写真家のリアルRAW現像&レタッチ術【花編】吉住志穂 × Olympus Workspace
写真家は作品を仕上げるときに、どのくらいRAW現像やレタッチをしているのだろうか。今回は梅雨時の曇天でも、ふんわりやわらかく、それでいて鮮やかさを残す花写真におけるリアルなRAW現像&レタッチ術を、花写真家・吉住志穂さんに聞いた。
多重露出でふんわりと写し、現像で細かく調整して仕上げる
オリンパスがメイン機なので、今回は純正ソフト「Olympus Workspace」を使用。基本は撮影時に完成まで仕上げることが多く、JPEGとRAW現像後の画像が同じ風合いになるので作品に統一感が生まれるのが◎。カメラ同様にアートフィルターの適用も可能。
<Before>
<After>
花の撮影は、晴れている日はメリハリがあって鮮やかになり、薄曇りのときはやわらかな光でストレートに撮影してもきれいな描写に仕上がりやすい。しかし厄介なのは、どんよりとした曇りの日。光が極めて弱いので、花の色が濁りやすく、灰色がかって見えてしまう。露出補正で明るめに仕上げることで濁りは多少軽減できるが、それでも重たい雰囲気は残ってしまう。
そこで、RAW現像処理によってふんわり感はそのままに、鮮やかさを加えて、華やかに仕上げていく。特に今回例に挙げているアジサイ写真は多重露出でボケを重ねたもので、カメラ内で細かい調整ができないため、RAW現像が必要となってくる。
私の場合、撮影時に仕上がりイメージを掴んでおきたいので、露出やフレーミング以外の、RAW現像で変更しても劣化のない機能(例えば、ホワイトバランスや仕上がり設定)も撮影時にこまめに変更、調整している。しかし、時間的な問題やモニターの視認性の点から、細かな調整はRAW現像で詰めていくこともある。
まずは全体の仕上がりの方向性を左右する仕上がり設定を選び、そこからコントラストと彩度を決め、ホワイトバランスで整えるといった流れである。オリンパスの現像ソフトは、「OM-D E-M1X」の発売と同時に、「Olympus Viewer3」から「Olympus Workspace」に代わり、無償提供が開始された。設定の反映スピードが速くなり、使い勝手が向上している。
吉住流・曇天下のアジサイをふんわり&鮮やかに仕上げるRAW現像術
ここからは、上の例のBefore→Afterがどういう工程を経てRAW現像されていったのか、詳しく見ていこう。
使用ソフト:オリンパス Olympus Workspace(ver1.0.0)
手順① 仕上がり設定を「ポートレート」に変更して暗部のトーンを明るくする
撮影時の仕上がり設定は「ナチュラル」だったが、多重露出でボケを重ねてみるとふんわり感が出てきたので、現像時に「ポートレート」に変更。本来は人物向けの設定だが、コントラストが弱まり、暗部が明るくなるという特徴があるので、花の撮影にも効果的なモードだ。
手順② トーンカーブを逆S字にしてコントラストをさらにダウン
画面の奥まった部分は陰により暗く写る。そこで、さらにコントラストを下げてやわらかくしていく。「ハイライト&シャドウ」のトーンカーブを使い、逆S字になるようにハイライトを下げ、シャドウを上げる。反対にコントラストを付けたいときは、トーンカーブでS字を描くようにする。
手順③ 色彩を鮮やかにするため「彩度」のみをアップ
色の濁りを抜くために彩度を上げる。仕上がり設定を「ビビッド」にすれば彩度は上がるが、一緒にコントラストも上がってしまう。そこで、彩度の設定を「+2」して鮮やかさだけを強める。曇天下の条件のためコントラストを抑えてきたが、ここで色彩の鮮やかさを加えることでパンチの効いた画像になった。
手順④ ホワイトバランス「カスタムWB」で青みを加えて梅雨らしくする
曇りの日は花が青みがかって見えるもの。ホワイトバランスでこの青みを補正することもできるが、天候の雰囲気を強調するために、私はむしろ青みを効かせたい。通常はホワイトバランス「晴天(5300K)」を基本に撮影しているが、今回はあえて青みを加えるためにカスタムWBから数値を下げ、「4700K」を選択。これで完成!
\ 完成!/
さらに! +αのAfter
手順⑤ アートフィルターの「ファンタジックフォーカス」を選び、ソフト効果をより強調して仕上げる
オリンパスのアートフィルターは種類が豊富。特に花の撮影にはソフト効果のかかる「ファンタジックフォーカス」をよく使う。ふんわりとして、しっくりくる。多重露出の設定では撮影時にアートフィルターが掛けられないので、多重露出をしたRAWデータから現像時にアートフィルターを適用した。よりふんわり感を好む人はこちらが完成形となる。