2019年9月に発売された超高画素機、ソニー「α7R IV」。新世代裏面照射型撮像素子を搭載したカメラで、今後発売される高画素機のベンチマークになる一台といえよう。これまでのデジタルカメラの歴史のなかで、何度か画素数のジャンプアップはあったが、今回の新世代撮像素子ではいよいよ6000万画素超え。しかも、DSLR(デジタル一眼レフカメラ)ではなく、ノンレフレックスカメラが搭載初号機となる。なんだか時の移り変わりをひしひしと感じるカメラだ。
α7R IVの基本スペック――驚異の6100万画素&最高約10コマ/秒の高速連写を両立
まずは簡単にα7R IVのスペックを記していこう。
上述のように撮像素子は新開発の裏面照射型CMOSセンサーで有効画素数は約6100万画素、総画素数は6250万画素となる。総画素数はその撮像素子自体が持つ画素の数となるが、実際には全ての画素が撮影には使われているわけではない。様々な理由があるのだが、センサーの端の部分は撮影には向かないため実際の記録画素としては使用せず、別の用途(オプティカルブラックピクセルなどに使われるためなど)に用いられる。そして、実際に撮影で使用する画素を有効画素数といい、α7R IVは驚異の6100万画素を記録画素として使っているのだ。
その6100万画素の気になるデータ量だが、今回の撮影は、すべて圧縮RAW+JPEGエクストラファインで撮影を行った。圧縮RAWで1枚当たり約60M、JPEGは最も重いもので1枚約50Mのデータ量となった。総撮影枚数は3835枚で、圧縮RAW+JPEGエクストラファインで撮影した総データ量は337Gとなかなかの重さとなった。
超高画素機でありながらも連写機能は最高約10コマ/秒(Hi+モード)と十分な高速連写機能を持ち合わせている点も注目だ。そのほか、常用感度はISO100~3200、ダイナミックレンジは約15ストップ。ボディ内手ブレ補正を搭載し5.5段分の補正効果を発揮する。また新規で開発したシャッターユニットが搭載されており、このシャッターユニットと優秀な手ブレ補正が相乗効果をもたらし、実写では結構なスローシャッターでもしっかりと手ブレを補正していた。
ざっと簡単ではあるが、以上がα7R IVの主だったスペックである。前置きはこのくらいにして、さっそく実写して感じたことを述べていきたい。
「6100万画素の高精細な画」ってどんなもの?
レンズのテストやカメラのテストで解像を見る場合、まずこうした何の変哲もない遠景で広い風景を撮影し、中心と周辺を見比べるに限る。こうしたダークトーンの森の描写は高精細に再現することが難しく、また物理的な画素数がなければ、拡大してもすぐモザイク画のようにカクカクとしたピクセルが現れてしまう。
使用したレンズはソニー純正広角レンズ「FE 16-35mm F2.8 GM」を使用。広角レンズで遠景を撮影するということは、ことのほか様々なものが見えてくる。低周波と高周波のものが入り乱れて1枚の画を形成するため、カメラの性能、レンズの性能双方ともに実力が出やすい。
では、上の写真を100%拡大したものをカットして確認してみよう。まずは中心部から。……なんとまぁ、数百メートル離れた先の川辺の岩、細かな枝、近くの木の葉1枚1枚をしっかり再現している。
画面右上に枯れ木があったのでこれを100%拡大して確認してみよう。これも細かい枯れ木の枝をしっかりと再現している。繰り返しになるが、これも数百メートル離れた先の枯れ木である。
正直ここまで再現できていることに筆者は驚きを隠せなかった。こうした細かな再現の上に成り立っているこの画の「全体」を眺めてみると、実に起伏感に富んだ高精細な画であることに改めて気づかされる。
次にもう少し近寄った画で確認していこう。
画面をほぼ2分割で構図を構成し、半分は空のグラデーションの再現を見ることとし、半分はゴツゴツとした岩の再現を見ることとした。レンズは、先ほどと同様にソニー純正広角レンズFE 16-35mm F2.8 GMを使用。
画素数が上がっていくとカラーグラデーションも変わってくる。極端な言い方をすると、2画素であれば「濃い色と薄い色」の発色しか再現できないのだが、画素数が上がっていけばそのぶん再現できる発色が多くなるため、なだらかなカラーグラデーションを再現できることになる。作例の空のカラーグラデーションだが、水色に近いスカイブルーから濃い青までなだらかにグラデーションが構成されている。「シアン系の青ではなくブルー系の発色とコントラスト」を上げるためであろうか、少しマゼンタがかって見えるのが少し気になるが、美しいカラーグラデーションといえるだろう。
次の写真は画面中央部にある岩を100%拡大してカットしたものだが、前出の森林同様、岩のゴツゴツとした起伏と細かな亀裂まできっちり再現している。
次は、さらに近寄った画でも確認していこう。使用したレンズは、これもソニー純正広角レンズFE 16-35mm F2.8 GM。
森を散策中に姿の良い樹と出会った。腕をいっぱいに広げ太陽の光を浴びる大木、広く根を張り懸命に生きる姿から無言のメッセージを感じる。こうした木のポートレートは「樹皮のシワ」が細かく再現されていると迫力を増してくる。拡大して見てみよう。
樹皮の細かなシワ1つ1つが再現されており、木の生きている姿がしっかりと伝わってくる。6000万画素超だからこその再現といえるだろう。
カラーノイズ/高感度ノイズをチェック
ノイズに関しては少々気になる点があった。画素ピッチが狭くなったことも要因の1つではないかと考える。今回はノイズリダクションはデフォルトのままで撮影を行ったので、カメラ側の設定を変えることで解決できるのかもしれない。
では、作例を見ながら確認していこう。
この画を見たとき、前出の青空写真同様少しマゼンタかかった印象を受けたのだが、カラー構築の設定上のことだろう……と好意的に受け止めた。が、拡大して見てみるとうっすらとカラーノイズを感じる。特に左上部から真ん中上部分の雲に筆者はカラーノイズを感じた。
では、星空撮影でも見てみよう。
やはり少々ノイズの発生は多く感じるものの、撮影データとしては、ソニー純正広角レンズFE 16-35mm F2.8 GMの16mm、ISO12800、F2.8、13秒となっている。常用感度はISO3200までとされているが、それを2段上回る高感度での撮影と考えれば、この程度のノイズであれば御の字であろう。
ノイズに関していえば、常用感度全般で条件によりうっすらとノイズを感じることがあったのだが、逆にいえばどのISOでもリダクションのプログラミングがされているということになり、全体を上手にまとめようとしていることがうかがえる。
また、常用感度を超えた場合、ただの増感としてしまうカメラメーカーもあるのだが、上の星景写真を見ていただけばわかる通り、常用感度を2段も上回るISO12800であるにもかかわらずノイズがこの程度で収まっているところをみると、かなり広い領域でノイズリダクションのプログラムを丁寧に施しているのではないかと考えられる。常用感度はISO3200といっているが、筆者的にはISO12800まで使って撮影したいと感じた。
次回は連写性能についてチェックしていきたい。