田畑藤男さんの写真集『たいむすりっぷ 1972~1988 昭和と呼ばれた時代』が発売された。昭和の後半に、東京の下町や、大阪・神戸の町を撮影した作品で構成されている。
昭和の母親は割烹着姿で買い物に出掛け、豆腐屋や道具屋は自転車で商品を売り歩いた。日々の営みが家の内と外とで地続きだったのだ。魚屋や八百屋は店先の往来に堂々と品物を広げて売っていたが、今、公共の土地を勝手に使うことは許されない。街は整然となったが、昭和の風景を見ると心和み惹かれるのは何故だろう。松竹演芸場の楽屋口で談笑するセント・ルイスの姿がやけに懐かしく見える。これらの光景はもう遠い昔だ。
田畑藤男『たいむすりっぷ 1972~1988 昭和と呼ばれた時代』
240×250mm・60ページ
本体 2,930円(税別)
2019年7月4日発売
日本カメラ社
〈文〉市井康延