。大きなボケを生かすためには単焦点レンズや大口径の望遠ズームが有利です。
背が低い花なので、ローアングル用の三脚やビーンズバッグなどを使ってカメラを安定させ、アングルファインダーや可動背面モニターを使って撮影するとよいでしょう。最近ではスマートフォンでライブビュー画面を確認しながら撮影することもできます。これなら縦位置撮影も容易です。
基本テクニック
地面スレスレのローポジションで撮影する
高さ10cmほどの小さな花なので、俯瞰気味に群生として狙う場合を除き、ローポジションから花の目線に合わせて撮影するのが基本だ。群生地では花の密度が高いため、望遠レンズで背景をぼかすと、ピンク色のやわらかな雰囲気を生かせる。広角レンズなら適度に絞り込み、背景を見せることで臨場感を狙いたい。
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しゃがんだ位置で三脚を立てるとやや俯瞰気味にカタクリの群生を撮影できる。広がりはあるが、ポイントがなく散漫な印象だ。
望遠レンズで絞りを開けて周囲の花をぼかした
咲き始めのカタクリを選び、花の目線に合わせてローポジションから撮影した。横にカタクリが数輪並び、背景だけでなく前ボケを生かせるポジションを選んでいる。メインのカタクリがシャープに見え、前後をきれいにぼかせる絞りF5.6で撮影した。
180ミリ相当 絞り優先オート(F5.6 1/60秒) -0.3補正 ISO200 WB:晴天
背後に見える萱葺き民家を入れて里山の雰囲気を出す
28ミリの広角レンズでカタクリに近づき、合掌造り民家を背景に写し込む。背景の臨場感を出すため、F5.6で適度なボケを生かした。斜面に三脚を横にして置き、可動式の背面モニターを見ながら、カメラを三脚に押しつけて撮影するとフレーミングが安定する。
28ミリ相当 絞り優先オート(F5.6 1/200秒) ISO200 WB:晴天 PLフィルター
応用テクニック①
逆光線による透明感を生かすとカタクリが輝く
カタクリの花弁は薄く光を通すため、逆光で撮ると透過光による透明感を生かせる。さらに背景にも光が当たっていれば華やかさが出て、紫色と相まって春らしい暖かさが感じられる作品になる。シルエットになった背景を選べば、光と影により力強い作品に仕上がる。どんなイメージに仕上げたいかで背景を使い分けよう。
逆光
プラス0.3補正で明るい雰囲気に仕上げる
透過光に輝くカタクリを望遠180ミリマクロで切り取り、生き生きとした生命力を引き出した。絞り開放F3.2で光が当たった紫色や緑色のボケを生かすと、春らしい温もりある空気感が伝わってくる。若干プラス補正することで明るい雰囲気に仕上げた。
180ミリ相当 絞り優先オート(F3.2 1/500秒) +0.3補正 ISO100 WB:晴天
拡散光
曇天時の拡散光はカタクリの質感や自然な色を引き出せるが、華やかさや温もりはあまり感じられない。
応用テクニック②
一輪の場合は花の向きに空間をとって間を生かす、真ん中に花を捉えるのはNG
花をアップにするときは花が向いている方向を広く見せるのがセオリーだ。一輪の花を真ん中に捉えると花に目が釘付けとなり、左右の空間を生かせない。数輪の花を捉えるときも主役の花の向きを意識してフレーミングすることが大切だ。縦位置で左右の空間が生じないなら、真ん中にアップで見せることで迫力を出せる。
一輪のカタクリを真ん中に見せると左右の空間が均等になり、左右どちらの空間を生かしたいのかが伝わってこない。
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カタクリの花の向きを見て、この場合は右側の空間を開けるのがセオリーである。ただ後方の枯れ葉が雰囲気を壊しているのが残念だ。
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右側に空間を作って開放感を、背後の枯れ草を取り除きすっきりと
カタクリの花の向き、つまり右側の空間を広く取ることにより、よい意味での間が生まれた。左にカタクリ、右にボケを生かすことで左右のバランスが取れた。枯れ草や枝などは可能なら取り除いてすっきりと見せたい。
105ミリ相当 絞り優先オート(F4 1/250秒) ISO200 WB:晴天
写真・解説/深澤 武