中村文夫の古レンズ温故知新「SIGMA TELEMAX 135mm F2.8」
シグマはユニークな発想で他社にない新製品を次々と開発し、常にカメラ業界のトップを走り続けて来た光学メーカーだ。このDNAは1961年の創業当時から遺憾なく発揮され、なかでもイメージコンバーターはその代表と言えるだろう。
これを簡単に説明すると「イメージサークル拡大機能を備えたリアコンバーター」で、ニコンFマウントレンズをゼンザブロニカに組み合わせて撮影ができる。望遠レンズ専用だが、手持ちの35mm用交換レンズが中判カメラに使用できるという意味で画期的な製品だった。
SIGMA TELEMAX(シグマ テレマックス) 135mm F2.8
マウントは交換式で、YSマウント各社の開放測光に対応。YSは「ヤマキシステム」の略で、山木社長の苗字から名付けられた。サンレンズと互換性がある。
最短撮影距離を変えられるマクロレンズ
今回紹介する「テレマックス 135mm F2.8」は1968年ごろの製品だ。ヘリコイドを最大まで繰り出した状態で先端のリングを回転させると、通常だと約1.8mの最短撮影距離が65cmに短縮。最大で1/3倍の接写ができる。さらに、ヘリコイドにはスケールマチックと名付けられた機能を装備。ヘリコイドにプリントされたスケールマチック用目盛りを被写体の大きさに合わせ、ピントが合う位置までカメラごと移動すればその被写体が画面いっぱいに写るというわけだ。
画期的な製品はシグマにアリ!
果たしてこの機能が実際の撮影に役立ったかどうかは不明だが、特にこの時代のシグマには「考えられることはすべて試してみる!」みたいな勢いがあった。ターレット式フィルターを内蔵したフィルターマチック、F64まで絞ることでパンフォーカス効果が得られる望遠レンズのバンテレなど、ゲテモノレンズの宝庫だった。
REPRODUCTION RATIOと刻印されたレンズ先端のリングを回すと接写ができる。ヘリコイドにプリントされたスケールマチック目盛りは、被写体のタテ・ヨコの長さに対応するため2段になっている。
当時はKマウントが未発売だったので、M42のYSマウントを選び、Kマウントアダプターを組み合わせて「ペンタックス K-1」に装着。このレンズには絞り込みレバーがないので、絞り込み機構を備えたレイクォール製アダプターを使用した。
使う前は「所詮オマケのマクロ機構さ」みたいに思っていたが、解像力は想像以上。画面全体にわたって均一なボケが得られるなど、実はとても優秀な望遠マクロレンズだ。
ペンタックス K-1 F4 1/100秒 ISO200
〈文・写真〉中村文夫